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2014年9月 2日 (火)

正しくビビろう その1

 夏の小児科外来は、「のどが真っ赤ですね。夏風邪です。自分の力で治るのを待つほかありません。数日でよくなるはずですが、熱が5日以上続くとか熱のある間に湿疹が出てくるならもう一度見せて下さい。」とお話しする機会が多い。すると「ヘルパンギーナではないのですね。ああ良かった。」とおっしゃる親御さんが必ず数人いらっしゃる。ヘルパンギーナも夏に流行るウイルス感染の一つで、夏風邪と称されるものの一つにすぎない。名前がついているだけで、怖いように思われるが、薬もなく数日で治る感染症だ。

 感染症は原因となる微生物により発症の仕方が異なる。伝播の仕方もそれぞれであるし、感染した後の発症するかしないかも違えば、罹患者の反応も違う。それ故原因の微生物を知ることは重要ではあるが、たとえ微生物が居たとしても感染が成立しているわけでなく、ただそこに居るだけの場合も存在する。また症状を呈さない不顕性感染という状況もありえる。(ということで、症状の無い人に、感染していないか迅速検査をして欲しいと言われても無意味であるとしか言えない)
 発症した人でも、他者へ移すかどうか、ハッキリと判る状態の感染症は残念ながら少ない。だから特別な場合を除いて、治癒証明などを医療機関に求めても判定不能というのが本当のところだ。(基準もなく、唾液や鼻水、便中にどれほどの微生物が潜んでいるか調べる手立ても資料もないのに何を根拠にするというのだろう・・・それが出来るのが医者だと豪語する人はいるが、はて・・・)逆に解熱して3日経過したら感染源となることはないと言われているような基準のハッキリしている感染症なら、医者が診なくとも誰でも判定できるものだ。教育が行き届き、節操のある日本においては、大流行するインフルエンザなど証明書をもらいに病院へ受診するなど意味のあることとは思えない。
 発症したからと言って、すべてが重症化するわけでもないし、すべてが軽症で済むわけでもない。発熱し、のどが赤く、咳や鼻も少しずつあった高校生が、数日後に突然痙攣し、あっという間に脳炎を発症して亡くなったこともあった。原因は普通なら風邪として数日で治まるライノウイルスが髄液から検出された。何か出来ることがあっただろうかと10年以上考え続けているが、未だに何も見つからない。もし症状が出始めた初期から見ていたとしても、何もしてあげられなかっただろう。
 少なくとも発熱だけですぐに医療を受ける意味はない。生後4ヶ月以上経過した人なら、数日様子を見て、それからで全く遅くないし、早めに何かをしたから治まるということもない。何かをしたいなら、水分摂取と安静を保つことだ。数日経過を待ってはいけないのは、生後3ヶ月以内の児と、顔色の悪い児、呼吸がやたらと速い児だ。感染症において医療が出来るのは、人が微生物と戦って負けそうなときに人へ荷担し、勝ち戦へ導くことだ。極病初期にそこにいる微生物を片っ端からやっつける方策は、人への負担が大きく、また微生物を変化させてしまうだけに他ならない。もちろん戦える準備をするという意味でワクチンはとても有効であり、それ以上に良く寝てよく食べて、鋭気を養っておくのが一番であることは言うまでもない。

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コメント

先生 余談ですが。。。
娘が赤ちゃんの時のフィリピン人の
小児科の先生は熱が出れば ぬるいお風呂に
入れて体温を下げる。且つ 脱水に注意して 
栄養を取る。不機嫌で泣き続けなければ
様子を見る。来なくてOK。
吐けば 脱水に注意して全身状態と
機嫌を見ていればOKという先生で 
彼女に抗生物質を出すことは
一切しませんでした。

最初は なんで すぐ薬を出してくれないのかと
思いましたが(日本でそういう習慣に
慣れているので) 熱は病気と闘っているからで
薬で無理に下げなくて良し。とか 
吐き気はお腹が苦しいからで 無理に
とめなくてもよし!という。。。
その頃はなんとも原始的な。。。と
思いましたが 今ではそういう方法を
教えてくれたあの先生に感謝しています。

先生のコラムを読んで 昔を思い出しました!
今じゃ もう同じくらいの背丈で 足は
私よりもやや大きくなり 人の靴を履いて
学校へ行っています。やれやれ・・・

投稿: バリスタUSA | 2014年9月19日 (金) 14時00分

バリスタUSAさん

 ご無沙汰しております。

 人間は起こった事象について原因を求める生き物です。例えば肺炎になった人が居たとして、その前に風邪様の症状が続いていたら、風邪をこじらせたからだと言います。それが悪いわけではないですが、風邪を早い内に治さなければ肺炎になると思い込んでしまいます。おまけに早い内に治す薬とかおまじないがあるかと思いがちですが、そんなものはありません。じっくり養生するのが肝要です。

投稿: クーデルムーデル | 2014年9月24日 (水) 12時15分

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