2009年9月 8日 (火)

移動性関節痛

 発熱と足関節痛および腫脹で来院した女児。炎症反応も高値を示したので、まずは化膿性関節炎を考えて、血液中の細菌検査の後抗生剤を投与した。すると2日で別の関節が腫れ、痛みも激烈となった。もとの関節は徐々に痛みが薄らいでしまった。はて・・・

 さらに3日するとその関節も痛みが消失し、今度は肩の関節が痛くなったらしい。大関節の症状で、発熱を伴うことからJIA(若年性特発性関節炎:いわゆるリウマチ)を強く疑い、NSAIDs(解熱鎮痛剤)を使用し、効果を待った。しかし発熱はわずかに治まるものの、痛みは更に移動し、手関節を痛がるようになってしまった。

 症状は他になく、頸部のリンパ節がわずかに腫大しているものの肝脾腫や皮疹を認めない。採血ではWBC 9500, CRP 7.3, LDH 140, フェリチン150, 血沈110mm/h、IgG 1700、尿中はβ2MG 61で蛋白や血尿なし。これなら高サイトカイン血症とも言えない・・・ASO 26, ASK 20で、おまけに咽頭迅速検査で溶連菌感染も否定され、リウマチ熱も考えにくい・・・

 JIAなど免疫疾患はサイトカインが身体のある部分を攻撃するものだ。サイトカインが異常に働いていることを示す値があまり上がらないとすると、あとは悪性のものを考えるべきだろうか。

 ということでこれから骨髄生検を行う。白血病でないことを祈りながら。

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2009年8月31日 (月)

脳炎?脳症?

 成長ホルモンを使い始めた男の子。先週からネフローゼを発症し、入院している。

 ネフローゼを発症した原因として成長ホルモンは本当に関係ないのかなど検索している間にステロイドが反応してくるだろうと思っていた。しかし1週間経っても全くその兆しもない。それどころかステロイドの反応が悪い子供達によく見るようなタマタマ&チ○コの水風船化まで認めるようになった。本人は「チ○コが大きくなった!」と喜んでいるのがせめてもの救いだけれど・・・

 ネフローゼは尿に蛋白が漏れることで、血液中の蛋白が失われ、身体中が浮腫むにもかかわらず血管内は脱水を来すという病気だ。血管の中から水がなくなると、血が固まりやすくなる。蛋白が失われれば、抵抗力も失うことになる。とんでもなく危険な状況をステロイドが良くしてくれる。ただしステロイドには副作用がある。いろいろあるが、免疫力低下や骨の成長の問題は必発だ。血圧が上がる人もいる。

 そんなおり、一昨日血管内脱水があるはずなのに、少し血圧が高く(130/100; 12歳)なり始めた。その夜、突然の激しい頭痛、嘔吐が出現した。そして2分間の全身性強直性痙攣も起こした。レベルは痛み刺激に開眼するJCS30だ。脳梗塞?高血圧性緊急症?麻痺はない。瞳孔もOK。呼吸状態もまずまずだ。ラジカット&ペルジピンを落としながらMRIへ。

 なんだこの像は?T2 high、T1 low, T2フレアでもhighなエリアが小脳、後頭部のあちこちに多発しているぞ!

 ADEM ?PRES ?ミトコンドリア?それともカビなどの感染?

 髄液検査では細胞数の増加や蛋白・糖の異常を認めず、圧も高くなかった。痙攣予防と脳圧降&血圧降下剤、そして抗真菌剤&抗生剤などの投与を開始したところ、現在とても落ち着いている。

 さてなにが起こったのだろうか。

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2009年8月28日 (金)

おそらく

 友の声に押され、ようやく少し元気回復。

 今日は2人の患児を紹介する。

 一人はまだ確証を得ていないのだが、もう3年診ている高校生の女の子。学校検尿でタンパク尿と血尿を指摘されて他院へ。この時は0.3g程度の一日タンパク尿量&30個程度の血尿があり、補体(C3)もわずかに低下していて、ASOは中等度高値にて急性腎炎だろうと言われていた。徐々に尿所見が陰性化するも補体が一向に上がってこないとのことで当院を紹介されたのだった。

 紹介されてからこの方、蛋白尿は時々軽度認めるものの血尿はない。補体は微妙に正常値を下回る程度。蛋白尿が増えてくるなら腎生検と言い続けて3年が過ぎてしまった。本人に全く自覚症状なし。おそらくだが、MPGN(膜性増殖性糸球体腎炎)それもfocalな病態が隠れているのだろうと予想している。SLEといった全身疾患も否定は出来ないが、いずれにせよ今actionを起こさずともよいと思いながらの3年だ。ただ来年は高校3年になる。進学を希望しているとのことだから、まぁまだ待てるか。

 もう一人は4ヶ月の男児。急病診療所で38℃ちょうどの発熱とのことで拝見した子だ。2日前に眼が赤くなり、その後顔と手に発疹が出たので小児科へ行ったところ何ともないと言われたとのこと。こりゃ川崎病の病初期だろうと思い、翌日精査のためうちへ来るようお話しした。

 予定通り来院され、採血したところ白血球を含め炎症反応が高値を示しており、口も赤くなってきたのでやっぱり川崎病だろうと入院してもらった。しかしまだ発熱から2日目、眼が赤くなって4日目とのことで、アスピリン内服のみ開始し、様子を見ることにした。すると入院翌日、すなわち発熱3日目で解熱してしまったのだ。眼も発疹も薄らぎ、口の赤みも和らいでいる。こりゃ一体?と思いながら様子を見ていると、やはりすべての症状が消失してしまった。炎症反応そのものも低下傾向を示し、γグロブリンを使用することなく1週間が過ぎた。眼が赤くなって10日が過ぎた頃、指先の皮が剥け始めた。やっぱり川崎病だったかと、再度採血してみたところ肝機能の悪化と炎症反応のくすぶりが確認された。熱は出ていない。心臓の冠動脈も問題ない。しかし・・・

 親と相談した結果、γグロブリンを使用することにした。問題なく点滴し終わり、現在炎症反応は全く陰性、肝機能も正常化している。膜様落屑という指の皮剥けもほぼ全部の指に起こっている。本人は終始ニコニコ。ミルクもたっぷり飲んでいる。

 病気はその人によって反応が違うものだ。教科書に載っている症状と違うからと否定できるものでもない。ただし疑いを持つのは勝手だが、あてずっぽうは情けない。不必要な検査は、たとえ患者本人や家族が希望しても、ホイホイ行うべきものではない。信念と努力と経験、そしておそらく第六感とか運も味方につけるべきものが医療だと思う。

 

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2009年7月14日 (火)

重症度判定

 子供の状態を考える上で、重要視していることがある。もちろんバイタルサインは当たり前だし、末梢の循環を考える上で手足の色や循環速度を測るのも当然だ。それより当てにしているのは、顔色と遊ぶ活気だ。そいつが消えている子供は、やばい。何が起きているか探るのに手間取っては居られない。

 6ヶ月の女の子が予防接種にやってきた。来る直前までキャッキャと遊び、ミルクもよく飲んだとのこと。直前の検温で38.5℃。もちろん顔色もよく、咳や鼻水もないし、のども赤くない。2日後に来てと、一端帰宅して貰った。2日後、やはり38℃ちょっと過ぎる。バイタルは問題なく、よく飲みよく遊んでいる。3ヶ月未満なら即検査するところだが、もう2日見ましょうと帰した。翌日の夜中、40℃近くに体温が上昇し、手足が冷たくなって色も数時間悪かったとのことで朝になって来院。この時体温38.0℃。よく飲み、よく遊び、顔はニコニコ笑顔であった。この笑顔だと気乗りはしないが、昨晩のことや続いていることを考えて採血するよう薦めた。結果はクロ。上部尿路感染症だった。

 先程VCUG(膀胱造影)を終えた。幸い逆流はなかった。本来なら女の子の初めての尿路感染症だけでVCUGは行わない。しかし家族歴として膀胱尿管逆流があり、家族の希望もあって検査することになったのだ。

 しかしあの笑顔にはだまされた。この年から男をだましちゃいけないぜベイベー。

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2009年5月30日 (土)

あぁ君か

 「○■△君、71番にどうぞ」

 その少年はスルスルっとドアを開け、丁寧にお辞儀し、

「おじゃまいたします。」と診察室に入ってきた。

 「おっとその声とその礼儀正しさは、もしやUSB少年・・・」

 「いや~~元気だったかい。」

少年「いえ、別に元気というわけでも・・・」

母 「何言ってんの。バカなくらい元気でしょ。」

 相変わらずの親子関係のようだ。彼は軽度の水腎症があり、毎年エコー検査を受けに来ている。今年もそんな季節だということだ。

 「さて、また見てみような。」

少年「パソコンですね。えっ、何するんですか。」

看護「お腹から見るからね。ちょっとスボン下げさせてね。」

少年「いっ、いやですぅ~~」

母 「だから黙ってなさい。」

少年「だって~~何見るんですか~」

 「膀胱だよ。心配しなくても今年はチン○ン見たりしないから大丈夫だよ。」

少年「本当ですね。でもちょっと下げすぎですぅ。あっ、うっふぅん・・・・あっ、映った。ちょっと触ってもいいですか。」

母 「高いんだから、触っちゃだめ!前に聞いたでしょ。」

少年「でも普通のパソコンくらいでしょ。白黒だし。」

 「ちゃんとカラーもでるよ。ちょっと待ってな。今度は背中から。はい、息を吸って~止める・・・・できるね~~じゃあ普通に息していいよ。これからカラーにするよ。」

少年「ちょっとだけじゃん・・・」

 「あのね、見たいところだけカラーにしてるんだよ。動きのあるものに反応しているんだよ。近づいてくるものは赤、遠ざかるものは青、流れるもの、つまり血管が映し出されているんだよ。」

少年「知ってるよ。ドップラーって言うんでしょ。」

 「おお!年々賢く成長するな~君は!!お母さん、楽しみですねぇ。」

母 「はぁ・・・・・置いて帰りたいくらいですが・・・・」

 帰り際もちゃんと彼はお辞儀をして帰っていった。またな!!

 

 

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2009年5月12日 (火)

母子手帳

 母子手帳は妊娠・出産の記録だけでなく、出生後の成長発達の記録が詰まった重要な情報源だ。医療者にとっては患児の置かれた状況を把握するのに欠かせないものである。ご両親にとっては、大切な子供の成長記録であり、離乳食や日々の過ごし方など育児方法や予防接種予定まで記載された優れた育児書である。大変便利な手帳であることは言うまでもない。

 我々は日常の外来診察にいらっしゃった患者さんすべての母子手帳に目を通すわけではない。しかし予防接種や乳児健診にいらっしゃる場合はもちろん目を通すし、初めて外来にいらっしゃった患者さんで、乳幼児期であったり、あるいは成長発達を確認したい場合や、母親の感染歴などを確認したい場合は見せていただく。

 必要十分に書かれた簡素な手帳もあれば、余白がもったいないかのごとくびっしりと記録された手帳もある。写真や絵で飾られたものもあり、玉手箱と表現してよいほど愛情の詰まった手帳がほとんどだ。

 ところがこのところ出生後、医師や看護師の書いた記録以外まっさらな手帳をみる機会が増えている。子沢山で記入する時間もないという方でもない。むしろ一人目の子供で、べったりと寄り添っている風のお母さんの手帳が真っ白なのだ。もちろん子育てを放棄している風でもない。しかし「首が座ったのはいつごろでしたか。」とか「おすわりできるようになったのは?」と聞いても答えられない。つまり見てきて知っているけれど、正確な時期を忘れてしまっているのだ。先日は1歳半まで全く健診を受けることなく経過した児の母子手帳を拝見した。成長発達の過程を辿れるか否かは、疾患の有無を見定めるのに重要であるが、それ以上に重要なのは親の愛情を推し量る物差しになりうる点だ。それは現時点で役立つだけではない。

 思い出して欲しい。自らの思春期以降の親との関わりを。反発したり、愛情を疑うこともあっただろう。

 想像して欲しい。そんな時に愛情にあふれる母子手帳をお互いに読み返す瞬間を。

 写真アルバムや映像に撮ってあるから大丈夫とおっしゃるかもしれない。もちろんそれはそれで結構。しかし医療、すなわち健康管理に必要な情報は母子手帳に勝る記録はないだろう。是非しっかり活用し、そしてそれを巣立つ子供に持たせてあげて欲しいのだ。

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2009年5月 7日 (木)

よく来た!

 中学2年で不登校となり、すったもんだの後児童相談所に一時預かりされていた女子がいた。信頼できる大人がおらず、しばらく私の外来や相談室に毎日顔を出していた。しかし中学3年の半ばあたりからぷっつりと姿を現さなくなった。高校受験など含めてどうしているだろうと気になっていたが、やっと今日、顔を見せてくれたのだ。

 ここに来るようになった経緯は省くとして、一時は相談室においてしばらく勉強を見てあげていた。頭の回転は良く、小学校で学ぶべき事柄は一通り出来ていて、中学1年までは真面目に勉強していたことがよくわかった。普通に勉強すれば、進学校に行けるだけの頭のある子だった。こちらが出す宿題にもちゃんと答えてきたことから、面倒を見てくれる大人さえいればと思っていた。

 現在は定食屋でバイトしているらしい。高校は受験しなかったが、彼氏の薦めもあって来年はなんとかしたいと思い始めているようだった。ちゃんと食べて、眠っている様子も見えた。相談できる大人を造らないとダメだと話してきたが、児童相談所の先生ともコンタクトを取っていた。私の所にも少なくとも3月に一回は顔を出すよう話した。もちろん毎週通ってもよいとも。

 夜回り先生のようなことまでは私にはできない。しかし困ったときに駆け込めるところになればとは思っている。

 何も話さなくてもいい。心配している大人が居ることを感じてくれればそれでいい。

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2009年4月21日 (火)

若き日の過ち 後編

 酒の飲み方を知らなかった。デザートのワインゼリーを食べるだけで顔が火照るアルコール検知器である私は、不幸な学生時代を過ごした。飲み会はすべてあちらの世界へトリップし、吐物まみれになるだけのものでしかなかった。あの時代、そう一気一気のかけ声に煽られ続けたあのバブルの時代だから仕方なかったのかもしれない。

 勧められるわけではなく、自らの意思で飲む酒は美味かった。上り立つ蒸気も、高まる心拍も、少しのまどろみの中に落ちては浮き上がりを繰り返した。2回目の炉端焼き屋を出る直前に、先輩が言った。

「クーデルムーデルよ、この後することは判っているな。」

私 「はい、このまま病棟に戻って○△さんたちの経過観察とカルテ整理をして帰ります。」

「よし、じゃあ行ってこい。」

 私はその足で病棟へ直行した。病室はすでに消灯し、ナースステーションだけが真昼の明るさを保っていた。

 患者さん達の状況を看護師さんたちから聞き、バイタルサインや点滴の具合などを確認した。問題なし、今日はこのまま布団に直行しようと、病院の隣にある研修医の寮にフラフラと戻った。

 朝、目覚ましの音が頭に響いた。軽く痛む。顔を洗って、一杯の冷えた水を飲み干すと、身体がようやく目覚めた感じがした。さっとシャワーを浴び、6時の回診に出かけた。

 早朝の病棟はいつも静かだ。朝日のこぼれる病室に検温のため看護師が静かに入っていく。皆ゆっくりと起き始める時間だ。喧噪にまみれる病院でなく、この明るい時間の病院が好きだ。しかしその日は、なんともいえない空気が支配していた。

 私は不思議な感覚のまま、肝癌・肝硬変で腹水が大量にたまって入院していた年輩の患者さんの様子を真っ先に見に行った。

「○△さ~ん、おはよ・・・・・・・・えっ、なんで居ないの?荷物まで・・・」

 丁度通りかかった深夜当番の看護師さんに尋ねた、

「○△さんって、どこか部屋移動した?」

(ぶっきらぼうに) 「亡くなりました。先生覚えてないんですか?」

「えええっっっっっ・・・・・・・・・

 連絡してくれた?」

看「もちろん電話で連絡しました。でも全然話にならなかったので当直の先生にお願いしました。処置は全部■先生がやってくれました。失礼します。」

 茫然自失となったのは言うまでもない。たかが研修医、担当といっても何が出来るでもなく、無駄話を担当患者さんとするくらいが関の山のちっぽけな新米だ。それでも昨夜まで一緒に話していた○△さんの最後を看取ってあげることすらできなかった自分に腹が立った。その日から立て続けに担当の患者さんが急変した。結局一週間で5人の患者さんを見送った。○△さんを入れて6名、皆悪性腫瘍を患い、末期の方ばかりだった。指導医の人柄もあって、皆さん家族も含めて良い顔をして旅立たれた。私は○△さんのことを引きずる暇もなく、一週間病院に張り付き、それでも何も出来ぬまま、数珠を摺り合わせるだけだった。

 それからの私はよほどのことがないと酒を口にしていない。気になる患者さんが居るときは、たとえ安定していても当番が別の医者であろうと公式な行事であっても制限してしまう。最後に指導医の先輩と飲んだ日もそうだった。先輩は何も言わなかった。帰り際に一言だけこう言った。

「これからも研修医を育て続けるよ。こうやって飲みながらな。それが俺のライフワークだ。」

 不思議なことにそれからは飲んでも病院へ戻ると酔いが醒めた。もひとつ不思議なことに、そんな時は決まって深夜にエマージェンシーコールが鳴った。当直だけの手に負えない救急患者が発生したという院内放送だ。酒臭い息を吐きながら当直に混じって心臓マッサージを繰り返し、点滴ルートを確保し、体外循環をセットしたりした。気が付くとこんなに居たのかというくらい深夜の病院に医者が残っていて、皆赤ら顔をしていた。そのまま皆散り散りに帰ってゆく。そして翌日何事もなかったように普通に仕事を始めていた。

 そんなだから当直が酒を飲んでよいなどとは言わない。むしろ美味しい酒が飲める機会を本当に大事にしたい。気の置けない仲間と学会という場所で語らいながら飲む酒ほど深く美味い酒はない。

 しみじみ、

 それが出来る夜だけの宝物だと思っている。

 

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若き日の過ち 前編

 研修医一年目。当時重症の消化器疾患患者さんばかり30人ほどを担当していた。担当といっても研修医一年目が出来ることなど限られている。指導医の言われるがまま処方と点滴、検査予定をたてて患者さんに伝え、実行に移していくだけだ。

 それでも指導医よりも早く患者さんの状況を把握するため早朝6時には病棟でラウンドし、必要な人の採血をして廻った。それぞれの治療の効果を見定めるため、ルーチンワークが無いときは患者さんの傍に出向いて、診察&世間話をした。一日の終わりにはその日の出来事をカルテに書き込むのだが、それだけでも30人いれば相当な時間がかかる。その上、自分の出した指示を指導医が直しているところを見つけては、何が違うのかをメモして廻っているうち、大抵深夜1時、2時にはなってしまった。

 指導医からは看護師さんを含め、医療スタッフのすることは皆出来るようになりなさいと指導されていた。それを聞いているからか、病棟の医療スタッフは研修医をあごで使う人もいた。仕方ない、出来ないのだからやってみるほかない。いつか見ていろという気持ちで様々なことをこなしていった。そんなだから、自分の時間などあるはずもない。時はあっという間に過ぎていった。

 数ヶ月もすると、ルーチンワークに慣れ、相変わらず時間に追われるものの、今度はもっと上を目指して勉強する余裕が生まれてきた。何事においてもエキスパートは居るもので、その一つ一つを見て、感じて、バックグラウンドを確認することはとても楽しかった。特にこのとき覚えた内視鏡とエコー技術は、その後自分の特技として本当に役に立った。

 内視鏡は今でも忘れられない、1ヶ月ほど指導医の先輩の真後ろについて、エアー内視鏡を毎日数時間やり続けた。3列並列で行われる内視鏡検査のうち、自分が見ているのは先輩の背中と肩越しに見える患者さんの表情とモニター画面だ。もちろんモニター画面に映るのは先輩が施行している内視鏡画面。患者さんの体位も表情も全部見て取れた。ちょうど1ヶ月経った日、突然内視鏡をヒョイと渡された。一人で患者さんに検査をしなさいとのことだった。指導医の動きは皆自分の身体が覚え込んでいた。掛ける言葉も同じだ。不思議なことに何の問題もおこらず、必要な部位の確認と写真撮影、そして病理生検も出来てしまった。自分でも驚いたが、指導医は何事もなかったように、これから全部おまえがやれと言った。もちろんその後いろいろな難しさを経験したが、それは応用で対処できた。出来上がったフィルムをみれば、技術も精度も病気の見落としの有無も確認できる。フィルムカンファレンスというものが毎週行われ、そこで他の先生との比較も出来た。自分のフィルムを見て、自信を深めたのは言うまでもない。

 指導医の先輩は、半年間の内科研修の間に3回、二人だけで飲みに連れて行ってくれた。最初は右も左も判らなかった時、次は慣れてきた3,4ヶ月目の時、そして内科を離れる時だった。何を語るでもなく、ぐい飲みを手に、熱燗を注いではクイッといくだけの数時間だった。

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2009年4月17日 (金)

ロタウイルス流行

 季節はずれのロタウイルス感染の流行だ。まあ以前ほど冬季限定ということは無くなったが、胃腸炎症状の子供達を調べると出るわ出るわ・・・

 年少児だけでなく、年長児も大人もゲロゲロぴーぴーしている。さすがに年が上がれば症状の持続日数も少ないようだが、チビちゃんたちは予備力もなく、2,3日の入院加療を余儀なくされている。

 幸い下痢関連痙攣に至る子供や、腎尿路結石を来す児など認めないが、毎日結構な数の子供達が入退院していく。誰がどれくらいいたかなど覚えていられないくらいだ。

 ロタウイルスは下痢や嘔吐などの症状がなくなっても、便中に随分長い間排泄されると言われている。長い人だと1ヶ月くらい排出されるとの報告もある。簡便な検査として便中のウイルス抗原検査が出来るが、いなくなるまで検査するなど保険診療上出来ず、かといって数週間以上保育園など登園禁止とすることもままならず、流行を抑えられないでいる。便などの処理をしっかりすれば感染を防げるとはいえ、すべての人が上手くできるわけではない。しかもこのウイルスは特徴的な下痢となると教科書に書かれているが、典型的でない便にロタウイルスの抗原を認めることなど日常茶飯事だ。とすると正常と思っている人が実は保菌者であることも当たり前に存在するということだ。防御するには口に手を持っていく前には必ず手をしっかり洗うことくらいしかない。集団生活をしている幼い子供達への蔓延を防ごうとしても防ぎきれないのは仕方ないと言える。

 最近は親御さんもよく判っていて、下痢だけならば慌てず、水分を努めて摂取させ、ダメそうなら来院と言う方が多くなった。しかし嘔吐はやはり児の苦しそうな顔がそうさせるのか、一刻も早くなんとかしようと救急に駆け込んだり、脱水になってはいけないと吐いている傍から水分を取らせようとする人が多い。気持ちは判る。我が子の苦しそうな顔は見ていられない。しかし乳児でなければ、嘔吐してすぐ脱水にはならない。少なくとも半日の余裕はある。意識もハッキリしている状況で緊急性は少ない。傍にいてお腹や背中を数時間さすってあげるだけで落ち着くことも多いことを知って欲しい。なにより吐き始めてすぐに医療機関でしてあげられることはほとんどない。数時間は何を使っても止まりようがない。お腹を休めるようにしてあげるのがまず第一だ。

 少し落ち着いたところで欲しがるならスプーン一杯ずつの水分をあげて見て欲しい。5~10分置きにあげて、1時間経過して吐かないならコップであげるようにしてほしい。最初からコップでゴクゴクといくとまず間違いなく吐いてしまう。ちょっとずつにしても吐くなら病院を利用して欲しい。それが受診する絶好のタイミングだ。

 おっとまた入院?

