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2011年2月 8日 (火)

ポリオワクチン

 ポリオウイルスはヒトにのみ感染するウイルスである。感染者の9割は不顕性といって症状もなにもなく過ぎ去る。しかし数%に髄膜炎を引き起こし、後遺症として麻痺を残すことが知られている。

 日本では大流行した1960年代以降、生ワクチンを経口接種することで患者数が激減し、現在は野生株による発症者など皆無となっている。しかし野生ではないのだが、生ワクチンに使用されているワクチン株の変異によって感染者が出ている。この問題は1950年代には既に欧米諸国で取り上げられ、生ワクチンから感染の起こらない不活化ワクチンへの変更が徐々に行われてきた。野生株によるポリオの根絶を果たした国で未だ生ワクチンのみを使用しているのは実に日本だけなのである。

 ポリオウイルスは糞口感染する。体内に入ったウイルスは糞便中に1週間から1ヶ月ほど排出され続けることが知られている。ポリオウイルスに対する抵抗力を持っている人なら何も問題はない。しかし抵抗力を持たない人も存在する。予防接種をしていない人と、昭和50年から52年生まれの予防接種後も抗体を獲得できなかった人達だ。予防接種を出来るだけ多くの同年代の乳幼児に受けさせるのが、リスク回避に役立つことから集団接種が行われている。ただし全員に、ということが出来ないことが問題を複雑にしている。

 通常の排便状況であれば、ウイルスの入った便は上手に処理されることだろう。しかし下痢等でばらまかれた場合はどうであろうか。経口接種後ただちに下痢となった場合は、本人の免疫すら獲得できないまま終わることもある。それだけではなく、ウイルスを他へばらまくだけとなり得る。通常は毒性のない生ワクチンだが、腸管内で毒性を獲得するものがいることも知られている。それが感染を引き起こすウイルスの正体だ。

 日本の気候からすると、夏季はエンテロ系ウイルスが流行り、食中毒なども含め下痢患者が増大することが知られている。またノロウイルスやロタウイルスは冬季に猛威をふるうことなど子供を持った親なら知っている方も多いはずだ。予防接種の効果および感染のリスク軽減のため、ポリオウイルス生ワクチンの経口集団接種は春と秋に行うべきと考えられる。しかし自治体によっては年がら年中、下痢&嘔吐患者が大量に発生していても、そのまま集団接種を実施しているところが存在する。確かに予防接種法では春秋にすべしという規定はないが、リスク管理という点でおかしい。保健所等に意見してきたが、多人数に接種するためにはやむを得ないとの返答である。ホンマかいな・・・

 不活化ワクチンを注射することでこれらのリスクは回避できる。しっかりと抵抗力も獲得できるので、野生株の流行地域以外はこの不活化ワクチンへ移行している。日本でもそうしようという動きはあるが、実施されていない。政府は日本独自で開発中であるからと海外の不活化ワクチンを承認しないでいる。しかし、そんなことだけのために、実際にワクチンによる感染者がわずかだが存在するのだ。

 ここへ来て、不活化ワクチンを輸入して接種しようという機運が高まり、全国いろんな地域で医院を中心に施行され始めている。千葉県では2つの医療機関で出来るが、十分な数とは言い難い。我々の施設も早急に倫理委員会を通して接種できる方向へ移行しようと画策中である。

 近隣の方々、しばらくお待ちを。

 

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コメント

よろしくお願いいたします。千葉県の広さ、人口を考えましたらもっとたくさん必要です。佐原病院の松山先生、氏原事務長さんには、ほんとにお世話になりました。

投稿: 関根奉允 | 2011年2月 8日 (火) 17時14分


…待ってていいですか(笑)?!

投稿: ゆき | 2011年2月 8日 (火) 21時34分

そういえば、上の子が日本で予防接種を受けていた頃、ポリオワクチンだけ妙な緊張感があったことを思い出しました。接種後のオムツの取り扱いとか。
  
  
こっちではそういう緊張感は皆無です。一度に4本打ったりするので、「大丈夫かいな」という別種の緊張感はありますが。

投稿: ポリ | 2011年2月 9日 (水) 05時29分

関根さん

 コメントありがとうございます。

 県立佐原の先生には本当に頭が下がります。行政区に組み込まれている病院にありながら、行政判断とは違った医療行為を始めるのは並の努力では出来ないはずですから。

 当方もなるだけ早くとは考えていますが、常時倫理委員会が開かれるわけではなく、相当時間がかかるものと思います。

投稿: クーデルムーデル | 2011年2月 9日 (水) 08時48分

ゆきさん

 う~~ん。。。

 出来れば早い方がよいかと・・・

投稿: クーデルムーデル | 2011年2月 9日 (水) 08時49分

ポリさん

 おむつの取り扱いをいろいろ言うなら、胃腸炎の季節にするな!っちゅうことです。

 予防接種の同時接種は世界の常識ですが、日本では行われてきませんでした。恥ずかしい話ですが、未だに頑なに一つしかしないという医者もいます。同時でも副反応の出現率は変わりませんし、免疫応答などむしろ良いという報告もありますが。

投稿: クーデルムーデル | 2011年2月 9日 (水) 08時53分

 不活化ポリオワクチンは大賛成です。

 しかし気を付けないと、以前の病気腎移植と同じ方向に話を持って行かれかねないですが…。安全性は確立されていますからその心配はないのでしょうが。

投稿: hidero51 | 2011年2月 9日 (水) 11時37分

hidero51さん

 人種としてもアジア人(韓国・台湾・香港・シンガポールなど)でもIPVは使われています。日本においても多くの方が既に打ち終わっていて、副作用報告は変わりません。もっとも製薬会社がからんでいないので、多数報告には届きませんが。

 なによりインフォームドコンセントをしっかり行っており、説明と同意書はどこの医療機関でもきっちり残しており、病気腎移植とはまるで違うと言えると思います。

投稿: クーデルムーデル | 2011年2月 9日 (水) 12時33分

 すみません。誤解を招く書き方で…。

 僕が言いたいのは「絶対によい」とわかっているものでも、導入の時に何らかの有害事象が起こった際に、本来それとはまったく関係のない有害事象であっても、厚生労働省からStopがかけられてしまう可能性があるということです。厚労省の役人は「病気腎移植」でも「不活化ポリオ」でも、自分に責任が及びそうになればStopをかけることしか知らない人間ですから。

 良いものであるからこそ大事に導入していくという慎重さが必要であると考えます。

 かく言う僕も4か月の娘がいまして、不活化ポリオ接種を目論んでおります。

投稿: hidero51 | 2011年2月14日 (月) 12時30分

hidero51さん

 ご自分のお子さんへの接種を契機に不活化を始められる先生が多いようですね。

 この数週間で接種できる医療機関が倍増しています。うちも早くしなくちゃ・・・

投稿: クーデルムーデル | 2011年2月14日 (月) 13時18分

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