2011年3月 7日 (月)

緊急告知

お子様に肺炎球菌ワクチン・ヒブワクチン接種をお考えの親御様へ

肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンの同時接種直後に2011324日の3日間で4人の乳幼児が死亡したと報じられました。厚労省は両ワクチンの接種を一時中止し、詳細な調査を実地しておりますが、現時点(35日)で因果関係はまだ不明です。

まず亡くなったお子様とご家族に心からの哀悼の意を表します.親御さまのお気持ちを察するに胸の潰れる思いです.その上で,本件はまだワクチンと死亡の因果関係が不明であることを,全ての皆さまが慎重に受け止めて判断されることを願います.

最も怖れることは,本件を機に「やはりワクチンは危険」という一方的な考え・主張が支配的になり、皆さまがワクチンを忌避するようになる,ということです.

この2つのワクチンは小児の細菌性髄膜炎を非常に高い確率で予防してくれます.これらのワクチンはまだ日本に導入されて日が浅く(ヒブワクチンは2008 12月,肺炎球菌ワクチンは20102月),そのため日本では最近でも毎年何100人というお子さんが細菌性髄膜炎にかかり,そのうち1-2割のお子 さんが命を落とし,3割のお子さんが重い後遺症で苦しんでいます.(ヒブによる髄膜炎にかかるお子さんが年間約400人,肺炎球菌髄膜炎が年間約140 人)

諸外国では10-20年前に既にこの2つのワクチンが導入され,小児の細菌性髄膜炎が劇的に減りました.日本に当てはめると,日本の全ての小児がこの2 のワクチンを接種すれば,今まで亡くなってきた年間数10人~100人前後の命が救われるようになるはずです。(次ページにアメリカのヒブワクチンの効果 を示します)

今回の4人のお子さんのことは本当に胸が痛みますが,ワクチンとの因果関係はまだ分かりません.繰り返しますが,因果関係はまだ不明です.ですから,毎年数10人~100人前後の命を救ってくれるこのワクチンを,安易に「危険なワクチン」と決めつけないで欲しいのです.

厚労省が緊急に「接種一時中止」を伝達したのはやむを得ない判断だと思います.しかし一方で接種を受けられない小児が増えれば,細菌性髄膜炎は確実に増え,それで命を落とすお子さんが毎年数10人~100人出続けるおそれがあります.どこかで接種再開の決断が必要です.

因果関係の調査と,接種再開の決断は,とても難しい作業です.今日の時点で簡単に結論を出せる医者は日本中に1人もいないはずです.そして明日からも予防 接種に携わる医師・医療職は,とても悩みながら頭を抱えながら市民の皆さんに本件を説明することになります. 皆さまには,どうか医師・医療職からの説明を冷静に落ち着いて聞いていただくことをお願いします.

医師が悩むのですから皆さまはもっと悩まれることでしょう.でも誰も明確な答えを持てないのです.だからせめて,この深い悩みを医師・医療職と皆さまが共有 しながら,次の一歩を踏み出せるようになるまで,じっと悩みに耐えていただきたいのです.そして,日本から小児の細菌性髄膜炎が消えてなくなる日を,共に 迎えていただきたいと思います。

Q: ヒブワクチンの使用数と、偶然による死亡率はどれ位なのでしょうか?

A: 日本のヒブワクチンは開始したばかりですが、海外での使用経験が相当数あります(数10万~数100万例).このうち接種との因果関係が証明された死亡例 の報告はありません。(出典:「Vaccines: Expert Consult」(最も権威あるワクチン学の医学書)

Q:日本における細菌性髄膜炎の感染者と死亡者の数はどれ位でしょうか?