 今日から始まった奈良での小児科学会、明日から行きたいのだけれど・・・・

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2009年4月15日 (水)

選択肢としてのDapson

 先日困っていたHenoch-Schonlein purpuraの男児。あれからレクチゾール(Dapson)という薬を始めた。使い始めてすぐに劇的に軽快!とはいかなかったが、外来フォローアップで徐々にステロイドを減量し始めている。

 先週末に児の通う学校の担任と養護教諭が今後の対応につき話を聞きたいとやって来られた。なんとあれだけ引っ込み思案だった彼が、朝練のある陸上部に入りたい、そしてハードル競技をやってみたいと言っているのだとのこと。余りの変化に驚くばかりであった。もしかして精神作用もあったかと思ったりもしたが・・・

 とにかく半信半疑ではあったが、この疾患に効果がありそうな手応えを感じた。つまりステロイド治療以外に選択肢を持つことが出来たということだ。

 で、一昨日、別の男児が他院から紹介されてきた。腹痛を繰り返しているが安静や食事制限しなくてはならないほど激烈ではなく、それでも紫斑が繰り返し出続けており、どうするべきか判断して欲しいとのことであった。付き添いの母の状況もあって、とりあえず入院し、治療の必要性等判断していきましょうとお話しした。

 ステロイドは効果が高いが、続けると副作用を心配しなくてはならない。レクチゾールも副作用が皆無というわけではないが、重篤なものは頻度も低い。ステロイドで短期間に治まるならそれがベストかもしれないが、もし長期になりそうならレクチゾールに変更も可能ということだ。今後レクチゾールの効果に十分な信頼を持てるようになるならば、その順番も変わることもあるだろう。

 いやはやこれは本当に凄いことなのだ。

 それにしても今年はこの紫斑病の当たり年なのだろうか?腎炎を来す児も例年より多い気がするが・・・

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2009年3月31日 (火)

悩ましい

 1歳の男の子。発熱2日目で苺舌にリンパ節腫脹、BCG痕の発赤が出現し来院した。もちろん川崎病を真っ先に疑い、採血したところ、肝機能障害(ASTなど500超)&胆道系酵素の上昇と共にCRP値12、白血球WBC 15000と炎症反応高値も認めた。こりゃ間違いなかろうと入院の上経過観察し、診断基準を満たしたところでγグロブリンをと説明した。

 翌日にはお腹に発疹が出現し、更に1日経って手足が赤く浮腫んできた。眼は赤くないものの、発熱も入れれば明日にはしっかり診断基準を満たすだろうと思っていた。入院当日からアスピリンの内服も開始しており、川崎病の説明・合併症の発生およびγグロブリンの説明も既に終了していた。後は時間だけと思っていたら、急に熱が下がってしまった。

 川崎病とは思っても、感染症の可能性を否定しきれるものではなく、血液培養と共に一般的なセフェム系の抗生剤を数日間投与し、抗生剤の効果がないことも一応確認することが多い。本患児は血液培養で何も見つからなかったが、抗生剤がヒットしたように見えたのだ。

 これで川崎病としてγグロブリンを使うわけにはいかない。採血や心臓のエコーを繰り返し、炎症反応の消失と合併症のないことを数日間確認し退院していった。川崎病ではないとの確証があるわけではないので、アスピリンの内服は少量続けたままであったが。

 本日発熱してから2週間になる。心エコーを確認しにいらっしゃったが、やはり心合併症はない。膜様落屑という指先の皮剥けも認めない。

 さて・・・どこがFocusの疾患だったのか。化膿性頸部リンパ節炎としては症状が弱っちいし、尿路感染はなかったし・・・

 病気っていうものは、そう簡単に診断とか治療とか決めつけが出来ないものなのだ。

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2009年3月17日 (火)

I miss you.

 1年半ほど通ってくれたとっても可愛いForeigner boyが父親の転勤のため旅立っていった。母親の妊娠についても相談に乗っていたこともあり、2人とも受け入れてくれる転居先の病院を調べ、紹介状を持たせた。

 父親は技術者として日本で研鑽を積み、母国に帰ることを予定していた。母親は中学の英語教師(補助?)を行っていたが、二人とも日本語は上手でなく、英語で対応してくれる医者を捜していた。小生、英語は中学レベルで止まっていると自覚しているが、communicationは心でと決め、拙い英語を発し続けたところ、気に入ってくれたのだ。ほぼ月に1,2回外来に通院してきたが、毎回よき英会話レッスンだったと思う。お互いがお互いを理解しようとするとき、会話は思った以上に弾むものだ。この私が英語で相手を笑わせることができるなど自分自身で想像も出来なかったことだ。

 最後の外来を終え、私はお別れを言った。すると彼は診察室の椅子を抱きしめて離れようとしなかった。ようやく一人で立つか立たないかだった君が 今や診察室を駆け回り、英語と日本語の狭間で私の指示に拒否ばかりしていた君が"Open your mouth"の一言で吸い込まれそうなくらい大きな口を開けるようになった。もう少し君の成長を見たい・・・そう思うとグッとくるものがあった。

 あの両親の元でなら、きっと立派な男になるだろう。きっと。

 See you again ! 

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2009年3月10日 (火)

季節はずれ

 今年は随分と早くインフルエンザが流行した。例年通りA型が流行したのだが、タミフル耐性だなどと騒いでいる間に消えてしまった。2月がとても暖かかったせいかもしれない。他の感染症も極端に減少し、2月とは思えない少なさの外来が続いた。

 しかし2月後半、季節はずれの菜種梅雨となり、寒暖の差が激しくなると、まず感染症ではなく喘息の子供達が悪化し始めた。それに引き続き感染症が勢力を拡大し、再びインフルエンザが猛威をふるい始めた。今はB型がほとんどだが、先週・今週ともの凄い数の患者さんが押し寄せている。

 同時に冬としては異例の閑古鳥ばかりだった病棟も、連日の入退院でてんてこ舞いだ。

 今日も2人退院し、新たに2人入院した。

 さて次はどんな子がやって来るのだろう?

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2009年3月 8日 (日)

これで笑顔は作れない

 身近でおこった実際の診療録である。

 保育園に通う年少児。37℃前後の発熱が朝からあると来院。咳も鼻水もなく、視診でも咽頭発赤もなかった。何より活気に満ちあふれ、食欲も問題ないとのことであった。この場合たとえインフルエンザ感染の初期としても、発熱からの時間経過の短さから検査の適応外となる。当然、様子をみるだけで良いと帰宅させたところ、その後熱は39℃まで上昇し、夕方別の医院でインフルエンザと診断されたらしい。

 それだけならよくある話だが、この児の親御さんは朝検査しなかった対応に腹が立ったらしい、どうして検査しなかったのかと父親がクレームをつけてきた。連れてきたのは母親だったらしいので、そこで話の行き違いがあったのかもしれない。それにしても診断のための検査をするかしないかは医者の裁量であろう。このクレームに医者が対応しなくてはならないのもおかしい。

 もうひとつ。耳が痛いと来院した女児。父親は母親にいつも耳鼻科でもらっている薬をもらって来て欲しいと頼まれ、女児と救急診療所を訪れた。しかし救急診療所は総合病院ではなく、薬局には緊急用の薬と申し訳程度の抗生剤&対症療法薬しか置いていない。時間的に院外処方を処方するシステムもない。診察した医者が自分の裁量で処方することを提案するも、父親は納得せず、自分の携帯の写メ画面に映る処方箋を診察医の鼻先に突きつけ、これをよこせと言う。非常に温厚な彼は、はっきりと見えないその画面から想像する救急診療所薬局にある薬を見繕って渡した。しかしその画面からは通常頓服で使用しない薬が頓用として書かれているように見えたらしい。丁寧に説明し、一日3回飲むよう伝えて帰したとのことだった。

 数時間後にその母親から激しい怒りの電話が鳴った。鎮痛剤の頓服がないとのことだった。

 もちろん今回処方した医者は鎮痛剤のお話もしていた。抗生剤の本来の使い方を含めて丁寧にお話したらしい。しかしそれらを拒んだのは父親だ。携帯の画面からお前の処方はおかしいと食ってかかっていたのだ。

 私の立場からするとこれは医者の裁量権の侵害であり、断固抗議するところだ。

 非医療者の立場から見てどうであろう?

 

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2009年3月 6日 (金)

男は弱い・・・にしても

 小学生男児。血管性紫斑病(Henoch- Schonlein purpura)でフォローアップ中である。

 この3年間全く尿所見は異常を認めない、すなわち腎炎を伴わない代わりに、腹痛と関節痛を繰り返している。紫斑そのものは滅多に認めず、最初の診断時に紫斑を伴う腹痛で上記診断して以来、腹痛と関節痛時には紫斑病による痛みと考えてきた。ステロイドを静注すれば速やかに痛みは消失するが、内服ではなかなか治まらず、内服に切り替えられても、外来で隔日など減量すると途端に痛みが出てしまう。

 昨年のある半年間のみ、全く痛みなく過ごせた。それを除くと、一ヶ月とステロイドをオフに出来ない。いい加減免疫抑制剤を試そうかと言っていた昨年、突然痛みが止んでしまった。しかしまたこの半年、ステロイドが切れなくなってしまった。

 文献では腎炎を伴うもので、腹痛発作を繰り返す児に免疫抑制剤を使用したという報告は散見される。しかし腹痛発作のみでここまで使用するという報告を探せずにいる。

 さてどうしたものか・・・

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2009年2月26日 (木)

膠原病?

 先月から診ている10代前半の女の子。頬の発赤と両側小指の痛みで来院した。

 発熱なく、レイノー症状や朝のこわばりもない。もちろん呼吸状態も良好で心雑音や不整脈もない。採血では、血沈を含め炎症反応陰性で、抗核抗体やリウマチ因子も陰性であった。マイコプラズマの抗体価が陽性だったので、マクロライド内服を指示して帰した。

 2週間経過し、再度来院したときには顔の発赤は消失していた。しかし指の痛みは少し増強し、範囲も小指から両側第3.4.5指に広がり、しかもPIP関節が少しむくみ、黒く変色していた。 ただしやはり発熱なく、痛いといっても可動域制限もなく、変形ももちろんしていなかった。爪の末梢循環も1秒以内だった。今度はSLEや強皮症も含めて自己抗体を検索した。しかし何一つ引っかかって来なかった。もちろん血沈もCRPもIgGも補体も正常だった。

 本日来院され、整形外科に相談してみた。指だけ診るとリウマチを強く疑うとのことであった。ただし診断基準は満たさず、とりあえず特異的な抗CCP抗体などを検査しようとのコメントを貰った。

 さてはて、彼女の病気はなんでありましょうか。。。本人は熱もないのでケロッとしており、痛いと言いながら弟とキャッチボールしているそうな・・・

 とりあえず本日の外来は滞りなく過ぎ去った。このあと女子医大でのカンファレンスに参加するが、道中気を付けることにしよう。

 では。

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2009年2月 9日 (月)

malignant lymphoma ?

先日頸部痛で来院した小学校高学年の男の子。弟が一週間前におたふくとなり、自分もやっていないからきっとそうだと思っていたとのこと。潜伏期間が短すぎるのと、なにより耳下腺を含め唾液腺が腫れていないので、それは違うとお話しした。

 それより両側のリンパ節がわずかに腫脹していたが、エコーで右のしこりの一つの顔つきが気に入らなかった。そこで採血させてもらい、後日結果を聞きに来るよう言って返していた。

 本日結果を聞きにやってきたが、まだ痛いとのこと。しかし発熱など他の症状は見あたらない。触るとやはりリンパ節と思われる柔らかい小指頭大のしこりを数個触れる。エコーで再度診ると・・・通常のリンパ節と明らかに違う組織が数個広がっていた。

 通常リンパ節は反応性に大きくなっても扁平で周囲が鮮明で、中がエコー上黒く抜ける。そしてリンパ門に沿って血流をわずかに認めるものだ。しかしこのしこりは、丸く、そして内部がまだらに白く、血流も豊富なのだ。

 採血結果を見直したが、悪性の場合高くなるLDHやフェリチン、IL-2 receptorなどは正常範囲だった。壊死性リンパ節炎では、白血球が減ったり、atypicalなリンパ球の増加を認めたりするが、それもない。お話の上、造影剤によるCTもチェックした。やはり2センチ大の血流の豊富な塊が数個頸にある。

 これ以上は専門家に任せるべきと判断し、近くの腫瘍専門医に電話をした。開口一番「そりゃ壊死性リンパ節炎なんじゃないの?」と横柄に言われたが、それかどうかを判定して欲しくて電話しているのだ・・・経過を見るか、すぐに生検するべきかを判断して欲しいとお願いし、紹介状を持たせてすぐ向かっていただいた。

 悪性ではないことを祈りながら・・・

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2008年12月27日 (土)

熱だけなら寝てていいよ

 先程救急診療所から帰った。

 4時前に来た14歳の男児の父親に罵詈雑言を浴びせられた。

 寝る前に熱が出始めたらしい。咳も鼻水もなく、のども痛くない。少しだるいが、痛いところもない。一通り診察したところ、のどが少々赤い?程度。

 風邪のひき始めかもしれないが頭を冷やして寝ていればよいこと、基礎疾患もなく丈夫な中学生だから、これからも熱が急に出たとしても心配せずあわてて病院にくる必要もないこと、もちろんぐったりして様子がおかしいならその限りではないことをお話しした。

 すると突然

 「来るなっていうことか、こらバカ医者!」

 とのこと。散々悪態をついて行ったが、母親がその父親と児を車へと急き立て、その後済みませんと頭を下げて行かれた。

 あんまり子供と話しもしていないんだろうな、あの父親。

 迷惑そうな子供の顔と、「寝てれば大丈夫だぞ」と伝えた時のあの子の眼が印象的だった。

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2008年12月 7日 (日)

吐き風邪ばかり

 外来は吐き風邪の嵐。

 しかしいつもの冬のノロウイルスより程度は軽く、1〜2日で治まっている。もちろんそれ以上続く人もいて、そんな人は入院となってしまう。どうも子供より大人の方が出足好調で、内科病棟がごった返している。さて軽いので検査していないが何のウイルスだろうか。

 昨夜の救急当番でも大勢来院してきた。ほとんどが制吐剤の座薬でなんとかなるが、点滴を余儀なくされる人もいる。昨夜の14才にはちょっと閉口したが・・・

 うちの中にも患者がいる。先週10才児が罹り、先程7才児が吐き始めた。

 蔓延させたくはないが・・・

 家庭内感染は予防なんて難しいんだよね・・・

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2008年11月19日 (水)

罪はないよ

 どうみても育児放棄。それなのに子沢山。(それ故に??)

 昨日入院した女の子は4歳。具合が悪いせいか、入院して以来全くしゃべらない。歯はみな齲蝕し溶けかかっている。尿意も伝えられず、おむつは変えられることなく悪臭を放っている。民生委員が育児補助を行っているらしく、入院時に付いてきていたが、そそくさと帰ってしまった。病状を家族に話すも、全く理解できた様子がない。医学&病院用語を全く省いても・・・である。

 ひどいマイコプラズマ肺炎で、間質影も出始めていた。酸素投与したいが本人が嫌がり、母親もそれをなんとかなだめようというそぶりもない。それどころか薬も飲ませたことが無い様子。とりあえず寄り添っているだけでも良い方なのかもしれない。

 入院時に4ヶ月の乳児も抱えており、その子も少し咳をしていた。気になって様子を聞いたところ、親戚に預けたという。しかし本日夕方遅くになって、咳がひどくてミルクが飲めないとの知らせが入ったらしい。要領の得ない話を小一時間聞いたところで、やっと事情が判り、すぐにその赤ちゃんを連れてくるようお話しした。

 もちろんしばらく子供たちの具合悪い状態が続いていたことも理由として挙げられるかもしれない。しかしこの子達の姿を見ればどれくらい世話をしていたかは一目瞭然である。不憫だ。子供達に罪はない。されどこの子達のこれから起こりうる医療支援すべき事柄において、手助けを買って出るような気持ちは、尻込みしてしまうというのが本音だ。おそらく何をしようとも伝わらず、持って生まれた生命力だけで乗り越える道を探るほかないのは目に見えている。

 ネグレクトが当てはまるかというと、そんな気持ちは毛頭無さそうだ。ただ単にキャパシティーを越えた生活を送っているということなのだろう。成長した兄弟たちがお互いに面倒を見られるようになれば救いだが、望めそうな子供達は・・・

 時々このような家族に遭遇するが、どうするのが一番良い方法なのだろう。未だわからないままだ。

 

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2008年11月11日 (火)

脱出

 見事に悪循環から脱出してくれました。2回目のγグロブリンが確実にヒットして、病状をガラッと変えてくれました。

 もう炎症像もなく、エコーも冠動脈が最大3mmまで拡張してきていたものが、確認しづらいくらいになっていました。

 なにより患児の機嫌がまるで違い、笑顔で我々を迎えてくれます。

 よかった!

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2008年11月 7日 (金)

川崎病 やはりすっきりせず・・・

 先日の児。γグロブリンで一応解熱をみたが、平行して咳がひどくなりレントゲンでは肺炎像を呈していた。川崎病でもレントゲンの変化はあるものだが、抗生剤の反応をみた。今ひとつ・・・

 炎症反応の下がりもわずかであり、症状は軽度発熱と頸部リンパ節の腫脹、そして時々現れる発疹のみ。悩んだが悔やみたくないということでγグロブリンをもう一度やってみている。

 くすぶっているとしか言い表しようがない。後一押しでよさそうにも思うが、どうだろうか。冠動脈は少しずつ拡大しつつある。ステロイドは使わない群に登録されたので、これまで使ってこなかった。ここから使うべきか、それともシクロスポリンという別の免疫抑制剤か・・・

 とりあえず明日の反応をみて。

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2008年10月24日 (金)

花粉症

 恥ずかしい話、秋にも杉花粉が相当量飛散していることを知りませんでした。

 この時期アレルギー疾患の方々は結構症状がひどくなり、ブタクサやアキノキリンソウの類やイネ科も悪さしているからねとお話しさせていただいておりました。

 杉花粉症の方、お気をつけくださいませ。

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2008年9月10日 (水)

γグロブリン不応川崎病

 川崎病にγグロブリンを使用することについて異論のある人は少ないはずだ。まずはこれを使ってみて反応をみるのが常套手段だ。

 川崎病の治療目的は合併症である冠動脈瘤を作らないことに他ならない。発症と同時に急激に瘤の出来る劇症型は別として、通常の川崎病ならまずは全身の血管炎症状を押さえ込むことがそれの近道だ。血管炎を押さえる薬剤として思い浮かぶものはいくつかある。γグロブリンの他好中球の働きを押さえるウリナスタチンやエラスターゼ阻害剤、ステロイド、免疫抑制剤であるシクロスポリン、ミゾリビン、血漿交換もよいだろうし、最近流行の生物学的薬剤である~マブもあり得るだろう。しかしこと川崎病に使用して効果のあると言われているものはγグロブリンの他は大差ない。そのγグロブリンが効かなかった時にどうするのか、それはまだはっきりした答えがない。多くの施設でもう一度γグロブリンを使用するという方針をとっているようだが、決まりがないというのが実情だ。ある施設では効かなければステロイドを通常量で使い、またある施設ではステロイドの大量療法を選択している。また他の施設ではシクロスポリンを試してみたり、いろいろ混合で使用してみたりもある。

 実はステロイドは以前川崎病で使用すると瘤の発生を増長してしまうとの発表がなされ、しばらく全く使われない時期があった。しかし疾病理論からもステロイドの有用性が見直され、最近ステロイドの効果を再認識する論文が相次いで発表されている。γグロブリン不応の川崎病に使用され、瘤を作らず押さえ込んだというものだ。とすればγグロブリンが効きづらい症例が予測できれば、早期にステロイドを使用することが可能になる。それ故最近ではγグロブリン不応予測値の研究がいたるところで行われ、誰それのスコアなる予測値が氾濫している。

 今年の小児科学会で、この予測値とステロイド治療を組み合わせた研究の立ち上げが発表された。予測値を元に不応例と予想される症例を二つにわけ、一つにはγグロブリンを、もう一つにはγグロブリンとステロイドを合わせて使うというDouble-Blind studyだ。早ければ来年早々にこの研究が厚労省の助成を受けて始まる。ステロイドの量が少なく、どうかと思うところはあるが、主旨に賛同し、私たちの施設でもこれに登録することにしている。

 振り返って、今回の児は予測上不応例であった。もしかして最初からステロイドを使っていたらどうだったか・・・しかしそれは誰にも予想は出来ず、しかもステロイドを最初から使う根拠もまるでないのだ。

 悶々とした日々がこれからも続くことだろう。しかしいつの日か必ず良い治療方法が見いだされ、そして川崎病の原因も特定できる日がくると信じている。微力ながらその手伝いが出来ればと願うばかりである。

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2008年9月 8日 (月)

