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2010年7月13日 (火)

常連客

 懇意にしているラーメン屋がある。この5年通った店だ。親父さんも奥さんもとても気さくな方々で、子供達もいろいろとお世話になった。しかし時々、もう年だから福島の田舎に引っ込もうかという話も聞いていた。

 そんな日が本当に来るのかなと思っていた5月のとある日曜、店の厨房に見掛けない女性が忙しそうに立ち回っていた。思わず親父さんに、奥さん具合悪くしたんですかと問いかけてしまった。すると有給休暇だよと笑って答えていた。それでもその後も厨房に奥さんの姿はなく、子供達も「おじさん、おばさんどうかしちゃったの?」と尋ねるほどであった。

 6月半ばの夕方、親父さんが厨房から出て、店のカウンターに座っていた。いつもの麺を頼むと、実はと切り出された。田舎ではないが、長野で余生を送りたいと奥さんの希望で、そちらへ移り住むことにした。このひと月後継者に教え込んで目星が付いたところだとのこと。今月いっぱいで終わり、本当にお世話になりましたと頭を下げられた。

 いやいやお世話になったのはこちらの方、愛情のこもったラーメンをいつもありがとうございましたと返答した。最後に親父さんの作る塩チャーシュー麺を食べた。旨かった。。。。

 先週末そのラーメン屋に顔を出した。店の雰囲気がガラッと変わっていた。何より親父さんがいない、奥さんもいない厨房に寂しさを感じた。注文を終えると、一人、また一人と客が入ってくる。注文を聞くアルバイトの姉さんに、「ざる中華」と声があちこちでかかる。この店の名物メニューだ。しかしもうメニュー表にはその文字はなかった。ざる中華もとろろラーメンも皿ラーメンもない・・・常連客たちの動きが止まった。

 先程電話が鳴った。なんと懐かしい奥さんの声だった。松本に家を借りて住み始めた、毎日窓の外を眺めるだけで幸せになると明るい声だった。しかし挨拶も出来ず来てしまって申し訳ないと言われた。いいんですよ、お二人が幸せに暮らせるのが一番ですから。こうやって知り合えたのも何かのご縁、長野は好きでよく出掛けますから、その時はよろしくお願いしますと頭を下げた。

  こうして生きていると人生の輪が少しずつ、少しずつ広がっていく。別れもあるのだが、それは繋がった上で離れているだけのように感じる。真剣に生きているからこそと思う。気持ちの良い人達とのご縁は本当に大切にしたい。

 私たちはずっとあなたがたの常連客ですよ。

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