A: 現在、毎年ヒブによる髄膜炎が400数十例、肺炎球菌による髄膜炎が150例程度発症していると推計されます。そのうち1-2割が命を落とし,3割が重い 後遺症で苦しんできました。さらに髄膜炎以外の病気では、ヒブは300例近く、肺炎球菌では1000例以上のお子さんが、これらの細菌の脅威にさらされて います。(小児における侵襲性細菌感染症の全国サーベイランス調査より)

 致死率(病気による死亡率)は5-20%と報告によってばらつきがありますが,仮に最も低い5%で計算したとしても,2009年だけで,ヒブ髄膜炎で20人,肺炎球菌髄膜炎で7人,計27人が亡くなったことになります.20%で計算すればそれぞれ80人と28人で,計100人超が亡くなった計算です.

Q:因果関係が不明といっても、今後も大丈夫なのか、やはり心配です

A:お気持ちはよくわかりますが、仮に今回の件がワクチンと因果関係があったとしても(本当に仮の話です),ワクチンで命を落とすお子さんより,ワクチンせずに髄膜炎になって命を落とすお子さんの方がずっと多いと予想されます.しかも、実際には因果関係は未だ不明です.だからこそ,「まだ分かっていないワクチンの危険性」と,「既にはっきり している,ワクチンを打たずに髄膜炎にかかる危険性」の両方を,医師・医療職も皆さまも共に考える必要があります.

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2010年4月21日 (水)

髄膜炎その後その1

 生後6ヶ月の男児。前回髄膜炎で治療開始のところまで記事にしたが、その後の報告を少し。

 24時間後の髄液検査で細菌を検出しなかったので、抗生剤(ABPC/SBT&CTRX)効果ありと判断した。その後ステロイド使用下にもかかわらず2日間発熱持続。ようやく3日目に解熱した。4日目から反応は極めて良好となり、哺乳開始。その頃培養の結果が到着し、H.influenzae (BLNAR: ペニシリン耐性菌)と判明。ABPC/SBTをMPEMへ変更し現在に至っている。

 哺乳開始後とても活気が出て、5日でフェノバールを減量。それと共に反応すこぶるよく、現在お座りして遊ぶほどに回復。後ろからの音に反応もしている。

 ただ・・・昨夜38℃台の発熱を一時的に確認。abscessの疑いも捨てきれない。とりあえずこのままの抗生剤をあと1週間続け、来週画像診断と考えている。

 なによりこの子の無垢な笑顔に癒されているが・・・・

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2010年4月15日 (木)

なにか変?

 乳児のなにかおかしい?って感じは重病を疑う根拠となり得るというのは小児科医にとって常識だ。それでも追い立てられるような日常診療で見落とすことなく注目出来ているかどうかは判らない。

 今日は部長の言葉から引用する。「朝から熱が出始めて少し吐いたってことだけれど、顔色も普通でお腹の聴診や触診は問題なかった。ただなんとなく呼吸が速いように思って、採血だけでも、いやそれなら1本点滴だけでもとお話しした。」とのこと。その後点滴を入れようにも全く留置が出来なかった。部長の名誉のために書くが、刺すことについては天下一品の腕前だ。自分も手前味噌ながら結構イケてると思っていて、他人の手技を見ていてこれは凄いと思ったことはほとんどない。しかしこの部長のルート確保は本当にう・ま・い。それでも入らないときがたまにある。そんなときは手を替えるのが鉄則だ。そこで外来中の私が呼ばれた。

 刺せそうな静脈を探すが、見た目にはどこにも見当たらない。駆血して指で探すがそれでも索状物は触れない・・・それにしても呼吸が速いな・・・顔色も悪いぞ・・・こりゃ何か隠れてそうだ、早く刺さなきゃ。普通ならここにあるはずだ、触れないけど、きっとある。そう心に念じながら細い針を押し込んだ。キタ!逆血あり!!そこから採血して、補液ルートを繋いだ。血糖は130 !?ううっ?やはり脱水&低血糖ってパターンじゃないぞ。あれっ、さっきより呼吸がさらに速くなってる。それに刺した時に泣きもしなかった・・・これはもしや髄膜炎?それとも心筋炎?