きびしい川崎病

 川崎病の男の子。熱が出て4日目に来院し、川崎病と診断し、翌日朝からγグロブリンを始めた。

 川崎病は原因不明の全身性血管炎だ。なによりその合併症として心臓の筋肉を動かすための栄養血管である冠動脈に瘤ができることが問題だ。瘤が出来れば血流が悪くなり、心筋梗塞や心筋破裂を起こしてしまう恐ろしい合併症なのだ。それを防ぐため様々な治療が試されてきた。現在の第一選択はγグロブリンの大量療法である。しかし彼にはそれが効かなかった。

 一回目で効かない場合、もう一度投与する方法がとられる場合が多い。私ももう一度トライすることを勧め、同時にウリナスタチンという薬も併用した。しかし解熱してくれない。残された治療は多くはないが、ステロイドをやってみた。解熱し、炎症反応もグンと改善した。ステロイドとしてPSL 2mg/kgを3日間で症状が全く消失し、続けて1mg/kgを3日間、膜様落屑も認めたため0.5mg/kg3日間連日投与で終了した。本日からステロイドがなくなった。明日熱がなければ心エコーして帰ろうと言っていた矢先、先ほどから38℃を越える発熱・・・・川崎病再燃だろうか・・・・

 一筋縄でいかない患児がまたここに一人。病気は本当に人それぞれなのだ。

 追記:ステロイドがそれじゃあ少ないとか期間が短いというご意見があると思います。私ならこれを勧めるという治療法についても忌憚なきご意見をお待ちしております。

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閑散

 先週一週間は外来が閑散としていた。それもそのはず、学校や幼稚園が再開され、検査や日頃の疑問解消にいらっしゃるかたは既に夏休みに終えている。しかも感染症の流行もストップしているのだから閑散としない方がおかしい。

 それでもこのところの寒暖の差や飛び交う草木のもろもろの影響によるのか喘息患者さんが増えてきている。もっともコントロールが格段に良くなったせいもあって、ひどい発作の人は見なくなったが。

 沼のほとりでは稲刈りが行われていた。おこぼれを狙って鷺がうろうろしていた。稲のくずでも発作の原因になる人もいることだろう。それに加えてこれからはブタクサ・アキノキリンソウなどアレルギー原因となる草木の本番を迎える。

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2008年9月 2日 (火)

ダラダラFSGS

 FSGSという疾患がある。日本語名で巣状糸球体硬化症という。子どもの場合、ステロイドの効かないネフローゼ症候群に対し腎生検をしたらこれが発見されるというケースが多い。治療法も難しく、腎不全へ移行する率が高い腎疾患として知られている。世界中の小児腎臓病研究者たちが、この病気の治療方法を模索している。今のところ一番有効と思われる方法が、ステロイドの大量療法(パルス療法)と免疫抑制剤を組み合わせる方法だ。それにしても副作用を考慮しなくてはならず、しかも絶対に効くというわけではないところが問題だ。

 ネフローゼ状態にある子どもならば、浮腫もあり、身体のだるさ・所在なさを感じ、なんとかしなくてはと医療者も親も親戚も、なにより本人が思うことだろう。しかし蛋白尿が一日1g程度しか出ないネフローゼレベルではない状態の子供たちは、自覚症状なく、本人はもとより親も親戚もピンとこないものだ。そんな子供の腎生検でFSGSを認めたらどうだろう・・・

 実はそんなはっきりとした自覚&他覚症状のない、いわゆる軽~中等度蛋白尿(あってもネフローゼレベルへ達しない蛋白尿量)しかないFSGSをダラダラFSGSと僕らは呼んでいる。ダラダラだからその後の経過もそんなに悪くないのかと思いきや、結構な率で腎不全になっているようだ。「ようだ」と言うには訳があって、きちんとしたデータがまだない。そりゃそうだ、定義も名前も決まっておらず、だからこそダラダラFSGSなどと呼んでいるのだから。

 この夏、一人のダラダラFSGSを患う中学生にまずは通常のステロイドを使用してみた。しかし全く効果なく、今日からステロイドのパルス療法+免疫抑制剤療法を行うこととした。もちろん親御さんの不安は相当なものだ。腎不全の話もしたが、本人が全く自覚症状もないところに、ステロイドの大量投与を行うというのだから、ちょっと待ってとなるのが筋だろう。なんども話し合いをして、ようやく納得してもらった。

 何より効くことを願うばかりだ。ステロイドを始めても蛋白尿は減るどころか増えるばかりで、放っておけばあと数週間でネフローゼに陥ることだろう。免疫抑制剤だけで経過をみる方法もなくはないが、今年末には受験も控えている。身長獲得のためにも今ステロイドを使うのは・・・・・何が一番彼にとってよいことか、難しい舵取りなのだ。

 

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2008年8月26日 (火)

腎生検

 今年は腎生検がやけに多い。夏休みに入ってから、毎週2例ずつこなしている。今週も今日と明日、一人ずつ行う予定だ。

 いつものことだが対応は千差万別だ。小学校一年生というのに、まったく平気を決め込んで、うんともすんとも言わず&ピクリとも動かず全うした男の子がいれば、それこそ座り込んだまま点滴すらさせてくれない女の子までいろいろだ。

 どうしてもダメなら局所麻酔だけでなく、鎮静&鎮痛剤を使用する。そんなときはケタミンとミダゾラムの合わせ技でいく。分泌過多となるので、アトロピンの用意も忘れずに。

 これからの治療のために必要な検査だが、子供達には結構な負担だ。やるまではちょいと強面で、終わったらねぎらいを込めて遊んでやらねば。

 頑張れよ、子供たち!!

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2008年7月 8日 (火)

生後3ヶ月の突発性発疹?

 生後3ヶ月の女児。40℃の発熱と哺乳不良とのことで来院され、両親や身内に風邪患者がいないことや咽頭発赤などないことから敗血症疑いにて精査のため入院。泣きは弱く、CRTも2秒と循環不全も思われたが、血圧は正常で、心拍数も発熱の割には140~160回/minと早くはなかった。白血球5540, 好中球59%、単球13%、CRP 0.3と炎症反応に乏しく、尿も血液も髄液も培養したが、すべて細菌は検出されなかった。入院時からエコーにて軽度肝脾腫があり、GOT 33, GPT 21, LDH 285と肝機能異常は認めなかったが、伝染性単核球症を念頭に置き、引き続き精査加療を行った。

 入院時からヘルペスウイルス感染の可能性も否定できずACV投与を開始した。入院翌日も解熱傾向になく、哺乳不良も続くためガンマグロブリンも投与した。ガンマグロブリン投与の夜間から体幹に淡い紅斑が出現、しだいに四肢へ広がった。ガンマグロブリン投与翌朝に解熱。発疹は2日経過し、消失した。

 現在発熱してから6日経過しているが、発熱なく、哺乳良好である。しかし肝脾腫は触診上著明で、GOT 70, GPT 100, LDH 580と肝機能異常も出現してきた。おまけに好中球減少(400!?)もあり退院できないでいる。ACV ないしはガンマグロブリンの副反応なのか、それともウイルスによる変化なのか。ちなみにサイトカインマーカーであるフェリチンは当初170から現在330と著明な高値を示し、IL2レセプター抗体も桁違いになっている。

 とりあえず次の手を打てないまま、経過をみているが、果たして?

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2008年6月24日 (火)

やはりアッペに始まりアッペに終わる

 虫垂炎は本当によく遭遇する病気であるが、この診断を正確に言い当てる事ほど難しいことはないと言われる。

 今日はまさにそんな気分。

 うちによく来るスペイン語しか話せないお母さんが連れてきたのは15歳初診の女の子。実は親子ではなく叔母と姪の関係らしいが、自分の子供が私の外来へかかるついでに連れてきたとのこと。聞けば一昨日、いつもは食べない弁当屋で買ってきた弁当を食べてから気分が悪くなったらしい。その後嘔吐と水様下痢が立て続けに起こり、その日の夜には39℃の発熱も来した。昨日1日我慢したところ下痢は止まったが食欲がわかず、熱も下がらないため来院したらしい。あの弁当が悪かったのだとしきりにその娘さんはこぼしていた。なんだ、日本語を話せるのかと尋ねると、日本の高校に通っているとのこと。じゃあ話は早いとさっそく診察にとりかかった。

 視診/聴診ときて触診になったところで急におとなしくなってしまい、一言も話してくれなくなった。腹部を看護師立ち会いのもと触診していくがうんともすんとも言ってくれない。下腹部に痛みがありそうだが、左右差はなく、defenseもないがreboundはなんとなくありそう。しかし右でも左でも側臥位で痛みが出る様子。立たせて足踏みさせると躊躇する?背中を向けさせ腰をたたくと左にCVA tenderness陽性。はて?と首を傾げながら叔母を見ると、なにやらスペイン語で話し始めた。しかしちんぷんかんぷんでおまけに日本語で言い直してもくれない。

 本来子供の診察なら患児の言葉はそれほど重要ではない。自分の目と耳と手の感覚で診断するよう心掛けてはいるが、皮下脂肪も厚くなった思春期の女の子ほどわかりにくいものはない。自ら訴えてくれればよいのだが、それは望めそうもない状況であった。

 とりあえず状況証拠からはアッペ(急性虫垂炎)よりもむしろ腸炎。しかし腎盂腎炎でもありえる。時は午後3時。午後外来には予約も含め大勢が押し掛けてごった返している。外科に相談するなら時間が多く残っているわけではない。さて・・・・患児はもう随分待って疲れた、早く帰りたいと言い始めた。今日はスープも飲めたし、痛みは我慢できるという。このまま明日まで待っていいよというフレーズがのどまで出かかって止めた。まぁ待ちなさい。なんとなくこのまま返すのはいやな気分だった。

 とりあえずレントゲンと採血/検尿をオーダーした。結果が出る前に出来るだけ他の患者さんを診てしまおうと猛スピードでこなした。レントゲンが帰ってくる。大腸ガスは多量で、ほんのわずかに小腸ガスがある程度だった。右下腹部にガスが集中するわけでもない。横目でレントゲンを診ながら目の前の患者さんたちをさばいていく。末梢血は白血球が13000か・・・なんでもありだ。このまま他の値が出るまで待っていられない。入院して精査してもらおう。エコーだけでもしたいが・・・ええいっ、時間がない!

 スペイン語のできるクラーク(医療事務)さんを呼び寄せ、入院を勧める。しかし患児は嫌だと涙をこぼし始める。叔母はなかなか首を縦に振らない。なんとか説き伏せ病棟に向かわせると病棟は緊急入院でごった返していた。病棟番の医師がてんてこ舞いで、本患児をすぐに診られる状況ではなかった。仕方なく予約の患者さんたちに頭を下げ、病棟へエコーを担いで駆けつけた。

 腹水だ。ダグラスにもモリソンにもうっすらとある。ならばC-CUMには・・・とそこでCRP 10という値情報が飛び込んできた。画面に映し出された索状物は、径25mmもあった。こりゃまずい!緊急オペしないと破裂する!!

 午後8時、患児の見事に赤く膨れあがった虫垂が取り出された。中にはすももの種ほどの糞石が存在した。明日まで延ばしていたら命の問題にもなっていたかもしれない。

 ふ~~~っ。

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2008年6月17日 (火)

心筋炎その後

 前回紹介した女児。その後3日間は心エコーにてEFの改善なく、次第にMRとTRが増強してきた。MRはtrivialだが、TRはmild~moderateまで増強した。γグロブリン投与の影響もあるにしても、文献では心筋炎によるものとの報告が散見され、しかも一番嫌な冠動脈病変出現頻度も高くなるとのこと。嫌らしいことこのうえない。

 γグロブリンを投与したが、EFを考えるとどうしても大量投与を躊躇してしまう。もちろん2g/kgを投与することは相違ないが、当初速度を0.8ml/kg/hに抑え、心電図とにらめっこしながら点滴した。半日経っても血圧など変化なく、解熱もしないので、そこから1.6ml/kg/hへ速度を早めた。早くしてから24時間でようやく解熱し、眼や口の症状も消失した。そのころTRが激しくなってきたのだ。

 γグロブリン投与4日でEFが改善傾向を示し、50%を越えた。依然TRは存在するものの筋源性酵素の上昇は認めず、本人の調子も下痢が治まり上向きと思われた時に38℃超えの発熱。半日で解熱したからよかったが、川崎病の再燃かと思いドキッとした。炎症が強いことを考えウリナスタチンも投与していたが、通常解熱したら止めるところを数日延長することにした。

 現在冠動脈に瘤はなく、径も2.5mm前後で輝度亢進もない。膜様落屑もまだないが、炎症反応はγグロブリン投与でほぼ消失し、入院翌日に取ったプロカルシトニンは10.5と高値を示していた。

 やはり川崎病で相違なく、今のところ順調と言える。じきに発病2週間を迎えるが、TRがあることでまだ予断を許さないと考えるべきだろう。

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2008年6月11日 (水)

誇らしげ

 毎日繰り返される小児科外来での一コマ。 

 妹の予防接種についてきたお兄ちゃん。大事な妹に注射すると聞いて、怒り出した。

兄 「ダメ、絶対!!」

私 「でも病気になったらその方が困るよ。病気にならない為に注射するんだよ。だからお兄ちゃんは頑張れって励まして欲しいな。」

 さすが妹思いのお兄ちゃんは、お母さんに抱かれた妹の傍に立って、

兄 「○△ちゃん、がんばろうね。」

 って。

 しかし注射されて泣き出した妹を見て、やっぱりお兄ちゃんは怒った。

兄 「なにするんだ、バカ!」

 と私に蹴りをいれてきた。

私 「お兄ちゃんのおかげで、○△ちゃんはちゃんと注射できたんだよ。二人とも偉かったね。ありがとう、お兄ちゃん。」

 お兄ちゃんはどうしてよいのか判らない顔のまま、妹の傍をうろうろしながら診察室を出て行った。

 良い蹴りしてんな~あいつ・・・

 

 

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2008年6月 9日 (月)

心筋炎か?

 6歳の女の子。40℃近い熱が6日続いて来院。顔に発疹があり、目が充血していた。咽頭の発赤もあり、頸部リンパ節は触れないが頸部が痛いという。膝も痛いらしく歩けないと言う。四肢の変化は見た目には何もない。

 川崎病かと思い、採血したらCRP 15, WBC 17800と著明な炎症像を示していた。肝機能異常はないが、やはり川崎病だろうと考え、入院してもらった。心臓のエコーもしたかったが、あいにく心エコーの空きが無く、夕方遅くになってしまった。当ててみてびっくり、左室壁の動きが極端に悪いのだ。心嚢液は貯留しておらず、弁の不整は見当たらない。急いで病棟に返り、入院時のレントゲンと心電図、そして採血結果のCPKを確認し直した。しかしどこにも異常所見は見当たらなかった。

 血圧は100/60、浮腫はなく、おしっこも出ている。心不全徴候は見当たらない。

 川崎病からくる心筋障害なのだろうか、それとも心筋炎なのだろうか。いずれにせよγグロブリンが効いてくれるはず。先程から投与を開始した。トロポニンTなどがどれくらいなのか待ちきれない。

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2008年5月27日 (火)

大きくなっても

 学校検尿3次検診でやってきた中学一年生。昨年の記録より10センチ近くも背が伸びていた。

私 「昨年と比べたら無茶苦茶大きくなったね。」

母 「頭は全く変わりません」

 よく見掛け、よく聞く言葉である。私自身、この子は本当に1年ぶりであり、記憶の片隅にも残らない顔と身体つきだったので、聞き流していた。

 昨年の記録では超音波検査で両側の水腎症のあった児であったので、1年ぶりの超音波をするべく、ベッドに横になってもらった。

 しかし横になるやいなや、挙動不審となった彼は、

彼 「ズっ、ズボンも脱ぐの?」

看護師 「いいえ、お腹を診るからちょっとズボンを降ろすだけだよ。」

彼 「えっ・・・エッチ・・・」

看護師 「は?」

母 「バカなこと言ってないで、早く降ろしなさい。」

私 「おっ、制服の下に体操服か?これも降ろして・・・・一体何枚はいてるんだい??」

彼 「あぁぁぁぁ~~~んhappy02

私 「じゃあ、診るよ。」 超音波のプローベを当てる。

彼 「あっ、パソコンじゃん。ねっ、パソコンに映ってるんでしょう?」

私 「おっとそのリアクションは、もしやあの時の・・・・・USB少年か?」

  前回5年生と記述していたが、6年生の間違いだった。

母 「あの時もお騒がせしました。中学でパソコン部に入りまして・・・」

彼 「だからさ~パソコンなんでしょ。」

私 「そうだよ。USB連呼から進歩してるな~

    よし、じゃあここで息を吸って、はい止める!」

彼 「むぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・はぁはぁはぁ」

私 「できるじゃない!やぁ成長したな、君も!!」

彼 「でも・・・エロい・・・」

私 「えっ、、、はっ??」

彼 「だってパソコンでくすぐるんだもんheart02

 こいつだけはどういう成長してるんだ?

私 「ハイ次、背中! そこで動くなよ~~~、はい息を吸って・・・止める!」

私 「いや~~本当に止められるようになったね。成長していて先生うれしいよ。」

彼 「僕もうれしいcatface

私 「・・・・・・・・」

彼がどういう大人になるか、とても興味が湧いた。ちゃんとお辞儀をして診察室を後にしていった彼はとても礼儀正しい若者であった。

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2008年4月 4日 (金)

病気の本体は何処に

 昨日入院した5ヶ月の女児。前日から39℃の発熱あり、咳無し、鼻水なし、発疹なし。哺乳は徐々に少なくなって来ていた。

 「こいつは嫌だ。やばい。」と血液・尿・髄液を培養とともに検査すると、炎症反応はとても高くなっていたが、ここといった感染のfocusが同定されない。こういった場合尿路感染症が一番起こりうることなので、超音波や腎シンチグラムまで行った。しかし確証には至っていない。心臓もエコーで確認したが、心筋炎を含め異常はなさそうだ。

 さて、一体何が隠れているのか。正体はなんなのか・・・嫌な週末を迎える。

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2008年1月30日 (水)

カタログ

 先日の記事で紹介した鼻チン検査キットのカタログとテストセットが来た。

 やはりちょいと感度は落ちるようだが・・・・どうも通常のキットでも同じことなのではないか?ということで鼻チンでこれからはチャレンジしてみる。実はこれまでも兄弟がインフルエンザに罹っていて、本人も昨夜から高熱が出てきたという子供で鼻刺しを嫌がる子供に鼻チンをしたことがある。もちろん陽性反応は出るので、結局はウイルス量次第だと判ってはいるのだが・・・

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2008年1月24日 (木)

鼻グリグリは痛いよね

 インフルエンザの季節である。一時罹患者数は冬休みと共にドンと減少していたが、再び勢いを増してきている。昔はインフルエンザの診断といえば臨床症状として急な高い発熱や関節痛、悪寒そして口腔内の発赤状況などからそう類推する他なかった。それが7,8年前に簡易型検査キットが出来たおかげで、客観的に診断できるようになった。

 この簡易検査キットは経験された方も多いと思うが鼻に細い綿棒をグリグリと挿入するのでちと痛いのが難点であった。特に子供など押さえつけて採取する他なく、泣き叫ぶこととなるのだ。鼻をチンとかみ、その鼻汁で検査できれば良いのにと思っていたところようやく発売に漕ぎ着けた会社が現れた。まだ陽性率などどれくらいか調べる必要は残されているが、子供達にとっては朗報である。早速本年度からといきたいところだが、あとは病院検査&事務サイドの判断となる。遅くとも来年にはこのキットでいくことになるのだろう。

 本当に使えそうならまた記事を書きますので乞うご期待。

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2008年1月16日 (水)

我慢しないでね

 先日頸部リンパ節炎で紹介入院となった女児。頸部のリンパ節腫脹と疼痛、おまけに5日以上の発熱があり内服の抗生剤が効かず目も腫れぼったいとなれば、川崎病やEBウイルス感染をまずは疑ってしかるべき、ということで紹介で外来へやってきたその場で腹部エコーを施行した。肝臓や脾臓の具合を確認しておくためであるが、そちらは問題なかった。それよりも驚いたのは膀胱である。通常の膀胱の位置でエコーのプローベ(エコーの波を出し、戻ってきた波を感知するところ)を身体に対し横向きに置いたところまでは普通であった。しかし縦向きにしたところ膀胱の頭側の境目がない・・・・エコー波をおへその方へ振っても境目が見当たらない・・・・どうも臍下まで膀胱が広がっているようなのだ。

 とりあえず入院し、点滴で抗生剤を落としてみた。抗生剤への反応はすこぶるよく、すぐに解熱し、頸部リンパ節の症状も消失してしまった。点滴で水分を通常よりやや多めに摂ることになるため、おしっこには頻繁にいくのが常である。しかしこの子は一日トータルで3回だけなのだ。そこで1回量を量ってみた・・・・4歳で平均の身長の女の子だから、120~150ml くらいが普通だろう。しかし・・・・お母さんから「はかりからあふれちゃいますぅ!!」との悲鳴が聞こえ、なんと500ml over。

 なにはともあれ、頸部リンパ節の問題がなくなってから検査をしましょうと伝えることとなった。聞けばこれまでパンツが日中濡れていることがあったとのこと。でもおしっこのようではなかったともおっしゃっていた。尿の浸透圧も低く、尿そのものの量・質の問題もあるかもしれない。しかしまずは膀胱の機能などを確かめる必要がある。とりあえず2時間ごとに排尿を促すよう指導し、後は外来で見ていく他はない。それにしても溜めすぎである。本人にしてみれば今や我慢しているとかそういった状況ではないのであろうが・・・

 頻尿はわかりやすく、親御さんも連れて来やすい。しかしこういった尿回数の減少は幼稚園など行ってしまえばわかりにくいものだ。そうそうあることではないが、最低でも5回以上は排尿していることをたまに確認するのも悪くなさそうだ。

 

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2008年1月 9日 (水)

多国籍軍

 英語でのみコミュニケーションのとれる家族がこのところ数ヶ月にわたり外来通院している。今のところ2家族だけであるが、今後この人達が連れてくる可能性も考えると本気で英語での診療を考えなくてはならない時代になったと言える。

 それでも日本に来ている海外の方は、とてもコミュニケーションが上手い。相手のことを判ろうとするし、自分のことを伝えようとするから本当によく判る。私の拙い英会話でも、十分に言葉のキャッチボールが出来るので、最初は身構えていたが、今は良い友と話しをしている気分になる。

