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2014年9月 2日 (火)

正しくビビろう その2

 エボラ出血熱は死亡率がやたら高く、恐ろしい感染症であることは言うまでもない。ただ感染経路がハッキリしており、少なくとも日本に入ってきたとしても流行が止められないという感染症ではない。一般の人はそれでよいと思うが、医療者はいつどこで対面するかもしれないという危機感は持っておくべきだろう。その時感染防御をどうできるのか、対策工程を考えておかないというのは間違っている。感染症専門家の岩田先生も情報を発信されているが、何をどれだけ使うかのシミュレーションはしておくべきだろう。

 デング熱をいたずらに怖がる必要はない。毎年というだけでなく、今この時でも流行地域へ行き来している人は何万人といる。おそらくこれまでも判明していないだけで、数多くのデング熱患者は発生していたはずだ。しかし何もせずとも数日で回復する。調べようにも迅速キットは日本で承認されたものはなく、中国製のキットが手に入るかもという程度。実際には県の衛生研究所に検体を持ち込んで調べてもらうしか手はない。デング出血熱という血漿漏出症状が出た場合だけとてもやっかいな状態となるが、通常ならば適切な輸液や血漿輸注で乗り切れるはずだ。もちろん例外はあるので、手放しで問題ないと言える訳ではないが。
 インフルエンザも怖がる必要はない。昔も今も安静を保ち、滋養を付けることで完治するのが通常である。感染早期に抗インフルエンザ剤を使わないと治らないという感染症ではない。しかも抗インフルエンザ剤を使うと脳炎・脳症を防ぐことが出来るように思われているが、そんなデータはない。合併症としての肺炎や脳症の発症率は残念ながら使わない人と有意差はない。唯一解熱する時間が数時間早いだけである。
 鳥インフルエンザのように致死率の高いインフルエンザが流行を迎えたときにどうするべきか。おそらく一刻も早くワクチンを製造して接種することが一番だろう。現行の抗インフルエンザ剤は確かに体内での増殖を遅らせる働きはあるかもしれないが、それが感染個体にとってメリットが大きいのかデメリットとなるのかはハッキリしない。
 と考えて行くと、情報を淡々と的確に収集することが大事で、ホラーのように騒ぎ立てる意味はないことが判る。医療が出来ることもあれば、出来ない事も多くある。ヒステリックに叫ぶ発言者をテレビで見掛けるが、それがどれだけ罪なことか考えて欲しいものだ。
 最後にこの秋から水痘の予防接種が定期接種となる。水痘は免疫が弱まっている人に感染すれば命の問題となる感染症だ。出来るだけ多くの人が水痘に対する免疫を持ち、流行を防ぐことが、この人達の命を救うことになる。是非しっかりと接種していただきたい。

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コメント

先生 お久しぶりです!
おかげさまで娘も6年生になり もう
こちらでは中学生です。

そんな彼女を連れ 健康診断に行くと
例の”子宮頸がん”のワクチンを
薦められました。
今 おばまけあ~ のお蔭で子供たちの
ワクチンはすべて無料なのです。そして
女子だけではなく 男子にも薦めるそうです。

小児科の先生いわく 理由はまだわからないけど
早い時期に受ければ 受けるほど良く効きます。
と言われました。

その日は 中学入学に必要とされる
ワクチン接種の予定だったので 子宮頸がんの
ワクチンは想定外で 断りました。

あれだけ 派手に報道されていると
親としてはひいてしまいます。。。
どうなんでしょうね。
来年までに考えないといけませんが。。。

では また

投稿: バリスタUSA | 2014年9月19日 (金) 13時45分

バリスタUSAさん

 HPVのワクチンは自分も迷っています。副作用の話も様々に検討されていますが、どうも腑に落ちないのです。

 このワクチンを接種する前に製薬会社の担当者に、その機序を尋ねました。しかし子宮頚部におけるウイルス感染とその免疫反応についてわからない点が多く、明確な機序については説明できませんでした。海外のデータからはワクチン接種した人で、HPV感染が抑制され、ひいては子宮頚癌発症も減るだろうという報告はあります。しかし明確な機序を説明できないまま、あれよあれよと議員主導で予防接種が開始されたのが実状です。海外での副反応報告は微々たるものでしたので、結局当院でもかなりの数を接種しましたが、特に局所の痛み以外問題とはなっておりません。

 他のワクチンは体内の免疫誘導など詳しい機序が判っています。なのでお薦めしやすいのですが、HPVに対する免疫反応がいまひとつハッキリしていないのが、強く薦められない理由です。副反応については、現時点ではおそらく問題ないと考えておりますが、所属するある学会ではとんでもないワクチンと非難囂々でした・・・詳しくは医療ガバナンス学会というサイトhttp://medg.jp/mt/をご覧下さい。

 お薦めできるかと言われると・・・これ以外のワクチンを先にお願い致します。

投稿: クーデルムーデル | 2014年9月24日 (水) 12時22分

先生 大変わかりやすい情報を
ありがとうございました。
病気が減るだろうと言う予測のみで
体内にばい菌マンを入れることは
良いこととは思わないので
先生のおっしゃるように その他のものは
しっかり接種させます。
アメリカでは学校関係 保育園関係などは 
接種記録の提出が義務付けられています。
DCに2年前に赴任した従兄弟一家の子供二人は日本で事前に必要な接種を受けたにも
かかわらず これはここでは認められないと
言われ もう一度同じような接種を余儀なく
されたと言っていました。
私も昔 移民権の書類が通った後 何種類かの
予防接種を受けるように通知が来ました。
同じものは子供の時に受けていましたが
”時効”だったようで 再度受けました。
それにしても 今の日本の接種の制度は
なんだか親が混乱しそうですね。。。


投稿: バリスタUSA | 2014年9月28日 (日) 12時12分

バリスタUSAさん

 その後いろいろ検索してみましたが、下記のような詳しく書かれているサイトでも特に膣内や子宮頸部における免疫機序についてはハッキリ書かれていません。
http://s-igaku.umin.jp/DATA/62_04/62_04_05.pdf

 ただし英国、ブラジル、オーストラリアなど様々な国で男性にもこのHPVワクチンが推奨されています。もちろん日本の状況は知っていて、それでも女性はもちろん男性にも薦めているのです。WHOも日本の現状を注視しながらもこのワクチン接種の副反応は問題なしという見解を示しています。

 もしかしたら私の考えすぎかもしれません。ただ私は他のワクチンは出来るだけ接種すべきというスタンスですが、HPVワクチンだけはメーカーとすったもんだした経緯からも釈然としない気持ちが残っているのです。

投稿: クーデルムーデル | 2014年9月29日 (月) 22時46分

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