 頸は硬くない。Kernic signも正常。しかし大泉門が張ってる!すぐに頭部CTを確認し、髄液検査へと流れた。濁っている・・・細胞数は2000ちょっと・・・グラム染色は・・・グラム陰性桿菌だ!幸い痙攣はまだ始まっていない。抗生剤2種類とステロイド、グリセオールにビタミンK、そしてフェノバールを始めて待った。4,5時間経ったところで、急に意識状態が良くなってきた。こちらと目が合う。手足を動かし始めた。でもまだ予断を許さない。

 今12時間経過したところ。先程母乳を欲しがり泣き始めた。呼吸は普通の回数に戻っている。顔色もとてもよくなった。まだ安心するのは早い。明日の髄液検査を見なくては安心などできない。それでもこの状況は和む。ほっと一息だ。

 患児の父が「熱が出始めたところで連れてくればよかったのでしょうか。」と言う。

 それは違う。私たちは熱だけならばどれだけ高くても重症ととらえることはない。この場合疑った決め手は、呼吸回数の異常さだ。おそらくこの経過であれば、早く来れば様子を見てくださいと帰されていたことだろう。

 不幸中の幸い。あと1時間遅ければ痙攣し、予後はとても悪かっただろう。もちろんまだ後遺症などのことも含め安心など出来ないが。。。

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2010年3月25日 (木)

腎生検

 2月末から腎生検を毎週1~3件し続けている。今年はちょっと多い。しかも疾患もバラエティーに富んでいる。IgA腎症あり、膜性腎症あり、紫斑病性腎炎あり、膜性増殖性糸球体腎炎あり・・・とりあえずこれまで大きな事故無く検査出来ているのは喜ばしいことだ。

 昨今の道具の進歩で確実に合併症は減っているが、やはり数%に合併症は起こる。出血は最も起こりやすい合併症で、ひどければ輸血や腎摘出まであり得る。だからこそ適応をしっかりと見極め、やらなくてはならない子供にだけ施行している。

 これまで幼い子供は皆自分が穿刺してきたが、後輩が育ってくれたので半分ずつ受け持つことにしている。ちょっとしたコツと経験が必要というのはどんな手技でも同じことだ。彼も臆せずトライできているのは、ここの雰囲気によるところが大きいと自画自賛している。

 手前味噌ついでだが今年の秋に出版される小児科ピクシスという雑誌があり、それの腎生検の項を執筆した。他にはあまり見かけない実際の方法やちょっとしたコツを書いているので、是非読んでもらいたい。もちろんここはこうした方が良いのではという意見もあるべきなので、そういった点は是非指摘していただきたい。

 昨日はシクロスポリンという薬剤を使って2年目のフォローアップ腎生検、そして膜性増殖性糸球体腎炎のフォローアップ腎生検の2人。今日も小学生の男の子1人の腎生検を行った。皆協力的で合併症なく過ごせそうだ。もちろん腎生検はあくまで通過点。これをもとにどう治療していくかが腕の見せ所だ。

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2010年3月 9日 (火)

ムンプス髄膜炎

 おたふくのワクチン接種を受けた4歳児。一週間したところで頭痛と発熱が出てきたと来院した。この時の担当医によると耳下腺の腫脹はなく、しかしなんとなくおかしいので、採血したとのこと。白血球やCRPの上昇も認めず、水分摂取も出来ていたので帰宅させたが、翌日嘔吐して水分摂取出来ないと再度来院され、なんとなく頸が硬いということで入院になった。

 体温は40℃、顔色はまずまずであったが頭が痛いとしかめっ面をしていた。耳下腺は確かに腫れていない。CRTも1秒未満、血圧も正常だ。呼吸音も心音も異常所見はない。蠕動音も正常範囲で腹壁は柔らかい。頸のリンパ節は少し腫脹していて、確かに少し硬直ぎみだ。目は少し赤い・・・アデノウイルス感染でもあるか?と思いながら、入院前に撮ったレントゲンを見たが、肺炎や気管支炎の所見はない。足を持ち、Kernig 兆候を確認した。すると極めて反応鋭くのけ反るではないか。こりゃ髄膜炎だ。