 その内の1家族と午後話しをし終わったところで、予防接種当番へ切り替わった。数人インフルエンザのワクチン接種を終えたら、次の名前が?&★#$・・・誰?何人?診察室に入ってもらうとお母さんは日本人であったため胸をなで下ろした。聞くとお父さんはバングラディッシュ人とのこと。生後5ヶ月になった双子を連れてバングラディッシュに帰るのだという。衛生事情がよくないので、是非ともワクチンをしっかり受けて行きたいとのことで、三種混合ワクチンを接種しにいらっしゃった。

 「向こうは蚊が多くて、不衛生で大変なんです。」とお母さん。そりゃそうだろう、日本脳炎類縁のウイルスもいると聞くが、こちらで手に入るワクチンは無いと話すとがっかりされていた。来月までに出来る限りのワクチンをと希望されていたので、来週三種混合ワクチンをもう一度接種し、その1週間後にポリオを受けてもらうこととなった。

 本当に日本のことだけ考えていられる時代は終わったのだ。近隣諸国の医療事情も知っておかなくては、良い医療を提供することなど難しい。需要があれば、それを供給するのが我々の使命であろう。

 どんどん勉強しなくてはならないことが増えていく。それも楽しいのではあるが、気を引き締めねばならない。

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2008年1月 7日 (月)

川崎病

 先日からの川崎病の患児の経過が芳しくない。

 川崎病は原因不明の全身の血管炎である。主要症状として発熱・リンパ節の腫脹・眼球充血・口唇舌の発赤、変化・発疹・四肢の硬性浮腫というものがあり、そのうち5項目以上を満たした場合川崎病と診断する。日本の川崎先生が発見したこの疾患は世界中で認めるものだが、特に日本人に多い。症状は血管炎に伴うもので、予後は心臓の筋肉に栄養を送る冠動脈という血管に瘤を作るか否かで決まる。治療はアスピリンを内服の上、γグロブリンという蛋白製剤を使用するのが第一選択である。このγグロブリンに反応しないタイプはやっかいで、治療に難渋することとなる。

 原因が定かでないので、治療の何が功を奏しているのかそれもハッキリしない。しかしなんらかの影響でcytokineが誘導され、血管内皮で変化が起きているのは間違いない。それをいかに抑制しうるのかというところが鍵になる。

 本患児は2年前に川崎病に罹患し、このときはあたかも劇症肝炎を呈したのかと思うほどの肝トランスアミナーゼの上昇を見た(GOT 4000, GPT 4500)。一回目のγに不応で、ステロイドパルス後再度のγで落ち着かせた経緯のある児である。今回もγに全く反応せず、ステロイドパルスを施行したものの、全くcytokine stormが抑えられず、現在再度のγグロブリンを施行している途中である。これで反応がないとすると、ステロイドをもう一度パルスしていくか、はたまた血漿交換に打って出るべきかというところであろうか。好中球の遊走を抑制するウリナスタチンも併用しているが、全く反応してくれないのだ。

 ただ今回は劇症肝炎というような値は示さず、しかも冠動脈も現在発熱開始10病日であるが変化していない。まだ時間的な余裕はあるだろうか、次なる手を探らなくてはならないと思っているところである。

 それにしても一筋縄でいかない児だ・・・

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2008年1月 6日 (日)

一息

 年末は仕事納めの28日の病院勤務を終えた後、救急診療所の当番を朝まで行った。それから家族を連れて田舎へ新幹線で帰り、元旦には同じく新幹線でこちらへ戻った。2日からは病院に缶詰。3日には救急当番。4日の仕事始めは外来患者さんも3時間待ち。5日の土曜日も外来を開け、夕方からは救急当番をこなした。さずがにちょいと疲れた。それにしても年末年始にほぼ毎日救急当番を買って出ていた某大学教授の体力・気力はどうなっているのだろう・・・

 病棟は川崎病の子供達を含め、満症状態が続いている。川崎病の一人は、γグロブリンという蛋白を大量使用してうまくいかず、ステロイドのパルス療法も施行したが反応は今ひとつという状況で、さてこれからもう一度γグロブリンを使うか、使うにしても効かないなら血漿交換に持っていくべきかなど思案のしどころとなっている。幸いシビアな呼吸器疾患などがいないため、じっくり治療に当たることが出来てはいる。

 とりあえず、今日はちょっと一息入れ、明日からに備えることにしよう。きっと外来は大混雑を来たし、入院も満症をねじ込むように入っていくことだろうから。

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2007年12月27日 (木)

そんなの関係ねぇ~

 3歳男児。先日から発熱はないが、咳がひどいとのこと。ジスロマックというマクロライド系抗生剤を処方したが、苦いため全く飲まず、咳が止まらないと再来院した。レントゲンで両側肺に異型性肺炎を認め、この薬をするのが妥当と判断してのことであったが、飲まないものはすぐには治らない。確かにこの薬、激しく苦いためバニラアイスに溶かした瞬間に飲むよう指導するくらいなのだが・・・

 母 「あんたが飲まないからひとつも治らないんでしょ。先生に飲みますって約束しなさい。」

 私 「飲まないとこれから熱が出て、苦しくなっちゃうぞ。そしたら入院してチックンだ。」

 児 「ふ~~ん、でもそんなの関係ねぇ~、でもそんなの関係ねぇ~、でも・・・」

 私 「でも関係おおアリだ~、でも関係おおアリだ~、でも関係おおアリだ~、ハイ、ノ・ミ・ナ!」

 児 「でもでもそんなの関係ねぇ~、でもそんなの関係ねぇ~、でもそんなの関係ねぇ~。」

 母 「なにバカなことやってんの、ちゃんとしなさい。」

 児 「でもそんなの関・・・・」

 残念ながら最後まで抵抗し、数日後入院加療になってしまった。もともとマイコプラズマ肺炎はゆっくりではあるがセルフリミテッド(勝手に治る)ものが多いので、サポート治療だけでもよくなることが多い。彼も去痰剤の吸入などでよくなって帰っていった。

 3歳児まで・・・小島よしお、おそるべし。

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2007年12月22日 (土)

大丈夫かいな

 昼に入院したRSウイルス感染の1歳児の状態が思わしくない。元々両親に喘息があり、それも災いしているのか、呼吸状況が悪い。やることはすべてやった。後は挿管して人工呼吸とするかどうかだ・・・

 先週から外来は戦場のようだ。冬場はいつもそうであるけれど、じっくり考えたり話しを聞いたりなど許されない状況に陥ってしまっている。本意ではないが、待っている患者さんを思うとそうする他ない。それでもって状態の悪い人は次々と入院していく。小児科医が3人しかいない我々に担当できる入院患者数など限られている。しかし近隣はどこも満床である。受け入れてもらえないのなら自分たちでなんとかするしかない。

 暇をなんとか見つけて、クリスマスコンサートは行うことが出来たが、本当なら誰か代わりに指導者として雇いたいところであった。弱音などクソ食らえと思っているが、身体が弱気になっている。(本気で歌えている時は至福ではあるけれど)

 これでインフルエンザが蔓延しはじめたらどうなるのだろう・・・それでも今日で学校が終わってしまったので、おそらく流行もストップするのだろう。ノロウイルスを始めとした嘔吐下痢も一段落してくれると良いのだが。このまま増加すると外来の点滴ブースは野戦病院になってしまう。痙攣も毎日救急車で運ばれてくるが、とりあえず脳炎・髄膜炎の類がいないのは不幸中の幸い。本当に気の抜けない日々が続く。

 さてもう一度病棟へ上がるとするか。

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2007年10月27日 (土)

取り切れた!!

 先日から記事にしている頸部の脊髄腫瘍の児のことである。昨日千葉大から専門家を呼び、摘出術が行われた。予定時間は15時間。日付が替わってから帰室するであろうと思っていたら、わずか9時間で戻ってきた。癒着なくポロッと取れたとのこと。出血も微々たる量しかなく、何より麻痺なく戻ってこられたのだ。

 考え得るなかで最も良い結果で終わった。喜びで小躍りするどころか呆気にとられると言った方が近かったであろう。さすがに夜中は不安や髄液漏などから痛みが出てきて、鎮静&鎮痛剤が必要となったが、今朝はスッキリ「う~~ん、暇。」などとぬかしているのである。

 いやはや、本当によかった。

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2007年10月24日 (水)

低身長

 16歳の男性。身長が155センチで、これまでずっと最前列をキープしていた。そろそろグンッと身長が伸びるだろうと期待するうちにここまできてしまったと来院してきた。手の写真を撮ると、年齢相応・・・骨端線はまだ閉じてはいないので、数センチならあるかもしれないが・・・

 聞くところによると中一の時に身長のことが気になって、医者にかかったことがあるが、そのうち伸びるよと言われたとのこと。成長曲線をプロットしてみたところ、確かにその先生の判断も間違いとは言えない。ただその時に骨の年齢を観察したか、ホルモンの出具合を確認してくれていたら、もしかしたら彼の身長も変わったかもしれない。しかし今となっては遅いのだ。

 自費でもよいから成長ホルモンを打ちたいと話す家族ではあるが・・・効果は数センチであるし、無茶苦茶高いので、もちろん薦めない治療だ。

 もし母子手帳に記載されている身長のグラフで、平均の幅に入っていないかもしくは平均のギリギリ下のラインを進んでいる子供、急に身長が伸びなくなった子供がいたら早めに相談して欲しい。こればかりは早くないと意味がないのだ。

追記:犬と猿さんのコメントでこの記事の足りない事が判明したので記す。男性の場合156センチをもって成長ホルモンの保険適応は終了する。それ故望む限り打ち続ける事ができるわけではない。また成長ホルモンを使う事により、骨の年齢が急激に進み、結局伸びなくなる時期を早めることもある。打ち始める年齢や親の身長によってまちまちであるので、全部うまくいくわけではないのが、この治療の難しいところである。当患者もおそらく成長ホルモンは分泌していたはずであるが、母親も父親も160センチを越えていることから、ホルモンの出方が少なかっただけである可能性が高い。

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2007年10月20日 (土)

タミフル使用は

 昨日の続きである。

 私は治療効果と予後という観点から、タミフルなど服用する患者さんを制限してきた。免疫力も高く、自分で自分の症状を表現できるようになる学童以上では原則として使用しない。しかし受験を控えているとか、年寄りや乳幼児を抱える家庭である場合、インフルエンザ感染につき詳しくお話ししてから投与するかどうかを親と一緒に考えてきた。もちろんそういった家庭の場合は、流行する前にワクチンを接種すべきということもお話ししてきた。

 タミフルの薬禍と騒がれている昨今の事例を見返すと、結局本当に必要なのか疑わしい年代に使用されていることがわかる。いたずらに怖がる必要はないが、服用する必要性も低いので、10歳以上は原則服用しないこととして差し支えないだろう。ただし受験生はワクチンをうっていても、加湿やうがい・手洗いなど気を付けていても罹ってしまうことも多いにありうる。症状を和らげるタミフルを服用してはならないのかと問われれば、他の受験生への感染も考慮すると使用可としたいところだ。そこを一律10歳以上は禁止とされると困ってしまう。

 また症状を和らげる方法が他にないかというと、解熱剤を使用するなどの方法が挙げられる。ただしインフルエンザに解熱剤を使用すると身体の中でサイトカインという免疫反応が過剰反応を起こし、それにより命を落とすことがあることも知られている。従って強力な解熱剤の使用は控えられ、古くからあるアセトアミノフェンという薬を使用するよう薦められてきた。これは原則として守るべきであろう。なによりインフルエンザウイルスそのものと戦っている証拠が発熱であり、熱によりウイルスの働きを押さえ込もうとしているのも人体の正常な反応であるのだ。躍起になって解熱させようとするのは逆効果である可能性が高い。むしろ熱は少し上がる可能性があるが、麻黄など漢方を使用する方法がある。人体をウイルスと戦いやすい状況にしてくれると考えるならば、よい処方だと思う。

 咳止め、鼻水止めは症状を和らげた方が呼吸がしやすいのであれば、使用をしてもよいだろう。しかしあくまで補助であり、治す薬ではない。抗生物質も必要はない。幼児や高齢者で肺炎を併発した場合、細菌感染か否かを見定めてから使用すればよい。

 ということで長々と述べてきたが

① タミフル使用は幼児と高齢者に説明の上行う。

② 受験生や幼児・高齢者を抱える家庭ではタミフル又はリレンザを考慮してもよい。

③ 解熱剤は強く良く効くものを求めず、より安全なものを使用する。

としたい。ちなみにこれらは昨今のタミフル薬禍報道以前から変わらぬ診療方針である。

 ご質問があれば、どうぞ。 

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2007年10月19日 (金)

インフルエンザ

 隣町である八千代市で早くもインフルエンザによる学級閉鎖がなされた。これまでにない早期での学級閉鎖に皆驚いている。まだまだワクチン接種も始まっていないところが多いはずだ。警戒しなくてはならないだろう。

 さて昨年から今年の話題と言えばタミフルというインフルエンザの特効薬をどう使うのか、それとも使うべきでないとするのかということであろう。これについては折に触れ述べてきたが、再び書いておくこととする。

 まずインフルエンザは普通の風邪より症状が激烈で、大人でも高熱もあって起きていられない程のウイルス感染となることが多い。また身体の免疫機能を攪乱させることもあいまって、脳症など非常に重篤な状況を引き起こすことも知られている。

 予防はワクチン接種の他、お茶うがいや手洗い、部屋の加湿などが有効とされている。加湿という点ではマスクも効果があってもよいと思われるが、あまり効果はないとする報告も多い。

 診断には簡易キットがあり、発熱してから半日ほど経過した鼻腔粘膜で検出できるようになる。従って発熱直後に医療機関を受診しても診断がつかない場合が多い。

 治療はオセルタナビル(タミフル)やザナルビル(吸入リレンザ)という薬がインフルエンザウイルスの増殖を司るノイラミニダーゼを阻害するということで、有効性が示されている。アマンタジンもA型のみ有効とされていたが、耐性ウイルスが半数以上を占めるようになり、今後は期待薄である。前者は増殖を抑えることで奏功することから、増殖しきってからでは効果はない。それ故、インフルエンザに罹患して48時間以内に服用する必要がある。ただし服用しても高熱の持続期間が1日短いだけであるとか、倦怠感が少し薄らぐといった報告はあるが、服用して直ちに解熱するというものではないことも理解しなくてはならない。脳症の予防効果もどれほどあるのかは明確な答えが無いのが実情である。

 予後は脳症や肺炎などを併発する年少児や老人を除くと、極めて良好である。ちなみに脳症の発生は毎年100人前後であり、インフルエンザ罹患者数1000万人に比し、非常に少ない。ウイルス感染症の中では重篤となる率は低いものではあるが、広く容易に感染するということから重大な感染症であることは疑いようがない。

 ではインフルエンザの薬はどうやって使用すべきだろうか。昨年からとりだたされるタミフル薬禍という言葉であるが、私は現時点で適当ではないと考えている。なぜならばインフルエンザ罹患それだけで異常言動が起こりうることは、インフルエンザ罹患者を見てきた医療者なら皆知っているからである。タミフル内服に限ったものと言うのはいかがなものであろうか。それより、タミフルを必要とする人に投薬されているかが問題なのではなかろうか。続きは明日。

 

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2007年10月10日 (水)

アレルギーの季節

 毎年春先と秋口はアレルギー疾患患者数が激増する季節である。

 今年は割と夏の暑い時期にも妙に喘息患者さんが来院する機会が多かったように思うが、それでもここ数週の朝方の冷気に誘われて倍々と増えてきている。

 印旛沼のほとりには秋のアレルギー源として悪名高いアキノキリンソウが毒々しい黄色を天高く伸ばしていた。

 皆様ご注意を!

Photo

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2007年10月 9日 (火)

本物だった

 先週記事にした児のことで気がついたら1週間過ぎていた。痛み発作は夜間に留まらず、痛み刺激がトリガーとなって情動失禁が起こってしまい対応に苦慮することになったのだ。

 本態はわずかな右上肢の筋力低下と腹壁反射の鈍化があり、MRIにて脊髄腫瘍(おそらく神経鞘腫)が発見された。今後は小児科ではなく、整形外科で治療を行ってもらうことになる。しかも当院ではできないことなので、他院に紹介させて頂くことになりそうだ。

 

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2007年10月 2日 (火)

夜間発作性肩頸部痛

 9才の女の子。数ヶ月前から眠り始めて1時間くらいに発作性に肩から頸、背中に激烈な痛みが出現し、転げ回るとのこと。整体でよくならず、近くの医院で痛み止めをもらったところ、痛みが出てから飲ませると少しよくなるが、痛みの出現そのものは毎日抑えられないらしい。

 表面的には極めて普通の女の子。面談でもハキハキと応え、視診・触診でもなにもない。唯一若干ではあるが、右利きという割に右の握力が弱く、腕を挙げる力も弱い気がした。レントゲンや心電図では異常なかったが、脳波を計測中にその発作が起こった。このときは過換気様であった。脳波所見が手元に戻ってこないので、なんとも言えないが、てんかんなども考慮しなくてはならないだろう。

 さて一体この子の痛みの本態は何なのだろうか?

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2007年9月21日 (金)

ツンデレは効くな~~

 2年半前からネフローゼでフォローアップしている5才の女の子。

 これまで幾度となく採血など痛い思いをさせてきた。そのため外来で顔を合わせても

「プイっ」

「ベェ~~」

以外の言葉を聞いたことがない。機嫌が悪いわけでもなく、笑顔で看護師達と談笑するにもかかわらず、私と対すると途端に上記の言葉を浴びせかけるのだ。まあ私も本気になって困った顔をするわけでもなく、

「またぷい~~っか・・・元気ならいいよ!」とかわしてきた。ところが昨日は違ったのだ。

 診察の前に診察室の隣の計測室で身長と体重と血圧を確認していた。外来診察が途切れ、彼女の声が聞こえたので計測室を覗いた。すると私をみつけた彼女は

「先生、これ!」と家で書いてきた絵手紙を渡してくれたのだ。うれしさに飛び上がり、ありがとうと握手を求めたところ

「いや!」

と言い後ろを向きながら、チラッとこちらを伺うのだ。

 彼女が帰った後、絵手紙を見返す私を見て看護師達がクスクス笑った。

「先生、初めてラブレターもらったみたいな喜びようですね。」

 そりゃそうだ。この2年半、「プイっ」しか聞いていなかったのだから。

 しかし・・・こういうことを繰り返し、悪女が出来上がっていくのだろうか・・・それにしても効くな~~

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2007年9月14日 (金)

こりゃ!

 ばあちゃんと現れた中学女子。

 時々ひどい頭痛がするとのことで以前来院し、パソコンのしすぎで肩凝りと眼精疲労として痛み止めと湿布を持たせ、パソコンは一日2時間までと言って帰したことがあった。しかし再び痛みが出てきたとのこと。でも診察室では笑顔を覗かせていた。

 前回の痛みはその通りしたらなくなり、もうパソコンはしていないと言う。ばあちゃんは「その代わり携帯でメールばっかりしてるじゃない。」とのこと。またかと背中に廻り後頭部から肩に掛けて少し押すと激しい肩凝りがあった。ほどほどにせいよと言いながら話しを聞いていると、少し喉がいがらっぽいと言う。覗くと扁桃にべったりと白苔が付き、赤く腫大していた。

「こりゃ~溶連菌感染だな。検査しておこう。」と迅速検査をするとやはり溶連菌の反応が出ていた。溶連菌の説明を一通り行い、抗生剤と湿布薬を処方しながら家人にも移る可能性があると伝えた。その時彼女の顔色が少し変化したように思えたので、

私「チューもだめだぞ。」

女子「やっぱり・・・○○も喉が痛いって言ってた。」

ばあちゃん「なに!△△ちゃん、○○君とそんなことしてんの?お父さんが聞いたら卒倒するわよ。」

私「いつ彼は痛いって言ってたの?」

女子「この間泊まったときだから・・・」

ばあちゃん「なに!!とっ泊まったの?!」

女子「やべ・・・なんで病院でばれるんだよ・・・」

私「あのね・・・まあ彼も連れておいで。」

ばあちゃん「もう先生どうしましょう。中学生が・・・あぁ~~~」

 思春期を扱うのは難しいのだ。

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2007年9月 7日 (金)

返事(前回の患児)

 紹介した患児について返答があった。先天性胆道拡張症であった(いなか小児科医さんに拍手)。

 恥ずかしながらこの年齢での胆道拡張症を見たことがなかったので、確信を持てなかった。肝臓のというより胆嚢壁や総胆管付近から出張っている嚢胞ではというところまでは推測したが、乳児期までしか見たことがなく、慌ててしまった。かの病院ではMRCPという胆道を映す画像診断がなされ、膵管の位置異常がありそうだということもコメントされていた。

 確かに教科書にもこの疾患は年齢が高くなるにつれ、嚢胞を形成しやすく、黄疸・腹痛・腹部腫瘤の3主徴を認めやすいと書いてある。

 日々勉強だ。精進せねば。

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2007年8月31日 (金)

これは何?

 生来健康で、元気快活な2才10ヶ月の男の子。2週間前に当院にやってきた。3日前から下痢が出始め、昨日は1度嘔吐もした。嘔吐はその1回のみで、水分も摂れていたので様子を見ていたら、熱と咳が出てきたので来院したとのこと。診察すると腹部は蠕動音がやや亢進していたものの、平坦で圧痛もなく、柔らかかった。むしろ喉の発赤と呼吸音にわずかだがラ音が混じっていたのが気になった。このときお母さんから

「ちょっと白っぽい便が混じっているんです。」とのこと。便そのものは持参しておらず、本人も今便意はないとのこと。季節を考えるとロタウイルス感染性下痢症は少ないが、ウイルス性の下痢で便が一時的に白っぽくなることは十分にあり得る。眼球の黄染や肝脾腫がないことを確認し、

「お母さん。時期的にはちょっと外れますが、おそらくウイルス性腸炎で白っぽい便が出ているのでしょう。それは食欲もあり、水分も摂れていて、しかも下痢もそれほどひどくないですから、整腸剤くらいで治まるはずです。むしろ胸の音が気になるので、レントゲンを撮らせてください。」と私は話した。結局肺門部陰影の増強と軽度のover inflationを認め、ウイルス性気管支炎を考え、去痰剤等を整腸剤と一緒に処方した。男の子は熱がありながらも元気に飛び跳ねながら帰っていった。

 昨日昼すぎに近隣の開業医から電話相談があった。

「眼球黄染と白色便の子供を診てもらえますか?」・・・・・その子だった。

 あの後3日も経たず解熱し、元気にしていたとのこと。しかし時々白い便が出ていたが、毎回ではないので様子を見ていたらしい。2日まえからちょっと目が黄色いように思え、少しだるそうにしているのでかかりつけの開業医へ行ったのだという。診察すると確かに眼球が黄染しており、右悸肋部が少し膨隆していた。しかし触っても圧痛はなく、柔らかい。超音波を当てると、肝内の胆管が腫大し、胆嚢と思われる5センチ大の水の袋が見つかった。

「えっ?総胆管の閉塞?この年齢でなぜ?しかし毎回白色便なら話しは合うが、時々っていうのは???」そう思いながら、急いで腹部CTのオーダーをした。すると腫大した胆嚢と思われたところには5センチ大の隔壁を伴う嚢胞があり、すぐ傍に小さな胆嚢がへばりついていた。おそらくこの嚢胞が総胆管を圧迫し、十二指腸への胆汁の流れを阻んでいるのだろう。それも完全閉塞ではないため、時々ということなのだ・・・しかし肝下面にこれだけの嚢胞というと元はなんだろう・・・・腎臓由来ではない、副腎としても腎臓との位置関係がいまいちスッキリしない、肝嚢胞でこれだけ出っ張るものは見たことがない、胆嚢壁由来?アメーバなどの膿瘍も考えるべきか??

