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2011年8月21日 (日)

周術期経口補水療法セミナー

 大塚製薬の主催する周術期ORTセミナーに参加した。軽度から中等度の脱水に経口補水療法をというのは当然知っていて、昔から点滴より経口補水を自宅でと患者さん達にお話ししてきた。しかし外科手術前にこれを使用するという概念は全く考えたこともなかった。

 おそらくほとんどの医者は研修医の時に先輩医師から刷り込まれた知識で10年ほど過ごし、その後自分の専門の領域でよりよい医療の実践を目指すためにいろいろと改良を重ねていくのだろう。外科的処置が必要な患者さんで自らが術前に立ち会うことのあるとすると、緊急性の高い虫垂炎がほとんどであり、術前にそれほどの時間的余裕もないため、当たり前としていたコースを辿るようにしていたのだ。いやはや汗顔の至り。

 術前の当たり前のコースとは、特に腸に関連する手術であればなおさらだが、12時間以上の絶食と6時間以上の絶飲を行い、脱水予防のためと術前の麻酔導入の薬投与のために点滴を施行し、出来れば術後に腹圧をかけないようにするため術前に腸管内を空にする下剤を服用してもらうというものだった。患者さんも術前は緊張しているので、食べたいという欲求も少ないだろうと思っていた。

 このセミナーでは食事摂取の内容の違いで胃からどれくらいの時間をかけて排泄されるのかを知った。おおよその時間として4時間程度という認識を持っていたが、経口補水液であれば30分もあればすべて排泄されていたし、胃切除後食と言われる低残査食に加えて低脂肪食を摂取した場合、3時間で排泄されていた。なるほどそれなら12時間以上絶食にする必要などない。

 おまけに術中に必要な点滴による補液の量も減らせ、血行動態も安定するという報告や、術後のインスリン感受性をよくするという報告などもあるという。これらはまだ確固たるエビデンスではないようだが、経口補水のメリットはありそうだ。

 なによりそりゃそうだと思えたのは、経口補水療法の伝道師と言われる神奈川の谷口先生の講演で強調していた5つの要因から経口補水をすべきだというものだ。それは患者さんの術前体液バランスを点滴より改善できる、食事が出来て直前まで飲水できて点滴いらずなら患者さんの満足度は当たり前に向上する、術前の医療過誤(点滴によるトラブルとか患者取り違えとか)が激減する、看護師の不必要な仕事が減る、経営としても利益アップ(査定されない点滴無し、栄養加算もできる)するというもの。いやはや恐れ入りました。

 ということで6時間前まで食事OK、2時間前まで飲水OKというのが世界的にも主流なのだそうだ。自分としては術前の事を確認できたという喜びよりも、経口補水がもっと様々な状況で利用できるだろうことや、これまで当たり前と思っていたことをもう一度検証し直す必要があることを認識できたという感銘の方が大きなセミナーであった。

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