 点滴スピードを少し落とし、今日の採血結果を見直した。白血球数は10000を越えてきていたが、CRPはわずかな上昇のみだ。おそらくウイルス性の髄膜炎・・・頭部CTでも異常所見を認めない。でも髄膜刺激症状が強いことから、減圧も兼ねて髄液検査をすることにした。

 圧は高くない・・・見た目透明で極めてきれいだ。無菌性ならそれもあり。髄液の一般検査とともに、細菌検査、そしてウイルス同定検査へと移行する。細胞数はわずか一桁。う~~ん?細菌はもちろんいない。蛋白も糖も正常。でもね・・・明らかに髄膜炎だよ。

 その後特別な治療を施行せず、補液のみで経過をみていたところ、嘔吐はすぐに治まり、4日で解熱し頭痛も消失した。高熱の間せん妄状況も時々あったことからインフルエンザなど迅速検査をしてみたがすべて陰性。食欲が戻るまで一週間かかったが、とりあえず何事もなく回復してくれた。母は「なんだったのでしょう?」と尋ねてくるのだが、迅速検査できるウイルスは何もひっかからず、髄液検査では髄膜炎と言えない所見で、唯一の手掛かりは頭痛と髄膜刺激症状のみ・・・ウイルス感染とおそらく髄膜炎としか言えないままであったところに、髄液のウイルス同定の結果が返ってきた。髄液中mumps virus PCR 陽性。少なくとも髄液中におたふくかぜのウイルスがいたことは事実だ。

 さてそうなるとこれがワクチンのせいかそれとも野生株かということになる。今検体を衛生研究所へ送る手配を終えたところだ。一応ワクチンにより1000から2000人に1人の割合で髄膜炎が報告されている。それにしても耳下腺も腫れず、髄液細胞数も増えないと何が何だかよくわからない。

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2009年9月 8日 (火)

移動性関節痛

 発熱と足関節痛および腫脹で来院した女児。炎症反応も高値を示したので、まずは化膿性関節炎を考えて、血液中の細菌検査の後抗生剤を投与した。すると2日で別の関節が腫れ、痛みも激烈となった。もとの関節は徐々に痛みが薄らいでしまった。はて・・・

 さらに3日するとその関節も痛みが消失し、今度は肩の関節が痛くなったらしい。大関節の症状で、発熱を伴うことからJIA(若年性特発性関節炎:いわゆるリウマチ)を強く疑い、NSAIDs(解熱鎮痛剤)を使用し、効果を待った。しかし発熱はわずかに治まるものの、痛みは更に移動し、手関節を痛がるようになってしまった。

 症状は他になく、頸部のリンパ節がわずかに腫大しているものの肝脾腫や皮疹を認めない。採血ではWBC 9500, CRP 7.3, LDH 140, フェリチン150, 血沈110mm/h、IgG 1700、尿中はβ2MG 61で蛋白や血尿なし。これなら高サイトカイン血症とも言えない・・・ASO 26, ASK 20で、おまけに咽頭迅速検査で溶連菌感染も否定され、リウマチ熱も考えにくい・・・

 JIAなど免疫疾患はサイトカインが身体のある部分を攻撃するものだ。サイトカインが異常に働いていることを示す値があまり上がらないとすると、あとは悪性のものを考えるべきだろうか。

 ということでこれから骨髄生検を行う。白血病でないことを祈りながら。

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2009年8月31日 (月)

脳炎?脳症?

 成長ホルモンを使い始めた男の子。先週からネフローゼを発症し、入院している。

 ネフローゼを発症した原因として成長ホルモンは本当に関係ないのかなど検索している間にステロイドが反応してくるだろうと思っていた。しかし1週間経っても全くその兆しもない。それどころかステロイドの反応が悪い子供達によく見るようなタマタマ&チ○コの水風船化まで認めるようになった。本人は「チ○コが大きくなった!」と喜んでいるのがせめてもの救いだけれど・・・