 胆管閉塞の所見は血液データからも明らかだが、総ビリルビンが5.3、γGTP440を示すもそれ以外は思ったほどでもない。GOT 150, GPT200, LDH 300でアミラーゼも正常、CRPは陰性。もちろん凝固系や末梢血の異常も認めない。これは一体何物か??

 今すぐどうこうという値ではないが、小児外科のある病院へ搬送すべきと考え、両親にお話ししたところ、実家のある柏周辺でお願いしたいとのこと。早速知り合いのところへ電話し、入院精査を受けられるようにしてもらった。さて、結果はいかに。

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2007年8月 8日 (水)

疾患の季節感はどこへ・・・

 この時期小児科は検査入院に追われる。しかし冬場に比べて圧倒的に暇である。肺炎・気管支炎を筆頭にcommon diseaseが減るからである。エンテロ系といわれるウイルスが流行し、無菌性の髄膜炎などで入院したり、手足口病などで食事も水分ものどを通らないと入院してくることはたまにあるが、暇なのだ。

 しかしこのところどうもおかしい。

 先程入院した児はRSウイルスによる気管支炎であった。もともと冬になると乳幼児に猛威をふるうウイルスだが、うちでも近隣の病院でも未だによく見かける。マイコプラズマ感染は学生時代はオリンピックの年に流行すると言われていたが、今はいつでもどこでも流行っている。沖縄ではインフルエンザが先月ピークを迎えたらしい・・・

 検査キットが発達したから検出率がアップしただけかもしれない。しかしそれにしてもである。

 温暖化など地球環境の変化のせいかもしれない。ウイルスそのものが変異しているか、耐性をもってきたのか、いずれにせよ警戒しなくてはならないだろう。ウイルス疾患はワクチンしか有効な手立てがない。ワクチン行政があやふやな日本は危ない国のひとつに数えてもよいだろう。麻疹ワクチンへの対応は今年に限ってみると結構早く手を打ったようにも見えるが、もともとワクチン接種率をもっと上げていれば流行そのものを防げた可能性が高いのだ。

 今一度ウイルス疾患対策に本腰を入れるべき時が来たのではないだろうか。

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2007年7月 3日 (火)

水に慣れる

 常連さんの次男がいつもの咳で来院した。聞くとスリランカから日本に戻ってくる直前から咳がひどくなったとのこと。お母さんはスリランカ人なので、里帰りに連れていったということなのだ。

 児は喘息発作で吸入を受けるとすぐに楽になり、いつもの薬を持って帰った。お母さん自身も喘息を患っているので、調子はどうか、スリランカに帰ると調子はよくなるのか尋ねた。すると

「日本にいるほうが調子がいいの。向こうに帰ると埃もすごいし、すぐに咳き込んでしまう。それに向こうの水を飲むとすぐに下痢するの。数日下痢が続いて、そのうち慣れるけどね。この子もそう。向こうの水を飲むとすぐ下痢して、こっちに戻ってくるころによくなった。でもまた日本の水を飲むと下痢がちょっと出てきてる。」

おいおい、そりゃ向こうの細菌を持って帰っていないか?向こうで下痢は治ったの?熱も出てないし、下痢に血が混じったりしてないですよね?」

「うん、それは大丈夫。治ってたのに日本の水を久しぶりに飲むと下痢したの。」

「それって水が合わないとか、水に慣れるってことかな・・・」

「そうね、いつもそう。向こうに帰ると絶対すぐに下痢するの。慣れると帰ってきてまた下痢しちゃう。でも日本の方がいいかな。」

 そりゃそれだけ自由自在に日本語を話せるのだから日本の水が合っているのだろう。スタイル抜群で顔もシルクロードの仏像を思わせる美しさ。ターメリックの香りを漂わせ笑顔を振りまく彼女は、頭も良くこちらの指導もしっかりこなしてくれるので外来看護師さんたちにも人気だ。

 彼女たちの話しを聞くと日本もまんざら悪くないと思うのだ。

 それにしてもこの下痢の扱いはどうなのだろうか・・・・

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2007年6月16日 (土)

しーっ

 小学校5年生の男の子。学校検尿で血尿を指摘されて来院した。

私「赤血球がしっかり出ている、いわゆる血尿ですね。超音波やりましょう。」

彼「えっ、何々、何やるの?」

看護師「じゃあここにゴロンして。まずは仰向けからね。タオルで服が汚れないようにするからね。」

彼「えっ、お腹出すの?いや~~ん。」

私「痛くない検査だよ。これ触ってご覧。痛くないでしょう?これをお腹に当てるとお腹の中が見えるんだよ。」

彼「何々?これパソコン?USBなんでしょ、USB!」

私「USBはプリンターとつながってるだけだよ。これはプローベって言って、これをこうやって当てると・・・ほらこれが腎臓だ。」

彼「うわっ、すげー。何これ、この丸いの。」

私「腎臓だよ。ここでおしっこを作ってるんだ。息を吸ったり吐いたりしてごらん。ほら動くでしょう。しっかり見たいから息を吸ったところで息をぐっと止めてもらえるかな。行くよ、はい!息を吸って、止めよう。」

彼「すぅ!うぐっ・・・でもさ、なんでパソコンに映るの?」

私「止めようよ。はいもう一回。吸って・・・」

彼「すぅ!うぐっ・ぐっ・ぐっ・・・ぷは~。笑っちゃうよ。」

私「5年生だろ。しっかり止めようぜ。」

彼「ねぇねぇ、なんでパソコンに映るの。USBなんでしょう。」

私「少しは黙らんか・・・教えない。出来るまで教えない。」

彼「すぅ!うぐっ・ぐっ・ぐっ・うぐっ・ぐっ・ぐっ・うぐっ・ぐっ・ぐっ・・・ねぇ、まだ?」

私「まあいいか・・・次は膀胱。ほら!この黒いのが膀胱の中で・・・一杯おしっこがたまってるな。」

彼「うげっ、漏れる!早くしないとやばい!!」

私「君、今の今までひと言もそんなこと言ってないじゃないか・・・次は背中。」

彼「え~っ、なんで背中見るの?」

私「背中の方が腎臓は見やすいんだよ。」

彼「じゃあどうしてお腹から見たの。」

私「ええい!黙らんか!!・・・教えない。さあ、また息を吸って・・・止める。」

彼「でUSBなんでしょう??」

母「済みません。本当に口ばっかり達者で・・・静かにしなさい!」

私「いえいえ、興味のあるのはいいことです。これの先から超音波が出ていて、その跳ね返ってきた信号をパソコンに送って動く画像にしてるんだよ。」

彼「へぇ~。これパソコンなんでしょ。いくら?」

私「500万円かな。」

彼「またまた・・・うどん一杯300万円ってやつでしょ?」

私「お前は関西人か?ほんまに500万円なんじゃ~~普通のパソコンが50台買えるんだよ。」

彼「え~~~っ、凄い!これ欲しい。」

母「バカなこと言ってないで早く服を着なさい。」

 学校でもこうなんだろうな・・・面白いけど、仕事が進まない・・・

 自覚症状のない学校検尿異常の子供達が押し寄せる外来には普段通りの笑いが転がっているのだ。

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2007年6月11日 (月)

行き違い

 金曜深夜の救急当番を終え、土曜外来に突入した。これまで私は診ていなかったが、5月半ばから咳が続いていた子供がまた咳をし始めたということで来院した。これまでのカルテを読み返すと、気管支炎だが喘息も疑われアレルギーチェックがなされていた。

IgE RIST 340、ダニクラス5,ハウスダストクラス5,ネコクラス3か・・・咳が治まっていなかったなら喘息として治療するよう話すことにしよう。もし咳が一端治まって、薬が切れたらまた出てきたというなら、喘息も考えられるが気管支炎が治りきっていなかったかまたどこかでもらったか・・・

 やってきた子供は結構元気で、咳き込む様子もない。聞けば朝から37℃でちょっと咳をしたので連れてきたとのこと。聴診したがこれといった所見はなく、咽頭発赤も軽度あるかないか・・・

朝からの少しの咳とあっても微熱程度・・・これまでのことを引きずった様子はないな。風邪の引き始めかもしれないが、これからゼイゼイしてくれば喘息の可能性もあるが・・・

 「今朝からということは、一端よくなっていたのですね。ペットは飼っていますか?ネコを飼っている。タバコは?誰も吸わないのですね。」

 そこで急にお母さんの顔が曇った。「ネコを飼ってはいけないのですか?前の先生はネコは外にもいるだろうし、関係ないっておっしゃってました。」

私「確かにネコでアレルギー症状がでるかどうかはこれだけの検査ではわかりません。しかしネコを家で飼うとどうしても普通よりダニは多く発生します。ダニが悪さをしている可能性は十分にありますから、もしなかなか咳が治まらなければそういったことも考えなくてはいけないかもしれません。でもね、今朝からの咳でそこまでは言えませんよ。」

母「今朝からの咳じゃ来ちゃいけないのですか。これまで咳が結構出ていて、気管支炎までなって、少しでも早いほうがよいと思ってきたのです。なんだ今朝からの咳ぐらいでなんて言うのはどうなんですか。」

私「今朝からの咳ぐらいでなんてひと言も言っていないが???胸の音は問題ありません。例えば肺炎や気管支炎を疑うような音はしていませんし、呼吸回数も正常です。喘息を強く疑うゼイゼイした音もありません。とすると風邪を引き始めたのかもしれませんが、いかんせん咳が出始めて間もないので、これがそうだと断定できる証拠は何もないのです。とりあえずアレルギーは強いようですから、ロイコトリエン拮抗剤を飲みながら咳・鼻水止めを飲んでみませんか。夜中に咳が激しくなるなら気管支拡張のテープも渡しておきますから、それを貼ってみてください。よくなるなら喘息を考えて治療していきましょうよ。」

母「前の先生の時は37℃の前半でももう少し幼稚園を休むように言われたんです。それを今朝からの咳と37℃の熱くらいでなんて、どういうことなんですか。」

私「だから私は今朝からの咳ぐらいでなんてひと言も言っていないのだが・・・熱にしても通常この年齢で37℃が病的かと言われるとそうではないと言う他はないです。もちろん前回の気管支炎で39℃出ていたのが37℃くらいまで下がってきたら、もう少し家にいましょうねと言うのが普通です。ですから前回と今回では意味合いが違うのです。お母さん、私は今日この子を連れてきたのは間違いだなどとは言っていません。風邪かアレルギー性のものかは今は判断できないと申し上げているのです。時間をおかないとわからないこともたくさんあるのです。」

この後押し問答が数分続いたが無事処方箋を持ってお帰りいただいた。

ネコが云々という言葉に過剰反応をされたのかもしれない。それか今朝からくらいで来るのはどうかと自身で思っていたのではないだろうか。

何も話さず、断定するようなことを何も言わずともこのような行き違いは起こってしまうのである。この間、ただじっと我慢して聞いていてくれた子供だったから冷静に対処できたが、これで泣き叫ばれていたら難しかったかもしれない。よく頑張ったと労をねぎらいたい気持になった外来であった。

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2007年6月 7日 (木)

どこまでやるか

 こちらは少人数の医師で入院もきっちり診ている小児科。それでもって腎臓専門医。腎臓疾患ならどれだけ手間がかかろうと、うちで最後まで責任持って診るのが当たり前。他に任せていられるか!って気概十分である。しかし小児という年齢で区切った患者さんのすべての疾患を大学でもない一市中病院でなにからなにまでやるというわけにはやはりいかない。その線引きをいつも考えなくてはならないものだ。

 例えば白血病。大学にいたころ随分と受け持ったので、診られると思ったら大間違い。日進月歩の医療を知らずして悪性疾患を診ることは悪以外の何物でもない。早々に専門病院へ紹介させていただく。外科的処置が必要なら患者さんも納得しやすいし、悪性なら専門へというのも全くもって問題なく転院していただける。しかしその他の疾患は自分でなんとかできそうだが専門家の意見は別かもしれないとか、家族もいろんな都合上どうして他へ移らなくてはならないのかなんとかしてくれとか、これで転院ってあんた本当に小児科医?って目で睨まれるのがいやとかいろんな状況が渦巻いてしまう。

 先週めまい発作で入院した14才女子中学生もそんな疾患である。

 頭痛・吐き気・めまいで入院し、点滴を始めとして一連の流れの治療をするとそれらの症状は治まった。しかし起きあがろうとすると辛いとのこと。それでもって尿道バルーンも入れてくれないとおしっこが辛いとまで・・・これは本当に辛いのか、それとも精神的なものか?腱反射も四肢運動も感覚器も神経学的な所見はこれといってなく、食欲ないと言いながらお菓子はむさぼっている・・・入院時緊急で撮影した頭部CTでは異常を認めない・・・

 とりあえず耳鼻科疾患の前庭神経炎と、精神疾患とあとは不定愁訴とくれば脱髄疾患やヘルペス脳炎は否定しておくべきと考え、抗ウイルス剤の投与をしながら耳鼻科&精神科併診の上、頭部MRIを撮影した。するとMRIになんだかよくわからない影があるではないか!?T1 low, T2 highでdiffusionでややhighに写る2センチ大の塊ともっと小さな円形像が散在していた。脱髄疾患でもADEM(急性散在性脳脊髄炎)ならもっと広がりをもって出てくるだろうし、梗塞と考えるなら症状と合うだろうか???うちの放射線診断医は首をひねったまま動かない・・・

 おそらく多発性硬化症などの脱髄疾患と考えるがそれでよいという踏ん切りがつかない。診断を兼ねた治療に踏み切ってもよかったかもしれないが、ここは専門病院が周りにたくさんあるのだからそこへお願いしてみようと電話をした。しかしそりゃちょっとわからないですね・・・どこそこにお願いしてみたらいかがですかといつもなら二つ返事で受けてくれる病院がつれない返事。何件かかけてようやく受けてくれるところが見つかり、転院していただいた。

 さて、本当のところはなんであろうか。

 送っても悩ましいのは続くのである。

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2007年6月 4日 (月)

外来ナースの役割

 4月から新しく来てくれた看護師さん。少々ブランクがあり、その間腎臓を患った自身の子供の看病を続けていた。もう子供も落ち着きうちに来てくれるようになったのだが、これが実にいい!何が良いって、お母さんとしてのフォローが適切なのである。

 時間の限られる外来で、もうかかりつけになっているのなら別だが、初めての医者にいろいろ言われてもちゃんと全部を理解するのは結構大変なことだろうと思う。それ故私は難しそうなことは必ず紙に絵などを使って書いて説明する。それでもわかってそうにないなとか、子だくさんでうまく立ちゆきそうにないななどあれば、スルスルっと診察室を抜けて患児の母親とお母さん談義をしてくれる。しかも肩の力の抜き方を教えている様子、これがいいのだ。

 これまでの看護師さんもとても良くできる人で、外来にはもったいなく、ICU系で働く方がよいのではと思われた。ただ良くできて良く動くことのできるが故に手抜きができなかったように思う。やはりにじみ出る余裕みたいなものがあると人間は落ち着くのだろう。

 もちろん細かい指示が小児科の場合は多く、それを一つ一つ的確にこなすことが第一に求められることではあるが、医者にも看護師にも余裕がある方が患児&その父母にとってどれだけ安心感があることか。また医者や看護師自身も子育てで悩み、格闘している最中とわかると、戦友?同胞?意識が芽生え、気軽に声を掛けられるように思う。それらを明らかにすることで、よりよい医療ができるならそれもよいだろう。

 更に楽しく明るい外来が出来そうで、うれしい限りだ。

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2007年5月22日 (火)

学校検尿の季節

 五月は学校検尿の季節である。

 小学校に上がると毎年この季節に腎疾患や代謝疾患の早期発見&治療を目的に国を挙げて検尿が行われるのである。推進派の医師たちはこれにより透析へ至る腎疾患患児を減らすことができていると豪語している。なるほど早期発見には役に立っていないこともない。しかしその先はどうも心許ない。

 腎疾患を専門にしている小児科医は少ない。どれほどの蛋白尿やどれほどの血尿を問題視し、どれくらいの頻度でどういった検査をしていくべきかを判っている小児科医がどれほどいるだろう。もちろん腎臓の教科書レベルでこういったことは記述されているし、さして難しいことではないのだが。

 例えば起立性蛋白尿という概念があるが、これ一つとっても即診断のつく場合とそうはいかない場合がある。専門医である私も起立性蛋白尿のある隠れた腎炎の存在は長い時間をかけて経過観察して初めて診断に至ることができるものだ。他にも専門ならではの匙加減がある。そりゃそうだろう、それが専門家というものだ。

 しかし学校検尿のシステムはそこをヨシとしていない。地域の中核病院に腎臓専門医が居ようが居まいがそこへ行かなくては行政の補助を受けられない。専門医のいる別の地域の病院へ検尿異常を指摘されたと言って受診した場合、患者さんは別途料金をとられることになるのだ。おまけに地域の中核病院で治療もすべて出来るかというとそれこそ無理で、そこから紹介を経て専門医のところへ送られてくることになるのだ。何を目的にしているのか理解に苦しむばかりである。

 小児科医とひとくくりにしても子供の病気は様々である。それこそ臓器別に専門家が必要な科目であることに異論のある医師はいないだろう。ただその性格上かかりつけ医としての役割を担うこともしばしばである。そういったときに自分の専門外の細かなところにまで目を配ることが出来るだろうか。そのためのマニュアル本も数多く出版されているが、すなわちそれはそうすることが難しいから、難しいと思う人が多いから作られているということなのではないか。

 ごちゃごちゃと述べてきたが、結局は長くフォローアップしている患者さんたちから「専門だから安心ですが、ここへ来たら別料金を取られるっていうのはなんとかなりませんかね。」と笑って小言を言われるので憂さ晴らしをしたということなのだ。今日もどっさりと検尿異常の子供達がやってくる・・・・

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2007年5月18日 (金)

反復性耳下腺炎

 中学二年生の女の子。連休後半に両頬が腫れて近医を受診したところおたふくと診断され、腫脹が治まるまで学校へ行ってはいけないと言われた。このとき腫脹は5日で治まり、発熱も最初の数日のみであった。再び11日から右耳下腺部が痛み、少しずつ腫れてきたため14日に当院を受診した。

 診ると確かに右の耳下腺が腫脹していた。圧痛もある。しかし左はなんともなかった。おたふくであれば一生に一度しか罹らない。それならばこれは何か?超音波で確認することにした。すると腫脹した耳下腺の内部は大小様々の小さな円形のlow echoic areaを多数認めた。典型的な反復性耳下腺炎の像である。

 実はこの反復性耳下腺炎は内科領域ではそうでないかもしれないが、小児科領域では鑑別に入れている医師は少ない。流行は通年となり、いつでもある程度のおたふく(mumps virusによる流行性耳下腺炎)を認めるため、耳下腺の腫脹を確認するとすぐにおたふくですと言い切ってしまうのである。しかしおたふくは一度しか罹らない。二度以上罹るのは絶対におかしい。どれかが間違った診断をしているのだ。

 この反復性耳下腺炎はエコーで見慣れてしまうと容易に診断できる。ただ何のウイルスかと問われても判らない。放置しておくしかなく、化膿性か否かを鑑別に入れ、化膿性ならば抗生物質を使わなくてはならない。もっとも化膿性ならば上記以外のエコー所見も現れてくるので、これも診断可能である。

 ちなみにこの子はすでにmumpsの抗体価IgGを獲得しており、IgMは陰性であった。つまり連休中の耳下腺腫脹もおたふくではなかった可能性が大である。ちょっとエコーをあてていれば、連休中の外出禁止も必要なかったのに・・・

 

 

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2007年4月17日 (火)

選んで頂きありがたいのですが

 30をちょっと越えたお母さん。ひょんなことで小児科で腎生検をすることになった。

 このお母さんの子供二人が腎盂拡張と軽度の血尿のため私の外来に通っている。これまで家族に腎疾患はいないとのことであったが、半年前に

「実は・・・私、中学の時に蛋白尿がでてるって言われて近所の医者に行ったのだけれど、結局気にしないで良いって言われて・・・妊娠中にも蛋白尿が結構出ていて、でも妊娠のせいって言われて・・・どうなのかわからないのだけれど、私ってどうなんでしょうか。」

ってカミングアウトされた。

 それから半年間尿検査をしていくと、中等度の蛋白尿(一日0.5~0.8g)と軽度の血尿を認め、この度腎生検をしてもらうことになった。本来内科でしてもらう年齢なのだが、腎生検の後少なくとも翌日まではベット上で安静にしてもらわなくてはならないと告げると、まだ夜に母乳をあげないと子供が眠れないのだという。とすると内科にお願いして内科の病棟で子供と二人入院してもらうわけにいかない。それならば小児科で子供も大人も入院してもらって、その上で腎生検はどうか・・・となり、双方の了承のもとつつがなく腎生検を終了することが出来た。結果として治療が必要ならば内科でしてもらいましょうと説明して退院して頂いたのだが。

 先日結果が帰ってきてIgA腎症という疾患であったことが判明した。糸球体の変化は微小なものであったが、間質部分の硬化がかなりあり、妊娠&出産の影響か、それともIgA腎症のなれの果てかという所見も認めた。このためARBという血圧に作用する薬を飲む以上の治療を必要とはしないのだが、長期に渡る経過観察が必要であり、内科に通ってもらいましょうと告げた。すると

「先生はあと何年くらいこちらにいますか。」と問うてきた。少なくとも10年以上はいるつもりだと言うと

「内科の紹介してもらえる先生はどう?」と問い直す。人のことはわからないが10年ぐらいはいるのではと言うと

「うちの子供達は成人するまで先生に見てもらわなくちゃならないですよね。その間小児科に通いますよね。同時に内科と小児科にかかるのはとっても大変。できたら先生に診てもらえれば一石二鳥。先生は大人は診てくれないんですか?」とのこと。

確かに小児科は小児期に見始めた子供達の疾患が慢性であった場合、成人してもそのまま見続けるケースが増えている。様々な理由があるが、こういったキャリーオーバー例はどんどん増えているのが実状である。それでもいきなり成人からというのは・・・・・

 成人特有の疾患や婦人科系統の疾患への対応が小児科医の私では遅れる可能性をお話ししても、こちらでと言われ、来月の小児科予約もして帰っていった。小児科医のこういった優柔不断さがキャリーオーバー症例の小児科居座りを許してしまっているのであろう。患者さんの紹介はもう内科Dr.に話してあるのに、困ったな・・・・・・

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2007年4月11日 (水)

麻疹の流行

 麻疹が東京・埼玉南部・千葉西部を中心に流行http://measles.jp/しています。

 まだワクチンの接種をしていない子供達がいましたら、早めに受けましょう。

 推奨年齢は1才と学校に入る直前の2回です。

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2007年4月 5日 (木)

満開

 印旛沼は桜の満開を迎えた

 菜の花も咲き乱れ

 子供達のチューリップも咲き始めた

 桜を見るならこの週末だろう

 足に自信があるなら

 京成臼井駅から臼井史跡巡りを経て

 印旛沼を見物するのがよい

 チューリップを堪能したいなら

 来週末はチューリップ祭りだ

Photo_11

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2007年4月 3日 (火)

いやん抜管

 かの児、無事抜管できました。

 やはり抜管直後は若干のwheezingを聴取しましたが、すぐに落ち着きました。

 今は病棟で気持ちよく呼吸をしています。

 お母さんの大粒の涙、お父さんの笑顔に出会ってうれしそうでした。

 アンパンマン見るって・・・いっぱい、思う存分見てね。

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2007年3月31日 (土)

とんでもない

 先日紹介の児。予定通り3日で人工呼吸器を離脱してと考えていたらとんでもない事態になってしまった。

 麻酔を切って自発呼吸を待ち、しっかりとした呼吸となったところで気管チューブを引き抜いたまでは予定通りであった。しかし抜いてほどなくして陥没呼吸を始め、見る間に顔面蒼白となっていく。高濃度の酸素を口に当てても全く反応しない。100%の酸素でマスクバックによる換気を行うとなんとか持ち直したが胸の上がりが悪い。気管支拡張を狙いボスミン皮下注およびソルメドロール(ステロイド)を静注すると反応著明。すかさず陽圧呼吸をするため鼻から空気を送り込むNasal CPAPに持ち込むとしばらくの間は換気が良くなったが、15分ほどで悪化してしまう。やむなく再挿管となってしまった。

 おそらく気管チューブを抜くという刺激で起こった気管支の閉塞(spasm)だと思うが、そうなると今後この児はチューブを抜くことができるのであろうか・・・

 今は人工呼吸器につなげられ、麻酔も効いているため静かな呼吸をしているのだが。とにかく気管支拡張剤とステロイドを併用して抜管をトライする他ないのだろう。親御さんに行う説明も難しい・・・・

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2007年3月24日 (土)

腹痛

 3週間前から見始めた思春期の男の子。一週間前から時々腹痛があるので見て欲しいと来院した。右下腹部を触診すると猛烈に痛がるのだけれど、下痢も嘔吐もなく発熱もなく、日常生活は全く問題なく過ごせる。経過中何度か血液検査を施行したが、炎症マーカーは陰性のまま。引っかかるのは白血球の中の好酸球が10%と高値を示していたことくらい。エコーでは虫垂の腫脹なく、大腸の壁の肥厚もないが、上行結腸の動きはとても悪い。聞くと毎日便は出るが、最近量が少なくなったとのこと。。。

 寄生虫でも悪さをしているかと考え、便を検査したが虫卵を発見できず。憩室炎も考え、抗生剤を使ってみたが変わらない。はて・・・・

 好酸球性胃腸炎もないことはないが、症状があまりに乏しい・・・肉芽腫?

 先程またやってきて、症状に変化ないとのこと。もう一度痛みの部位にエコーを当てると、腸管膜内だろうか、リンパ節が腫大し、数個が一塊となっている所見もあった。しかし虫垂の腫脹も大腸壁の肥厚もやはりない。

 大腸ファイバーをやりたいのだが、どうしても嫌だと言う。

 さて、どうしたものか・・・・

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2007年3月15日 (木)

間質性肺炎

 のほほんと過ごしていたら重症児が飛び込んできた。

 インフルエンザとマイコプラズマの合併した1歳児。低酸素でroom air ではO2SAT 80前半、呼吸数も60回/minを越えていた。意識はdrowsyで痛みに顔をしかめる程度。幸いO2マスク投与5LでO2SAT 92と上昇するので、レントゲン&CTを間髪入れずに撮影し、病棟に上がって酸素テント下40%O2管理とした。CTでは間質性肺炎にマイコプラズマ感染の斑状影が散在していた。

 血液データからなんとかCO2は換気できているが、cytokine stormを思わせる所見を認め、すぐにステロイドパルスを開始。パルス後2時間で随分と落ち着き、覚醒して親に甘える状況となった。

 4日前から発熱し、呼吸も荒いので心配だったが、他院では水分を摂らせていれば大丈夫とだけ言われていたとのこと。病院を渡り歩いて来たようで、紹介状もなにもなく午後遅くに飛び込んで来たのだった。

 まだ20才の夫婦。旦那は遅れてやってきてヤニ臭い息をばらまきながら患児の妹を連れてすぐに帰ってしまった。母親は疲れ果てたのだろう、簡易ベットを用意すると倒れ込むように寝入ってしまった。今病室を訪れると祖母が患児の手を握りしめている。

 患児の母子手帳にはBCGとポリオを1回受けた形跡のみ記載されていた。もうすぐ2才なのだが・・・

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2007年3月11日 (日)

妊娠してたのね・・・

 2月に腎生検した女性。慢性腎炎を患っており、これまで2回腎生検を行い、それなりの治療を行ってきた。これからの治療方針などを決定することもあって、3度目の腎生検となったのであるが、もちろん薬そのものが胎児に影響を与えかねないこともあって、必ず妊娠の可能性があるなら話してくれるように何度も言っておいたのだが。

 今週腎生検の結果をお話ししたときにポツリ・・・

「妊娠してました・・・生理が2週間遅くなってたけどそれって結構あったから・・・」

「生理がいつあったか腎生検前に聞いたよね?あれは?」

「ちょっと気になったから嘘ついちゃった。」

「・・・・・・とりあえず妊娠反応が出たんだよね。」

「うん、医者にも行ってきた。妊娠6週だって。」

「薬はどうしてたの?」

「薬は・・・もしかしたらと思って飲んでなかった。」

「でもレントゲンは撮ったよね。う~~ん、困ったな。」

「でも先生、おろすよ、私。結婚もするわけじゃないし。」

「ご両親は?なんて?」

「知らない。相手ももういい。別れる。」

その後人生相談が延々と続いてしまった。

高校生になったら妊娠と腎臓の話しは何度も繰り返しお話しし、親に言えなくても赤ちゃんのことも含めて君たちの身体のことが心配だから内緒で相談に来るように伝えていたのだが・・・隠されるとどうにも手の出しようがない。毎月の尿チェックに妊娠反応を追加するわけにもいかないし・・・

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2007年2月27日 (火)

ソーシャルワーカーのお仕事

 最近腎尿路奇形で外来通院していた患児のお父さんが「先生、私、破産しちまって・・・もちろんお金は払いますが、この先どれくらいかかるのか知りたくて。いえね、裁判所に差し押さえされるんですけど、子供の医療費はなんとか免除されるようで、それを教えて欲しいんです。」とのこと。

 恥ずかしいことだが勤務医は自分が行った医療の対価がどれほどなのか知らないことが多い。特に小児科など市町村によって医療費の免除が行われ、このあたりでは5才未満ならいくら検査しても数百円の負担で済むので、一体何がどれほどの査定になるのか検討が付かない。ただし小児慢性特定疾患とか育成医療とかさまざまな助成制度があって、それを申請しなくては5才以上の子供の医療費が家計を圧迫することもあるので、そういった助成制度についてはマークしている。

 それでも例えば生活保護を受けている家庭とか外国人であるなど様々なケースになるととても対応できない。そこで活躍するのがソーシャルワーカーさんである。この場合もすぐにワーカーさんに電話し対応してもらった。

 この日は難病患者見舞金なる制度について質問してきたお母さんもいて、これまたワーカーさんへ直行して頂いた。しかしワーカーさんへの依頼はこれだけではない。例えば虐待児が発見されれば、児童相談所などへの通報から始まり、児の保護やその後のフォローアップまで親身になってやってくれる。先日も名乗らない虐待を受けているという子供からの電話連絡に対応し、指定した場所へ迎えに行くなどして頂いた。

 昨今は不法就業者問題やお金をわざと踏み倒す人などもあって、すべてがワーカーさんの仕事ではないのだが、本当に忙しくしている。しかしどの病院でもそうであろうが、ワーカーさんの配置は多くはない。ことは小児科だけではないので、それこそ広い知識が必要なのである。病院の運営に欠かせない縁の下の力持ちである。

 さてと、明日も働いてもらいますね、○○さん!

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2007年1月31日 (水)

そりゃないよ

 年末に行った腎生検の結果が先々週返ってきた。病理医が残念ながら常勤していないので、系列病院か外の病理屋さんにお願いしているのだ。それには「糸球体(血液を濾過するところ)が入ってないから何とも言えない。蛍光抗体用(目的の物質がそこについているかどうか確認する方法)のものはIgA(蛋白のひとつ)がばっちりついてます。」とのこと。おいおいふざけるなよ、こっちは糸球体が入っていることをおおまかに確認してだしてるんだぞ。しかも2本丁寧に出して2本ともないなんてことないだろ!って病理医に問い合わせしたら、「1本しかないよ。」とつれない返事。今回はS○Lという業者に頼んで送付してもらったので、そこへ確認の電話を入れると「大変申し訳ありません。こちらの容器に付着していました。すぐに病理の先生にそれをお回し致します・・・・」とのこと。

 こルルルルル~~~~~~~ら! なんじゃそりゃ~~~

 幸いにもホルマリンに漬けてあって、乾ききっていなかった。病理医もいつもの医者ではなくピンチヒッターだったこともあって、こちらがいつもちゃんとした組織を送っているとわからなかった様子。先程電子顕微鏡による組織診断と合わせて結果が返信されてきたが、心配なので先程染色された標本を自分の眼で確認してようやく最終診断とした。IgA腎症、びまん性の増殖変化があり、ステロイドを中心とした治療が必要だ。厚生労働省のIgA腎症研究会へ組織を送って治療方針を決定することにしよう。

 それにしても、なくしていたら取り返しがつかないぞ!

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2007年1月30日 (火)

ネフローゼ症候群

 外来の記事のところでご質問があったので、その返答も兼ね、疾患についてコメントします。

 この疾患のバックグラウンドに関しては、いなか小児科医さんのブログ9月分に詳しく書かれているのでそちらをご覧いただき、こちらでは疾患の要点・治療・気を付けるポイントについてお話しします。

 ネフローゼ症候群は尿の中に蛋白が漏れだしてしまい、血管の中の必要な蛋白が失われる状態を言います。その原因は様々ですが、おおまかに考えて、腎臓の中のフィルターの異常によるものと考えて良いです。これにより血管の中の浸透圧(濃度みたいなもの)が低下し、より圧の高い他の細胞の中に水分を取られてしまうのです。すると血管の中の水分が失われ、血圧が低下し、血流も悪くなります。また成因はよくわかっていませんが高脂血症も伴い、これらにより血管閉塞を来すこともあります。問題は力学的な問題だけに留まらず、蛋白の漏出は必要な免疫力の喪失にも繋がります。ステロイド療法などネフローゼの治療が確立される前は、免疫力の低下から細菌による敗血症を来たし、亡くなる人もたくさんいました。

 幸いなことに子供のネフローゼ症候群ではステロイドが非常に良く効き、蛋白の漏出を止め、水分も血管の中にゆっくりと戻ってきます。ただし良く効くのは8割の患児で、あとの2割は効きません。この効かないタイプはフィルターの異常が特殊であることが多く、別の治療法を選択する他ありません。また効くタイプでもステロイドを減量ないしは止めると再発してくる場合があります。初発時に治療を開始後半年間に2回以上再発、または任意の1年間に4回以上再発する場合、頻回再発型と診断しますが、この場合ステロイドを使い続けなくてはならず、ステロイドの副作用に悩まされることになってしまいます。これを避けるために、免疫抑制剤などの薬を併用するなどの治療が行われています。

 ここからは気を付けるポイントをお話しします。

 まず血管の中の脱水が起こるとお話ししました。これは腸の中でも同じ事が起こり、血管から腸の細胞の中に水分が取られていくと、腸の細胞は腸管の中を流れる食物残査中の水分を吸収するという働きが制限されることになります。よってネフローゼが酷くなると下痢を起こしてしまうことがあります。すると益々血管の中に入るべき水分が少なくなってしまうという悪循環に陥ります。私は患者さんに浮腫そのものであわてる必要はないが、下痢になるならすぐに来院するよう指導しています。それは血管内脱水が酷くなり、血圧低下を招くサインだからです。この場合、点滴で水分を補給したり、アルブミンという蛋白を補充したりします。

 水がたまっていくのは身体の細胞や腸だけではありません。お腹の中には腸の外に大きなスペースがあり、ここに腹水としてたまります。また肺にも水がたまります。息苦しいなどの症状で気付かれる肺水腫という状況もあります。ネフローゼの場合の肺水腫はよほど酷くならない限り症状として現れることがありませんし、アルブミンという蛋白を補充すること以上の治療が必要となることも少ないですが、時には血液透析などで水を除去することもあります。

 もうひとつは発熱です。ネフローゼだけでも免疫力は低下します。それに加えてステロイドも免疫抑制剤も免疫力を低下させます。特にお腹を痛がる場合は要注意で、腹水中に繁殖する細菌による腹膜炎を鑑別する必要があります。またステロイドを減量中に発熱した場合、身体に必要な量のステロイドが補給されないことによる変調を来すこともあります。実はステロイドは自分の身体で毎日産生されており、外から与えられると身体がさぼって産生しなくなる性質があります。ステロイドはもともと身体のバランスを整える働きがありますから、これを崩すことになってしまうのです。ですから発熱を来した場合は、治療量とは違った必要なステロイド量を内服することもしばしばあります。

 その他は急を要するものではありませんが、腎臓専門の医師でない場合に間違った伝え方がされている場合があるので、お話しします。

 まず再発はある程度仕方ないと思ってください。再発を恐れるあまりにステロイドをある程度の量で使い続けるのは副作用をおこすもとになります。半年以上途切れることなしに毎日または一日おきにステロイドを内服しているというネフローゼの患者さんがいらっしゃるなら、腎臓の専門の医師へ相談することをお薦めします。ただし急に止めることはしないでください。前述したように身体に必要なステロイドが保てなくなることがありますので、必ず医師に相談して決めて下さい。

 また浮腫がある場合に安静にする必要はありません。もちろん動きづらいのを無理にというわけではないですが、必ず入院する必要はありません。ただしネフローゼ発症初回の場合は、ステロイドの副作用の発現などいろいろ調べるポイントがありますので、入院加療が必要です。下痢などで脱水が酷い場合も入院が必要です。

 浮腫があると水分制限をしたくなりますが、それも誤りです。のどが渇くのは血管内脱水のサインの一つです。飲み水を制限する必要はないのです。ただし飲めば確実に浮腫は増えますが血圧低下を招くより遙に有益です。がぶ飲みはダメですが、のどの渇きを潤すのは必要と思って下さい。塩分は少々控えましょう。益々浮腫がひどくなり、しかも脱水となりますからご注意を。

 それからステロイドを使用中に運動を禁止することも必要のないことです。長期に使用すると骨がどうしてももろくなりますが、学校で行われる体育程度なら十分に可能です。ただし格闘技やマラソン、オリンピックに出るために身体を鍛え上げる必要があるなどの場合はよくよく主治医とご相談下さい。

 細々としたことはまだいろいろとありますが、ご相談いただければお話し致します。

 子供にとって必要なのは治療はもちろんですが、成長発達もそれと同等以上に必要なものです。知育も体育も食育も社会教育も必要です。ネフローゼは長いつき合いになりますから、腎臓の専門医とよりよい関係を作って一緒に子供達の健全な成長を見守りましょう。

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2007年1月27日 (土)

皮膚疾患は難しい

 まずは先々週から来院している乳児。顔に乳児湿疹が出来ていたが、それが酷くなると同時に体幹を中心に3mm大の中央臍窩のある小水疱が出現した。もちろん膿らしい所見はなく、どちらかというとみずみずしい水疱であった。見慣れたものから推察するとヘルペス属の水疱によく似ているが、アトピーの児におこるカポジのように酷くはなく、水疱は散在というところであった。水痘というには陰部や腹部付近に全くないのが疑問だし、手足口病の原因ウイルスにしては下肢・腰回り・口腔内に全く出ていなかった。とりあえず採血でヘルペスの鑑別を依頼したあと、ACVという抗ウイルス剤を使用したが全く反応しなかった。通常水痘ならばかさぶたになっていくが、一週間ほどかかってこの水疱はだんだん小さくなりながら黄色く変色していった。とびひのようなびらんは形成せず、一体何だったのだろうか?

 もうひとつ。先程まで詰めていた救急診療所の看護師さんは数年来原因不明の全身小水疱に悩まされていた。ステロイドを大量に使えば良くはなるのだが、少しでもゆるめると途端に爆発してしまい、途方に暮れていた。皮膚科も遠方の有名な先生のところまで出掛けてゆき、手を変え品を買えしたが結局治りきることはなかった。ところが数ヶ月前、閉経となった2週間後から全く症状が消失してしまったとのことで、昨夜は歓喜の話しを聞くことが出来た。

 子供でも乳児期から2歳くらいまでアトピー様の皮疹に覆われていた児が、3歳の声を聞くと突然何事もなかったかのように綺麗になってしまうことがある。環境も治療もなにもかわらないのにである。ホルモンなど内因性のものだと思っているが、何かはハッキリつかめない。

 難しいな・・・・・

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2007年1月25日 (木)

外来

 このところブログを書く気分にもならなかったが、今日の外来で似顔絵をもらって少し元気になった。

 外来ではインフルエンザがパラパラと出始めている。まだチビちゃん達はRSウイルスばかりだけれど、お兄ちゃんお姉ちゃん次第で大変なことになってくるかもしれない。それよりノロウイルスなど嘔吐下痢を来す胃腸炎がまたじわじわと広がり始めている。今ようやく外来が終わったところだが、来週当たりからさらに大混雑してくるのではないかと戦々恐々とするばかりである。

 さて先月の小児科雑誌にインフルエンザのワクチンについての報告があり、昨日読んだところによると、9歳以降の児ではワクチンの1回のみの接種も効果はあるが、6~21ヶ月(2歳未満)の児では1回では接種しなかった児と危険率は変わらないとのことであった。また12月末日までに2回しっかり接種した場合の有効率は70%とのことであった。ちなみに海外では日本のように年齢で接種量を変えることはしていないので、日本のワクチン事情と一致するものではないが、幼児期へのワクチン接種の根拠として示唆に富んだ論文であると思われる。

 ということで、いつも腎臓外来にくる子供にもらったラムネでも食べて一息つくことにしよう。

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2007年1月 3日 (水)

今年初めの救急当番

 昨夜は一次救急診療所の当番であった。年末年始は患者さんが毎年多いので、医者2人体制でスタンバイしている。昨夜のパートナーは近隣の大学病院に勤める母校の同級生であった。

 元旦とはうって変わり患者さんの来院が少なく、二人でさっと片付けてしまうと後は久しぶりの同窓会に花が咲いた。離婚話や開業話から始まったが、それほど情報通の男でもなく、やはりお互い小児科医同士、話すことの大半は治療についてのディスカッションであった。彼は小児の肝臓疾患を専門にしているので、ことあるごとに情報交換を電話やメールでしていたが、直に話すとより理解が深まった。同級生の話は自分を奮い立たせてくれる。今年も頑張るぞと言う気概がみなぎってくるのを感じた。

 さて医療界のブログを見渡すと、昨年は医療崩壊元年だということである。とすると今年の状況いかんでこの崩壊が進むのか踏みとどまるのかがきまる重要な年となるのであろう。とりあえず地に足を着け、患者さんとの対話を大切にするという自分の医療を実践していくよう肝に銘じることにしよう。

 

 

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2006年12月26日 (火)

テオフィリン内服

 テオフィリンという薬とこれを処方する医者がマスコミから集中砲火を浴びている。あまりにも一方的すぎ、一般診療にとっても患者さんにとってもマイナス因子が多すぎるのでコメントすることにした。

 テオフィリンは気管支を広げ、気道の炎症を抑える効果があるとして数十年前から使われている薬剤である。効果は非常に高く、気管支喘息患者さんの発作時に使用し、劇的な改善をもたらしてくれる薬剤である。特に気管支拡張剤が他になかった時代はこれに頼るほかなかったほどの薬剤で、その使用法については細かく指導され、日本の医師たちはこれを使いこなしてきた経緯がある。もちろんどんな薬にも副作用はあり、特にこのテオフィリンは血中濃度を逸脱すると命に関わることになりかねないので、医学生の時からよくよく教わる薬剤の一つなのである。

 昨今問題となっているのはテオフィリンを特に発熱時に使用した場合、血中濃度いかんにかかわらず痙攣を誘発するという副作用報告がなされたことに起因する。それ以来テオフィリンを内服した後起こってきた現象につき様々な憶測と噂が立ち上り、一躍悪者薬剤へ名を連ねることになってしまったのである。