 ネフローゼは尿に蛋白が漏れることで、血液中の蛋白が失われ、身体中が浮腫むにもかかわらず血管内は脱水を来すという病気だ。血管の中から水がなくなると、血が固まりやすくなる。蛋白が失われれば、抵抗力も失うことになる。とんでもなく危険な状況をステロイドが良くしてくれる。ただしステロイドには副作用がある。いろいろあるが、免疫力低下や骨の成長の問題は必発だ。血圧が上がる人もいる。

 そんなおり、一昨日血管内脱水があるはずなのに、少し血圧が高く(130/100; 12歳)なり始めた。その夜、突然の激しい頭痛、嘔吐が出現した。そして2分間の全身性強直性痙攣も起こした。レベルは痛み刺激に開眼するJCS30だ。脳梗塞?高血圧性緊急症?麻痺はない。瞳孔もOK。呼吸状態もまずまずだ。ラジカット&ペルジピンを落としながらMRIへ。

 なんだこの像は?T2 high、T1 low, T2フレアでもhighなエリアが小脳、後頭部のあちこちに多発しているぞ!

 ADEM ?PRES ?ミトコンドリア?それともカビなどの感染?

 髄液検査では細胞数の増加や蛋白・糖の異常を認めず、圧も高くなかった。痙攣予防と脳圧降&血圧降下剤、そして抗真菌剤&抗生剤などの投与を開始したところ、現在とても落ち着いている。

 さてなにが起こったのだろうか。

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2009年8月28日 (金)

おそらく

 友の声に押され、ようやく少し元気回復。

 今日は2人の患児を紹介する。

 一人はまだ確証を得ていないのだが、もう3年診ている高校生の女の子。学校検尿でタンパク尿と血尿を指摘されて他院へ。この時は0.3g程度の一日タンパク尿量&30個程度の血尿があり、補体(C3)もわずかに低下していて、ASOは中等度高値にて急性腎炎だろうと言われていた。徐々に尿所見が陰性化するも補体が一向に上がってこないとのことで当院を紹介されたのだった。

 紹介されてからこの方、蛋白尿は時々軽度認めるものの血尿はない。補体は微妙に正常値を下回る程度。蛋白尿が増えてくるなら腎生検と言い続けて3年が過ぎてしまった。本人に全く自覚症状なし。おそらくだが、MPGN(膜性増殖性糸球体腎炎)それもfocalな病態が隠れているのだろうと予想している。SLEといった全身疾患も否定は出来ないが、いずれにせよ今actionを起こさずともよいと思いながらの3年だ。ただ来年は高校3年になる。進学を希望しているとのことだから、まぁまだ待てるか。

 もう一人は4ヶ月の男児。急病診療所で38℃ちょうどの発熱とのことで拝見した子だ。2日前に眼が赤くなり、その後顔と手に発疹が出たので小児科へ行ったところ何ともないと言われたとのこと。こりゃ川崎病の病初期だろうと思い、翌日精査のためうちへ来るようお話しした。

 予定通り来院され、採血したところ白血球を含め炎症反応が高値を示しており、口も赤くなってきたのでやっぱり川崎病だろうと入院してもらった。しかしまだ発熱から2日目、眼が赤くなって4日目とのことで、アスピリン内服のみ開始し、様子を見ることにした。すると入院翌日、すなわち発熱3日目で解熱してしまったのだ。眼も発疹も薄らぎ、口の赤みも和らいでいる。こりゃ一体?と思いながら様子を見ていると、やはりすべての症状が消失してしまった。炎症反応そのものも低下傾向を示し、γグロブリンを使用することなく1週間が過ぎた。眼が赤くなって10日が過ぎた頃、指先の皮が剥け始めた。やっぱり川崎病だったかと、再度採血してみたところ肝機能の悪化と炎症反応のくすぶりが確認された。熱は出ていない。心臓の冠動脈も問題ない。しかし・・・

 親と相談した結果、γグロブリンを使用することにした。問題なく点滴し終わり、現在炎症反応は全く陰性、肝機能も正常化している。膜様落屑という指の皮剥けもほぼ全部の指に起こっている。本人は終始ニコニコ。ミルクもたっぷり飲んでいる。

 病気はその人によって反応が違うものだ。教科書に載っている症状と違うからと否定できるものでもない。ただし疑いを持つのは勝手だが、あてずっぽうは情けない。不必要な検査は、たとえ患者本人や家族が希望しても、ホイホイ行うべきものではない。信念と努力と経験、そしておそらく第六感とか運も味方につけるべきものが医療だと思う。

 

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2009年7月14日 (火)

重症度判定

 子供の状態を考える上で、重要視していることがある。もちろんバイタルサインは当たり前だし、末梢の循環を考える上で手足の色や循環速度を測るのも当然だ。それより当てにしているのは、顔色と遊ぶ活気だ。そいつが消えている子供は、やばい。何が起きているか探るのに手間取っては居られない。

 6ヶ月の女の子が予防接種にやってきた。来る直前までキャッキャと遊び、ミルクもよく飲んだとのこと。直前の検温で38.5℃。もちろん顔色もよく、咳や鼻水もないし、のども赤くない。2日後に来てと、一端帰宅して貰った。2日後、やはり38℃ちょっと過ぎる。バイタルは問題なく、よく飲みよく遊んでいる。3ヶ月未満なら即検査するところだが、もう2日見ましょうと帰した。翌日の夜中、40℃近くに体温が上昇し、手足が冷たくなって色も数時間悪かったとのことで朝になって来院。この時体温38.0℃。よく飲み、よく遊び、顔はニコニコ笑顔であった。この笑顔だと気乗りはしないが、昨晩のことや続いていることを考えて採血するよう薦めた。結果はクロ。上部尿路感染症だった。

 先程VCUG(膀胱造影)を終えた。幸い逆流はなかった。本来なら女の子の初めての尿路感染症だけでVCUGは行わない。しかし家族歴として膀胱尿管逆流があり、家族の希望もあって検査することになったのだ。

 しかしあの笑顔にはだまされた。この年から男をだましちゃいけないぜベイベー。

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2009年5月30日 (土)

あぁ君か

 「○■△君、71番にどうぞ」

 その少年はスルスルっとドアを開け、丁寧にお辞儀し、

「おじゃまいたします。」と診察室に入ってきた。

 「おっとその声とその礼儀正しさは、もしやUSB少年・・・」

 「いや~~元気だったかい。」

少年「いえ、別に元気というわけでも・・・」

母 「何言ってんの。バカなくらい元気でしょ。」

 相変わらずの親子関係のようだ。彼は軽度の水腎症があり、毎年エコー検査を受けに来ている。今年もそんな季節だということだ。

 「さて、また見てみような。」

少年「パソコンですね。えっ、何するんですか。」

看護「お腹から見るからね。ちょっとスボン下げさせてね。」

少年「いっ、いやですぅ~~」

母 「だから黙ってなさい。」

少年「だって~~何見るんですか~」

 「膀胱だよ。心配しなくても今年はチン○ン見たりしないから大丈夫だよ。」

少年「本当ですね。でもちょっと下げすぎですぅ。あっ、うっふぅん・・・・あっ、映った。ちょっと触ってもいいですか。」

母 「高いんだから、触っちゃだめ!前に聞いたでしょ。」

少年「でも普通のパソコンくらいでしょ。白黒だし。」

 「ちゃんとカラーもでるよ。ちょっと待ってな。今度は背中から。はい、息を吸って~止める・・・・できるね~~じゃあ普通に息していいよ。これからカラーにするよ。」

少年「ちょっとだけじゃん・・・」

 「あのね、見たいところだけカラーにしてるんだよ。動きのあるものに反応しているんだよ。近づいてくるものは赤、遠ざかるものは青、流れるもの、つまり血管が映し出されているんだよ。」

少年「知ってるよ。ドップラーって言うんでしょ。」

 「おお!年々賢く成長するな~君は!!お母さん、楽しみですねぇ。」

母 「はぁ・・・・・置いて帰りたいくらいですが・・・・」

 帰り際もちゃんと彼はお辞儀をして帰っていった。またな!!

 

 

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