 悪者呼ばわりしているネット情報の根拠はアメリカをはじめとして世界ではテオフィリンが使用されていないということのようだが、これにはれっきとした理由がある。人種が違うのである。よく知られたことだが、白色人種はこのテオフィリンを使用すると少量でも顔面紅潮から始まり心拍の異常や震えなど様々な副作用が起こってくるのである。だから白人はテオフィリンがもともと使えないのである。白人が使用できない薬剤を治療のガイドラインに載せるはずがないではないか。どっこい日本人はこれを何十年も使用してきた経緯が実在するのである。加えて言うならば、日本人ほど真面目に薬をちゃんと服用できる民族はおらず、間違った服用によって副作用を引き起こす可能性が非常に低いこともテオフィリンを使えてこられた理由の一つなのだろうと思っている。それは識字率や民族の単一性にも由来することだろう。

 さらにテオフィリンなど使わなくても他に治療法があるという方がいる。確かに気管支拡張剤で血中濃度を急激に変化させずに使用できるβ刺激剤などの貼り薬や吸入薬が開発され、一定の効果を上げている。しかし即効性を求めるためには、頻回にわたる吸入療法などを受けることになる。するとその副作用がしだいに出現し、心拍異常や不快感などをおこしてしまう。しかもそれだけでは症状改善に十分でないことも経験する。また乳幼児では吸入も器械によらねばならず、この機械購入に2万円弱かかることもネックになっている。またステロイドが万能のようにおっしゃる人もいるが、ステロイド吸入には即効性は期待できない。ネットの上ではテオフィリン処方により病院が潤うなどとバカげたことを平気で載せている方もいるようだが、発作時にテオフィリンをうまく使ってきた日本の医師達をバカにするなと言いたい。

 喘息・アレルギーの日本における学会に参加し、シンポジウムなどで壇上に上がるその道の大家にテオフィリンの使用の有無を尋ねると間違いなく皆使用している。コントロールの悪い患者さん、重積発作の患者さん、皆テオフィリンは欠かせないと口をそろえる。ただし必要のない患者さんもいると答えが返ってくるのがいつものならいだ。私もそれに異論はない。

 ステロイドの吸入がしっかりと出来る、ないしはロイコトリエン拮抗剤の使用と軽い発作時のβ刺激剤の貼り薬や携帯型吸入器だけでコントロールが十分に出来る人は多い。コントロールがうまくいって発作がない方にテオフィリンを処方するのはナンセンス極まりない。めったやたらとすべての喘息患者にテオフィリンの使用をしましょうと言っているのではないのだ。使い方を見定め、適切な管理のもとでおこなえばその効果は折り紙付きだということをもっと知ってもらいたい。

 ここでテオフィリン関連で先日私の外来で起こった失敗例を報告させて頂く。

1 スリランカ人の母親と日本人の父親の間に生まれた2才の男の子。母に喘息の既往があり、最近は発作がないものの現在もステロイドの吸入を行い、コントロールは非常に良好とのことであった。その男の子が喘息発作を初めて起こし来院。母の希望もあり、ステロイドの吸入とβ刺激剤の貼布を開始した。しかし良くならないため入院にてステロイドの点滴とテオフィリン(neophylline 0.6mg/kg/h)点滴を開始した。すると顔面紅潮と手の震えを訴えたため、テオフィリンを中止し気管支拡張剤の持続吸入に変更した。テオフィリンの血中濃度は5μg/mlであった。

2 中国人の母親と日本人の父親の間に生まれた5才の男の子。喘息初回発作にて吸入を施行した後去痰剤と気管支拡張の貼り薬とロイコトリエン拮抗剤を処方し帰宅。しかし翌日再び発作とのことで来院され、吸入後テオフィリンを8mg/kg/day(一日2回分服)数日分のみ処方した。紙に書きながら喘息のメカニズムと薬剤の効き方などを説明し、父親に見てもらうよう言って帰したところ、その後一週間姿を見せず。数週間後再び発作とのことで来院。あの後発作がまたひどくなり、テオフィリンを一日3回飲ませたらよくなったが、眠れないと言い始めたので飲ませるのをやめていたとのこと。

 どちらも最近の日本の事情から起こってきたテオフィリンの失敗例だと思う。前者は人種として白人にはよくないと知ってはいたが、スリランカ人でどうかは思いが及ばなかった。製薬会社の話しではスリランカ人で副反応が強く出るという報告はないとのことではあったが、十分に注意する必要を感じた。後者は口頭でも紙でも説明してもなお服用間違いがおこりうることを実感した。この後もしばしばテオフィリンを使わなくてはコントロールが悪いため使用を度々行っているが、お母さんもうまく対処できるようになった。

 テオフィリンを悪者扱いしているマスコミの方々。学会で推奨される方法をもってしてもうまくいかないでテオフィリンを使う例が多数あることをもっと勉強して欲しい。そして学会の偉い先生方に問いたい。テオフィリンは喘息専門医のところで使用することが望ましいとおっしゃるが、これだけいるテオフィリン使用患者さんがその専門医のところでちゃんと診療できると思っていらっしゃるのであろうか。その数は膨大でとてもまかないきれないのは目に見えている。それもわかっているくせに外面だけでものを言って欲しくないがいかがか。

 少なくとも私は十数年に渡り何十例と毎週喘息患児を診療してきたが、テオフィリンによる痙攣を来した患児を経験したことなどない。学会のガイドラインには敬意を表するが、テオフィリンの使用に関しては持論を曲げるつもりは毛頭ないという小児科医が多いことも明記して欲しい。

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2006年12月15日 (金)

ノロウイルスの診断

 これまでノロウイルスに対する迅速検査法はなかった。それが島津製作所より開発されたようだ。もっとも各病院の手に渡るのは随分先の話しになりそうで、まずは検疫所などへということである。保険点数の問題もあり、まだまだ診断には時間を要するとことはかわりなさそうだ。

 いろいろと文献をあたってみると、空気感染というものも絶対に無いというものでもなさそうだ。というのは

1 糞便中には大量にウイルスが排泄される

2 嘔吐物へのウイルス含有は少量が基本だが定かではない

3 糞便または吐物が乾燥したらウイルスは死滅せず空気中に舞い上がる

4 ウイルスが体内に10~100個入ってくると感染が成立する可能性がある

 これらを総合して考えてみると、糞便をそのまま放置するところは少ないであろうが、トイレの中はもしかしたら便器の隅に付着したものが空気中に漂うことはあるかもしれない。吐物からは少量しかウイルスが排出されないので、吐物の染み込んだカーペットなどの付近では感染が成立することがあるかもしれない。まあ結局のところ、汚物処理をきちんとすることとトイレの換気扇をちゃんとつけることと、手洗い&うがいをすべきということなのだろう。唾液中に含まれ、インフルエンザなどのような飛沫感染を起こすというものではない。

 いたずらに怖がる必要はないが、あたりまえのことをしっかりとやることが大切なのだと考えさせられた。それにしても昨年あたりからこの嘔吐下痢の流行がひどくなっているのはどういうことなのだろうか。これまでも小規模での流行は確かにあったが、これほどまでではなかった。理由がわかれば対策もできるかもしれないのだが。

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2006年12月14日 (木)

造血幹細胞移植

 Cancerという雑誌に『造血幹細胞移植後10年間で患者に2回目の固形癌が発現する確率は一般人口の2倍近くになると示唆する最新の研究』が発表された。この論文によれば、そのリスクは40歳以上の患者と、女性ドナーから幹細胞を受け取った患者で特に顕著であり、その場合の癌リスクは4倍近くになる。

 私が小児科に入局し大学で研修を行っていたころ、最先端の医療を取り入れるとしてクリーンルームを設置し、血液内科とタイアップして幹細胞移植がスタートした。白血病の治療のために行ったものであり、放っておくと間違いなく死に直結してしまう方々に対してであった。悪性の血液および骨髄を抗ガン剤で完膚無きまでに叩きのめす代わりに、自分のまともな骨髄までも叩いてしまう故、他人の(もちろん適合する方のもの)幹細胞を移植し血液の増殖を促すというもので、その後何十人と移植が行われ、尊い命が救われていった。

 その彼・彼女たちは移植を受けてから十数年経っているわけだが、未だ固形腫瘍が出来てしまったという悲しい知らせは聞いていない。それ故この度の報告は寝耳に水なのだが・・・最も私が関係した移植の患児はわずか数人で、顔も名前もしっかり一致してしまう位の少数だからなんとも言えないのも事実である。

 幹細胞移植そのものが固形癌を引き起こすのか、それとも骨髄を叩ききるための抗ガン剤などの治療がその後固形癌を引き起こすことになったのか、どちらとも言えないようなので移植そのものが悪だという短絡的な考えをするべきではないのだが、なんとも悩ましい報告がなされたものだ。しかも一般人口に対し癌の発生率が2~4倍という数字がこういった患者さんにとって多い数値なのかどうかも不明であろう。事実抗ガン剤の副作用について説明するとき、必ず後の癌発生のリスクについても話しているはずであり、それが数字として説明されるだけなのかもしれない。もちろん一般の人と変わらないと言えればそれが一番なのだが・・・報告の中では放射線療法を移植前に受けていた患者では癌発生リスクの増加は認めなかったという。それがいったいどういうことを示しているのか真実はまだ闇の中ではあるが、早急に移植までの治療プロトコールを見直す必要があるのかもしれない。

 

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2006年12月13日 (水)

爆発的流行

 ノロウイルスが猛威を振るっている。どこそこで集団感染が発生というニュースを聞かない日はないくらいだ。その中で気になるコメントが飛び込んできた。空気感染(飛沫?)という言葉である。

 ノロウイルスは基本的に糞口感染といって便や嘔吐物の中に含まれるウイルスを手などを介して口に入れてしまういわゆる接触感染の部類に入る。少なくともこれまでの研究では飛沫感染という話しはない。ただノロウイルスそのものがなかなか捉えづらく研究が進まなかったという経緯もあり、またウイルスは変異していくものもあり、もしかしたら飛沫感染もありえるのかもしれないが、いたずらに騒動を大きくする可能性を含むコメントは避けてもらいたいものだ。

 ということでまずは手洗いをしっかりおこなうことであろう。消毒薬で容易に死滅するウイルスではないので、基本は洗い流すことであることは間違いない。

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2006年12月 9日 (土)

嘔吐下痢ばかり・・・

 通常の外来も救急当番でも、診るものはみな嘔吐(+下痢)ばかり。夜中など一律吐き気止めの座薬を出してお帰りいただきたい衝動に駆られるが、中には虫垂炎や腸重積などが混じっている可能性がある。ということでもちろんおなかの聴診&触診は間違いなく行うのだが、もう二つ診ておくところがある。

 嘔吐腹痛で来院する場合頻度は極めて低いのだが、精巣の捻転という病気がある。タマタマがねじれて痛くなるものだが、上記のような症状で来院し、精巣の色を確認しなかったばっかりに見落としてしまうことがある。若いころに一度だけこの病気の患児を診察したことがあり、それ以来上記症状の患児は必ずパンツの中まで見ることにしている。何も触らずとも、色を診るだけで異常かどうかは判定できるので、それほど手間はかからない。

 もうひとつは咽頭・喉頭・扁桃の炎症である。この部位の炎症による違和感だけで子供たちは容易に吐いてしまう。もちろん咳き込み過ぎて吐く場合もあるので、おなかだけ診てハイさようならとはいかない。それもルーチンワークとして看護師さんとの呼吸が合えばそれほど手間のかかることではない。

 なにより手間がかかるのは、嘔吐しているときの水分の摂取の仕方を伝えることである。パンフレットを作成してこれを読んでおいてでもよいのだが、やはり口頭でも伝えた方がお母さんたちの納得する顔を見られるので、こちらも安心である。逆に伝えても??という顔をされている方には看護師から時間をかけて説明してもらっている。そのあたりのあ・うんの呼吸が図れるようだと外来はとてもスムースに流れてくれる。(とりあえずわれわれのチームはうまくいっているようだ。)

 さてと経口補水液の作り方を載せて今日は終了。

 湯冷ましまたはミネラルウォーター500mlに砂糖20g(大さじ2杯と小さじ1杯程度)と食塩1.5g(小さじ1/4程度)をよく混ぜたらできあがり。できたら果汁を少量加えると飲みやすくなる。でも吐き気止めを使ってすぐにコップで飲ませたらNG。スプーンなどを使って少量ずつ5分おきくらいに飲ませて吐かない事を確認して。

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2006年11月27日 (月)

だだをこねる

 6才の幼稚園児。数日前から激しい咳き込みとなり、マイコプラズマ感染を疑い、抗生剤を内服していた。しかし始めたばかりで今度は嘔吐下痢に感染し、本日来院してきた。咳はまだひどく、嘔吐は夜半から10回を数え、かなりぐったりしていた。これからまだ咳も続きそのたびに嘔吐するだろうとの判断で入院加療を勧めた。母はそうしてもらえると助かると二つ返事で了承してくれた。するとそれまでぐったりだった彼は急に暴れ始めた。

「入院なんて・・・ゲホゴホ、オエェェェ~、しない・・・ゲホゲホ、オエェェェ~。」

「そんなこといっても、ほら、吐いちゃうからお薬も飲めないよ。」

「お・・し・りから・・・ゲホゴホ、オエェェェ~、入れるも、オエェェェ~、ん。」

「だから無理だよ、ね。」

「いやだ~~~~オィオィオィ・・・オエェェェ~。」

ひとしきり外来で椅子を蹴り倒し、おもちゃを投げ捨てて大暴れしながら吐き散らかして病棟へ連れて行かれた。

外来が一息ついたところで病棟へ様子をうかがいに行ってみると、わめき散らす声が聞こえない。どうなったのかとベットのカーテンを開けてのぞき込むと、満面の笑顔。

「お母さん、どうなったの?」

「あの~~、欲しがっていたゲームのソフトを買って渡したらこの通りです・・・済みません。」

 まだ顔色はすぐれず、咳もひどいが可愛いものである。しかし病棟まで連れて行くだけで看護師とヘルパーさんが一人ずつ、そして点滴を入れるために抑えの看護師一人と介助一人。この人件費は診療点数に加算されるわけでないから小児科はやっぱりサービス部門としか考えられない。

 それにしても虎になった学童期前後はいつもながら大変だ・・・

 

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2006年11月16日 (木)

満床

 11月に入って喘息、マイコプラズマ肺炎、嘔吐下痢の入院に始まり、川崎病、血管性紫斑病、百日咳など多彩な顔ぶれで病棟があふれている。

 だいたい緊急入院し、急に帰ってベットが空くと次に緊急が入るという繰り返しである。去年もそうであったが、真冬より11月の方が忙しいのはどういうことだろうか??

 さて午後外来に行ってくることにしますか・・・

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2006年11月 9日 (木)

やられた・・・

 先日カンチョウしてきた女の子のことを載せたが、その子がインフルエンザのワクチン接種のため来院した。

 去年とは違って静かに泣きもせず我慢できて、お母さんにはもちろん私にも褒められ、結構満足げであった。

 彼女の後は弟の順番。泣き叫ぶ弟の横で「頑張れ!」と声掛けもちゃんとできた。さすがお姉ちゃん!!

 両方無事に終わり、じゃあまたねと送り出した。お母さんが「ちゃんとごあいさつなさい。」と帰り際の扉のところでお姉ちゃんに言うと、彼女はルンルンで舞い戻ってきた。またカンチョウかと身構えたその時、両手を広げて抱きつかれ、熱〜いキスをお見舞いされたのだった。

 またしても不覚・・・

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2006年11月 8日 (水)

エピネフリン自己注射

 この夏、山へ出掛けるにあたって、スズメバチ対策として自己注射できるキットが欲しいと言って来院された家族がいた。それまで存在は知っていたが処方したこともなく、どういったものかを問い合わせたところ、処方医登録しないと出せないとのことで近隣の登録している医師のもとへ行っていただくことになった。

 その後問い合わせもなかったが、先々週患者さんとの何気ない会話の中で蜂の話しになりこの注射キットのことを思い出した。メーカーに問い合わせるとすぐに伺いますとのこと。薬そのものと処方の仕方を説明され、わずか十数分で処方医の登録が完了してしまった。キットそのものは近くの処方箋薬局で扱っているとのことでいつでも出せるのだが、その後一向に希望者が現れない。それもそのはず結構値も張り、2年で回収されてしまうので、よほどトレッキングが好きか農作業などで蜂と遭遇しやすい人でなければ手元に置いておくのももったいない。霜・木枯らしの到来で蜂の動きも鈍くなるこれからはそれこそ希望される人もいないだろうから、来年の春まで患者さんへの説明ビデオなど封も開けずに置いておくほかない。なんともはや気長な商品である。この製薬会社大丈夫かな??

 同じような扱いになってしまっているのが、喘息治療のためのステロイド吸入剤。噴霧器で薬を飛ばして吸い込むタイプのものだが、これは大きな噴霧器(吸入器)を買わなくてはならない。ステロイドの吸入剤は他にエアロゾルといってわずか10センチ弱の携帯型噴霧器で吸うか粉を自力で吸い込むかという2種類あるが、幼少児にはエアロゾルを簡単に使用できる補助具が無料で提供される。うまくできればこれでもちゃんと吸入できるので、なかなか前者の薬を希望する家庭は少ない。もちろん度々の発作のため気管支拡張剤を吸入するための噴霧器をもっている家庭ならばすんなりと受け入れてくれるとは思うが。

 ということでなかなか処方されない薬の話しでした・・・・・

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2006年11月 5日 (日)

夜間救急当番

昨夜は救急診療所の準夜当番。

さすがに前日の休みのせいもあって外来はごった返した。

下痢嘔吐の患児が半分、ひどい咳嗽の患児が1/4、発熱が1/4というところ。ひどい咳にはマイコプラズマに混じってクループや百日咳と思われる患児がいた。

昨日これは?と思った児を今朝病院に呼んで、診察が終わったところ。RSウイルス感染だろうと踏んでいた赤ちゃんもいたが、抗原は検出されず、明日もう一度気管支拡張剤の吸入においでと話し、帰宅してもらった。

秋の深まりは嫌な季節の到来を予感させる。

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2006年10月31日 (火)

膀胱造影

 火曜日の午後は小児科検査日としている。

 専門ということで尿路感染症を筆頭に腎泌尿器の先天性奇形を鑑別する検査が主体になる。今日もこれから尿路感染症を患った児の膀胱造影を行う予定である。

 子供の尿路感染症で上部尿路感染いわゆる腎盂腎炎を起こした場合、膀胱から尿管へ尿が逆流してしまう子がどうかを鑑別しておく必要がある。逆流が頻繁に起こっていると感染だけでなく、逆流圧などにより腎臓が痛んでしまうことがあるからだが、子供にとっては結構な負担のかかる検査である。

 まずは痛いところもなにもないのに押さえつけられ、尿道から柔らかいとは言えチューブを挿入されるのだから泣き叫ぶのも当然であろう。その上膀胱に造影剤を入れられ、膀胱がパンパンになったところと、おしっこをしているところをレントゲン撮影される。おしっこしたいのに押さえつけられ、人前でしたくないのに嫌なおっさん達の前でおしっこしなくてはならない・・・膀胱に圧力が加わるのは、パンパンに膨れた時とおしっこを出す時であり、そこで逆流があれば見逃さず撮影することが出来るし、膀胱から下の尿道が狭くなっているために圧がかかりすぎて逆流してしまうこともこの検査である程度わかる。人でなし!と怒られそうな検査だが、これをしないと始まらない。

 先々週の3才男児はへっちゃらという顔をして全部終わらせてしまった。しかし終わってからおちんちんがむずむずするため泣きべそかいて痛い痛いと親に訴えていた。ごめんな・・一晩寝たらすっきりするからな・・・と言って帰したら先週の外来診察で全然痛くなかったよとうそぶいていた。

 さて今日の子はどうであろうか。その後心エコーもたくさん予定しているのでチャッチャと終わらせたいが・・・・

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2006年10月28日 (土)

朝日が眼に染みる

救急診療所の当番明け、ふと振り返ると朝焼けで空が真っ赤に染まっていた。

Photo_6

夜中に駆け込んできた子供達。みな無事帰宅していったが眠れたのだろうか。

空が真っ赤になったところを見たりしたら、おねしょしちゃうかもね・・・

さて、一休みしたら土曜外来の始まりだ。

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2006年10月27日 (金)

女の子なんだから

喘息とアトピー性皮膚炎でフォローアップ中の女の子。

いつも外来にくるとまるでコマネズミのようにくるくると動き回る。そんなに楽しいかと問えば、私の名札の下にぶら下げている人形を指差しこうノタマワった。

Photo_5

「ハゲたお医者ちゃん、赤くちびる・・キモい!」

これはドイツ土産だぞ、注射しちゃうぞ!と脅しても、

「お酒持ってる・・・・ふふふ」

ってこれは薬だ!

どうでもいいが街角でばったり出会ったときにカンチョーするのはやめて欲しいのだが・・・

それにしても額帯鏡つけた医者って古典的~~ドイツでも医者はデブ・ハゲって決まってるのかな・・・・

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2006年10月 6日 (金)

ほのぼの

軽度の喘息発作で来院した幼稚園児。

モクモク出てくる気管支拡張剤入りの霧を吸いながらひと言。

「おじいさんになっちゃうよ。」

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2006年10月 2日 (月)

百日咳?

ポリクリ(ベッドサイドティーチング)時代に百日咳脳症の児の勉強をさせてもらった。彼女と接することが小児科にその後進むことになるきっかけになったと言っても過言ではない。それだけに百日咳には結構思い入れがある。その後も何人か百日咳の診断をし、治療を行ってきた。

特徴的なのはwhooping coughと呼ばれる独特の咳嗽で、コンコンと立て続けの咳のあとヒーっという高音とともに息を吸う。特に夜間にひどくなることが多い。赤ちゃんの場合、大抵は哺乳力も低下してきて、具合の悪くなって来院する人が多い。

先週来院した生後20日の女の子は、近医で百日咳を疑われ、紹介されてきた。父親がその子の咳の状態をビデオで撮ってきたが、whoopingというより下手くそな咳が続き、母乳でうがいをしているようなものであったし、哺乳力も良好ですやすやと眠っていた。しかも父と三種混合を既に受けている兄が8月半ばからずっと咳をしており、母も出産前くらいから咳が出始めていたらしい。

レントゲンでも異常はなく、カタル症状も顔面の紅潮も見あたらないため鎮咳薬のみでひとまず様子を見るように言って帰した。

今日再診に見えたが、咳嗽は落ち着いてきているもののまだ夜間時々あるとのこと。それ以上に母の咳嗽がひどくなってきたということで母子共に診察を行った。すると児の咽頭が前回とは見違えるほどひどく発赤し、苺状な舌をしていた。急いで咽頭の溶連菌チェックと念のためとして採血も行った。同時に母親も採血し、マイコプラズマやクラミジアなどの検査を行った。

果たして溶連菌は見事に陽性となり、WBC 20100 (Lym 83%), CRP 0.1と出た。数字上示しているのは百日咳だが、生後1ヶ月に満たない児でこれだけ軽いものが存在するのだろうか??

とりあえず元気なのでCAM とAMPCを処方し、3日後再診とした。

紹介してよこした近医はこの界隈で有名ななんちゃって小児科であることも手伝って、所見を軽く考えていたのかもしれない・・・しかし児はよく飲みよく眠り、たまに咳き込むだけなのだが・・・

気を引き締めて日々の診療にかからねばと改めて考えさせられた患児であった。今後も注意深く診ていくことにしよう。

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2006年9月29日 (金)

刺青

春先くらいからちょくちょく皮膚の相談やら風邪やらで来院してくる1才前の子供のお母さん。非常に穏やかでしかもよくこちらの話しを聞き、子供の世話もきっちりしてくるお母さんで、適当な距離感と的確な話しで好感を持って接していた。ただ暑い盛りでもカーディガンを羽織っているのに少し違和感を感じてはいた。おそらく病院の冷房が寒いのだろうと思っていたら、昨日は初めて白いTシャツで診察室に入ってきた。

 「お待たせしました。今日はどうしたか・・・・な・・・・・・・」

 左腕の袖のところからチラチラみえるその深緑色の紋様は何????

しかしお母さんは平然と、しかしちょっと困ったように

 「昨日の夜から今までにないひどい咳をし始めて、ゼイゼイするんです。」

 「どれどれ・・・、ありゃこれは喘鳴だね。これまでこんな感じのゼイゼイはなかったの?」

 「ええ、初めてです。」

 「お父さんも、お母さんも喘息とかアトピーとか花粉症とかない?」

 「鼻炎はありますけど、他はないです。」

 「タバコは吸う?」

 「いいえ、吸いません。」

そういえばタバコのニオイがしてたことなかったな・・・

 「ペットはいる?」

 「いません。」

などという会話のあと、気管支拡張剤の吸入を受けてもらった。当初子供はそれを嫌がったが、無理矢理強いることなく、ゆっくりと落ち着かせるように話しかけながら子供に吸わせていた。

 「う~~ん、できる。。。」

吸入で随分と楽になったので、薬を処方し、本日もう一度来るように言い帰宅させた。

そして先程今度は両親そろって来院した。旦那は今時の30男といったところか、別段変わったところもない、むしろ奥さんにしかれているような男であった。

お母さんは昨日で吹っ切れたのか今日もさわやかな薄いピンクのTシャツでみえた。もちろん左腕には深緑の紋様がちらついていた。欧州で流行っているワンポイントのそれではなく、おそらくなにかの腹の一部ではというような紋様であった。

子供は昨日とうってかわって随分と楽な呼吸になっており、夜もよく眠れていたとのことであった。

このお母さんの言うことなら間違いはないと、これまでも思ってきたし、これからもそうであろう。また月曜日においでと言って帰宅させた。

せんなきことではあるが、これまでの人生でなにがあったのかちょいと想像してみたくなる家族であった。名のある親分の娘か、そこいらのちんぴら風情ではなさそうな・・・・

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2006年9月23日 (土)

救急診療所当番

今救急診療所の当番がおわり、自分の病院に戻った。

喘息と嘔吐下痢症が交互に来院し、昼間の外来のよう。それでもこんな時間に来る必要ないじゃない?といういつもの患者さんはおらず、苦しそうにもだえている子供達ばかりでこちらも時間や眠気を感じる暇もなく対応に追われた。

喘息の中発作で来院した子供達の母親が皆一様に「喘息とは言われてません。」と言う。しかしどうみても発作で、胸のど真ん中に気管支拡張のテープを貼っており、吸入を施すと見る間に楽になっていく・・・昼間の外来ならば時間を割いて喘息の仕組みや治療法など具体的に話すのだが、救急当番でその余裕はなく、「お母さん、これは喘息だからそのつもりで治療をしてもらった方がいいよ。とりあえずの薬は出しておくから必ずいつもの先生のところか専門病院に行ってね。もちろん僕のところの○○病院でもいいよ。それからゼイゼイ苦しそうだったら夜中でも迷わずここに来て吸入を受けてね。」と言って帰す他ない。

もちろん迷う例がないわけではないが、喘息をきちんと認識させ、治療を継続させるのも医者の使命であろう。説明していても聞いていない親もいるが、時間を割いてきちんと説明する外来を設ける必要をひしひしと感じた。といってもそれだけの人的余裕などないが・・・

さて、病院に入院中の子供達はよい子にしてくれているようだ。

今日はゆっくり眠れるかな・・・・?

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2006年9月21日 (木)

これも川崎病?

先週入院した5才の女の子。

もともと蕁麻疹が出やすく、かといってアレルギーチェックで何もひっかかってこなかったが、先週蚊に刺された後掻きむしっていたら、全身に痒みを伴う膨隆疹と右足の腫れが出現したために来院した。右足はそけい部のリンパ節も腫脹しており、掻きむしったところからの感染を考え、入院加療とした。炎症反応は軽度亢進しており、入院後発熱してきたこともあり、抗生剤の静脈投与を開始した。

しかし発熱は治まらず、足の腫れは右足を中心に広がる傾向にあったため、抗生剤投与下でのステロイド投与を開始した。PSL1mg/kg/dayで始めたが3日経っても蕁麻疹は一向によくならず、発熱も39℃近く出続けた。

採血ではCRPが入院時1.9だったものが5になり、食事もとれていて下痢もしていないのにAlb 3.0, Ht 35.0, WBC 5800, AST 21, ALT 17, LDH285・・・尿中蛋白は陰性であり、なぜアルブミンが下がってしまうのか・・・もしかして蕁麻疹ではなく血管炎の症状がそのように見えたのか?眼は発赤なく、口もなにもない、頸のリンパ節はやや腫大、四肢は硬性浮腫状・・・

すべてに説明がつくわけではないが、通常量のステロイドの効かない血管炎を考え、γグロブリン(2g/kg)を開始した。すると半日で解熱し、発疹もスッと消えてしまった。心エコーで冠動脈は拡大しておらず、γをつかって3日経つが症状はまったく再燃してこない。

さてこのブログを読んでくださっている皆様。これはいったいなんなのでしょうか?

川崎病?それともその他の血管炎?蕁麻疹だけでここまであって良い?

いろいろとご意見をいただければ幸いです。

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2006年9月13日 (水)

ジェラすぃ〜〜

うちの病院には小児腎臓の医者が私の他にもう一人いる。6年先輩にあたるが、私の診療方針に口を挟まないばかりか、自分の得意分野以外はどうするべきか尋ねられてしまう。私のやりやすいようにし向けてくれているのだと思い、感謝と尊敬の念を抱くばかりではあるが、この医師、無茶無茶格好いいのである。

病院職員の間でファンクラブなるものが密かに作られ、個人ロッカーの扉の裏に彼の写真を貼り付けている看護師さんの多いこと。患児のおかあさんたちも似たようなもので、たまに私の外来に紛れ込んでくると「何故○○先生ではないんですか?」とそちらが外来日を間違えたのにしかられてしまう・・・患児たちも大きくなって年頃になると眼がピンク色に染まり、病棟ですれ違う私には見向きもしない・・・・

その内の2人の患児(女子大生&OL)が同時に入院となった。二人とも私の先生ということで、病棟の看護師が仲良さそうに彼と話しているとジェラシーを感じ、その看護師には辛く当たっている。もちろんお互いライバル心むき出しで見ていておかしくなるほどなのだが、当の医師はどこ吹く風といった具合なのである。

そんななか、今日は女子大生の腎生検を行った。彼女は当然彼が処置をすると思っていたようだったが、いつもの役割分担で私が穿刺する係となった。うつぶせにし、腰から背中を露わにして消毒を施そうとするとそこに見えるは真っ赤っかな勝負下着??!若い男ならば鼻血ものかもしれないが、こちらはスレた大人であり、淡々と生検を終了した。まさか私に刺されるとは思っていなかったようで、気まずい雰囲気の漂う生検であった。

それにしてもそこまで皆露骨にするこたぁ〜ないだろうというくらいなので少々ふてくされていたら、今日退院していく3歳の女の子から手紙をもらった。私の似顔絵が丸三つで描かれてあり、横に母の字でありがとうと書かれていた。うれしがって自分用のホワイトボードに貼って飾っていたら、すかさず看護師さんから茶々が入った。

「そっくり」

おいおい、そりゃおまえさんたちのダーリン程じゃないが、鼻も口もあるぜよ・・・

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2006年9月11日 (月)

思春期

昨日の影響で憂鬱な外来日となった。

鉛のような身体を引きずって外来へ到着するともう既にカルテの山が・・・

しかししょっぱなの男子で復活した。というのは

「先生、しっこがやたらと出るんッスよ。しかも出たのに残ってる感じ。気持悪いッス。」

「わかったわかった。で、膿はでるの?痛みは?」

「膿・・・ちょっと白いッス。でも痛みはないな~~。」

「この一週間で女の子とエッチしたか?」

「えっ、この一週間ッスか・・・してないッスよ。俺もてるんだけど、してないッスよ。いや本当!」

「わかったわかった。信用するけど、もしそういうことがあったら女の子にも治療をしなくちゃならないこともあるから、必ず言えよ。」

腎移植後の患児だが、拳法をやっている好男子で軽口を言い合いながらの診療でスタートできたのだ。

その後はいつも通りの外来で推移し、午前の最後に来た中学2年生はタマタマの痛みでやってきた。

「いつから痛いの?」

「2週間くらい前に体育祭の練習が始まって、それからです。」

「どれ、見せてもらおうか。」「あっ、そうそうお母さんと看護師さんには出ていってもらおうな。それとも見せたい?」

「いっ、いえ。」

二人っきりの診察室でズボンを下ろし、陰部を確認すると精巣の上の静脈がグニャグニャと腫れ上がっていた。精巣静脈瘤だが精巣も少し小さくatrophy?と感じ、これは泌尿器科にまかせる他はなかった。

「そこが、ちょっと・・・」ともぞもぞさせながらも

「それからち○この先の、この白いのなんですか?」

「そりゃ君、恥垢だよ。大丈夫、心配ない。ちゃんとしないとモテないぞ。」

「はい!わかりました!!」

母親には淡々と説明し、泌尿器科への紹介状を持たせた。

午後の最後に来た女の子は鉄欠乏性貧血でフォローアップしていて、先月肉親の看病からストレスによる十二指腸潰瘍を起こした子であった。

「先生、先週生理みたいな血がおしりから出たから来た。」

「ということは真っ黒じゃなく、真っ赤ッカだったんだな?」

「そう。ポタッ、ポタッて出てきた。でも痛くなかったんだよ。」

「その前にうんこが固かったりしなかった?」

「う~~ん、固かった時もある。」

「よし、じゃあ痔かもしれんから見せてもらおうか。」

「え~~、先生に見せるの?」

「俺じゃ不服か?な~~んて言わんよ。女医さんに見てもらおう。外科の先生だよ。別に俺に見せてくれてもいいけどな。」

「見せたら減る。」

「ハッハッハ。わかったからちょっと外で待ってな。」

外科の先生に診察してもらった結果、痔であることが判明し、薬を処方され笑顔で帰っていった。

小児科医にとって診察が難しいのは乳幼児ではなく、思春期の子供達だと思う。精神の成長過程の彼彼女たちは今回のようにはすんなり行かないことが多い。診察の雰囲気ひとつで重要なことをしゃべってくれなかったり、薬を飲んだと言いながら飲まなかったりなどざらである。(特に難しいのは拒食症の患児で、今度詳しく述べることにする。今日はここまで。)

ということで和気藹々の外来が今日も繰り広げられたのであった。

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2006年9月 4日 (月)

頻回再発ネフローゼ?

今日は学校も始まったことだし、月曜といえどもそんなに混まないだろうと思いきや、随分と長話をしてしまい、他の方々にはお待ち頂くことになってしまった。

というのは某医大に通院中だが、治療に納得がいかないとのことで中学生とその母親が2nd opinionを求めて来たのだ。

聞けば8年前にネフローゼを発症し、ステロイドでよくなり、一度ステロイドをやめられた。その半年後に再発し、以降ステロイドをずっと続けているらとのこと。そのステロイドを使いながら、少し減らすと再発するので量も減らせず、一日おきに飲み続けているのだという。3年前にシクロスポリンという薬を加え、それでもステロイドは中止せず、シクロスポリンをやめようとしたところで再発したのでシクロスポリンもステロイドもやめられないでいるらしい。

私たちの考えではこれは最もやってはいけない治療の一つだと思う。再発を怖がるあまりステロイドをやめられないのは本末転倒である。折角ステロイドが効くタイプなので、スパッとやめて、再発したらまた使い始めればよいのである。この一時やめるというのがとっても重要で、ダラダラと使い続けると副作用が出てしまう。やめる期間が長ければ長いほど副作用の発現が抑えられ、しかもネフローゼの型そのものがハッキリする。ハッキリすれば何をどれくらい使うべきか見当もつけられるし、ダラダラとステロイドを使わないから人混みも怖くないし、学校にも行ける。体育だってできちゃうのだ。

どうも某病院では8年で10回再発していて頻回再発なんだと言われているらしいが、半年に3回(初回を含む)、ないしは任意の1年で4回再発した場合を頻回再発とする定義が存在し、それを満たしているかどうかも疑問である。とすると次のステップの治療に入るべきかどうかもわからない。

ステロイドの副作用もこれだけ長期になると必発であろう。肥満・骨粗鬆症・糖尿病・白内障・・・よく知られていないが安静を強要され続けていると、深部血栓や腎内石灰化なども起こってくる。

ただし、頭ごなしにこの治療はいけないなどと言えない。実際には日本の中でこのような治療を推奨している有名な先生・大学が実在するからである。本当に不思議なのだが、ステロイドを長期にダラダラと使い続けていながら、副作用をほとんど出さずにフォローしていける彼らのやり方は、実は彼らにしかできない神業なのである。真似しようとすると副作用で患者さんを苦しめてしまうのだ。何をどう診ていくことでなりたっているのか定かではないため、中途半端に真似するべきではないと思う。

一方我々のやり方であれば、誰でも同じように治療することが出来る。ただしステロイドを長期に使わない代わりに、再発は多くなる。もう一度いうがステロイドが効くタイプの再発は全く怖がる必要はない。それならばステロイドの副作用に苦しむだけ損ではないか??

もともとはネフローゼの治療法が2つの流儀に分かれているのがいけないとは思う。患者さんを惑わすことのないよう、WHOの提唱する我々のやり方に統一していけないだろうか・・・

こういった患児が来院するたびにそう思わずにはいられない。

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2006年9月 1日 (金)

準夜勤務終わり

急病診療所の準夜勤務が今終わった。

外来日でヘロヘロの流れのまま一次救急当番に突入したのだが、とりあえず何事もなく過ぎた。

喘息はやはり季節柄増え始めている。

わずか生後2ヶ月前の児がゼイゼイ言いながらお母さんに抱かれてきた。ミルクは何とか飲めていたようだが、どうして今まで放っておいたのか・・・とりあえずβ刺激剤の吸入を施すと途端に呼吸が落ち着いた。熱もなく、生下時からの喘鳴ではなかったため薬を渡して帰宅してもらった。もちろん明朝には病院へ来るように指導して。

今晩はみんながぐっすりと寝られますように・・・

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2006年8月30日 (水)

似てるかな~?

診察室の壁に絵を飾っている。

来院した子供達が書いてくれた絵である。

来院中の待合い時間に書いたものあり、退院後のフォローアップで来る時に書いて持ってきてくれたものあり、患児の兄弟がこれも貼ってと頼まれたもの等々。

先日この絵を見たお父さんが、「これ似てる~先生、そっくり!ワッハッハ!!」と言い去っていった。

髪が立っているのが似てるのかな・・・・・

もうちょっとハンサムなようにも・・・・

Photo_3

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2006年8月28日 (月)

異物による気道閉塞

土曜外来も終わり、帰り支度をし始めたところに電話が鳴った。

救急隊からでビスケットをのどに詰まらせた1歳児をお願いとのこと。

最悪気管切開もあるかと待ちかまえていたが、母親に抱きかかえられ、泣き叫んでの来院であった。

15分ほど前に棒状のビスケットを持たせていたら、急に顔色が悪くなった。息をしていないのであわてて口の中に指を突っ込んでビスケットをかき出し、足を持って逆さ吊りにして背中を叩いたら泣き始めたとのこと。

痙攣の既往はなく、手足の屈曲なども認めず、やはりビスケットをのどにつまらせたのだろうけれど、指でかきだすのは反対に押し込んでしまう可能性が高く、無事うまくいって良かったけど、本当はしちゃいけないんだよと話した。

口の中を覗くと、扁桃のあたりが血糊でべっとりしており、強く引っ掻いた痕であると思われた。

なにより本人が落ち着きを取り戻し、遊び始めたので我々も両親もホッと胸をなで下ろしたが、チビちゃん達は本当に目が離せない。

この間も公園で遊んでいるまだよちよち歩きの幼児がこんにゃくゼリーをお兄ちゃんからもらおうとしていたところを発見し、危ないと制止した。近くにいた親に気をつけるよう諭すとありがとうございましたと恐縮していたが、そんな親ばかりでなく、いつもやっているから平気だとくってかかられることもある・・・

なんといっても子供達の死因第一位は不慮の事故(溺水など)なのだ。防ぐ手だては大人が気をつけるほかあるまい。そこで注意すべき事、やってはいけないこと、救急法は常識として知っておいてほしいものである。

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2006年8月26日 (土)

へろへろ

昨夜の夏祭りの後、急病診療所の当番で朝まで救急患者さんを相手にしていた。

さすがにヘロヘロだが、土曜日の外来もこなさなくてはならない・・・

と思っていたら、随分とすいていてこうしてブログを書くことができた。

急病診療所での目玉は5才の喘息の重積発作。一連のコースでよくならず、2次救急へ搬送となった。おそらく入院加療となっているだろうが、近医では6月からしばらくステロイドの内服も指導されていたらしい。いったいどんなコントロール状態だったのか知りたいところであったが、そんなことをしている暇のない急病診療所なのであった。

それにしても眠い・・・・・・・・

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2006年8月25日 (金)

小児科夏祭り

私がこの病院に来てから3年連続の夏祭りをおこなった。

いつもの射的・輪投げ・スーパーボールすくいの他、今回はシンセサイザー奏者による演奏もあった。

子供達は病棟・外来ともに大勢集まり、無茶苦茶盛り上がった。どうも年々グレードアップしている気がする。やっていることは同じなのだが、3回目ということもあって皆が慣れてきたせいかもしれない。事務方が寸劇まで用意してくれて子供も大人も楽しめたし、当の本人達もいつもと違って活き活きしていた。

私もそろいのハッピを来て子供達の遊びのお手伝い(的屋の親父)をした。

最初ははにかんでいた子供達もみな本当の笑顔を見せてくれた。

これに勝るものはない。Photo_1 Photo_2

最後は花火で締めくくった。

子供達を送り、後かたづけをすると線香花火が残っていた。

スタッフ皆でしゃがみ込み、じいっとか細い火の玉を見つめた。

夏ももうすぐ終わりだよと

ジュッと落ちた。

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2006年8月23日 (水)

腎臓病理組織

夏休みに腎生検を行った子供達の病理組織診断と病理標本が手元に続々と戻ってきている。

ほとんどが予想通りの結果であり、確信をもって治療に専念できるものであった。ただ1例は予想外に軽症な診断だったため、もう一度自分たちで顕微鏡を覗いて臨床所見と照らし合わせながら治療法を考え直した。

実はこの腎臓病理診断で学会が揺れている。

先日の日本腎臓学会にて病理医と臨床医10名による同一プレパラート診断を行った結果、さすがに疾患そのものは間違えようがないものの疾患の重傷度、細かい分類に関してはみごとなほどにばらつきがあった。病理組織を日常から見慣れている病理医ですら同一見解が出せないのである。

この病理組織診断いかんで治療法が選択される現在、分類が違ってしまうことは治療法やその予後に狂いが生じるということであり、ゆゆしき事態なのである。

これは日本の医療レベルが低いからではない。それぞれが信念を持って勉学に励んできた結果なのである。これからはその摺り合わせをしなくてはならない時代なのだ。

しかし患者さんは待ってくれるわけではない。今このときも疾患はどんどんと進行を続けている。それに対処するためには信頼のおける病理医に診断をお願いすることと、臨床医みずからが責任を持って病理組織診断にあたることが重要である。

ということで今日も臨床の合間にプレパラートを覗く一日になりそうだ。

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2006年8月18日 (金)

Perthes disease

今日はフォローアップしているネフローゼを患った児の外来日だった。

この子は同時にPerthes病という原因不明の大腿骨骨頭壊死を来す疾患にもみまわれた。聞いただけでおそらく小児腎臓専門医ならぞっとするだろうけれど、ネフローゼをなんとかするためにステロイドは欠かすことが出来ず、しかもそのステロイドを使い続けると大腿骨骨頭壊死を起こしてしまう可能性があるのだ。すなわちステロイドを使うに使えず、戦々恐々とするほかないのである。

再発を繰り返さなければステロイドをそれほど使わなくても済む。そう願いながらであったが、半年の間に2回も再発してしまい、ステロイドを使わなくてはならない状況が続いた。頻回再発はネフローゼの中でも悪いタイプで、免疫抑制剤の併用を余儀なくされた。

骨の具合を推し量り、荷重をさけるために装具を付けてもらいながらの治療が続いた。

家族の願いが届いたのかこの1年、全く再発しなかった。そのうち装具をつける時間を少なくしていっても足の痛みはまったく出現しなかったしレントゲンでも悪化傾向を認めなかった。

そして今日MRIを確認したところ、ほぼ一次治癒したと考えられる画像を得られたのだ。

この2年間、その子の家族にはいろんなことがおこった。それもこれも全部ひっくるめてお母さんはいつも私に話してくれた。

相談したことに私が応えたことでどれだけ救われたかと御礼を言われた。とんでもない、うまくいったのはこの子と皆さんが頑張ったからですと笑顔で答えた。

装具なしで彼が自由に飛んだり跳ねたりできる日も近い。

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