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2010年4月15日 (木)

なにか変?

 乳児のなにかおかしい?って感じは重病を疑う根拠となり得るというのは小児科医にとって常識だ。それでも追い立てられるような日常診療で見落とすことなく注目出来ているかどうかは判らない。

 今日は部長の言葉から引用する。「朝から熱が出始めて少し吐いたってことだけれど、顔色も普通でお腹の聴診や触診は問題なかった。ただなんとなく呼吸が速いように思って、採血だけでも、いやそれなら1本点滴だけでもとお話しした。」とのこと。その後点滴を入れようにも全く留置が出来なかった。部長の名誉のために書くが、刺すことについては天下一品の腕前だ。自分も手前味噌ながら結構イケてると思っていて、他人の手技を見ていてこれは凄いと思ったことはほとんどない。しかしこの部長のルート確保は本当にう・ま・い。それでも入らないときがたまにある。そんなときは手を替えるのが鉄則だ。そこで外来中の私が呼ばれた。

 刺せそうな静脈を探すが、見た目にはどこにも見当たらない。駆血して指で探すがそれでも索状物は触れない・・・それにしても呼吸が速いな・・・顔色も悪いぞ・・・こりゃ何か隠れてそうだ、早く刺さなきゃ。普通ならここにあるはずだ、触れないけど、きっとある。そう心に念じながら細い針を押し込んだ。キタ!逆血あり!!そこから採血して、補液ルートを繋いだ。血糖は130 !?ううっ?やはり脱水&低血糖ってパターンじゃないぞ。あれっ、さっきより呼吸がさらに速くなってる。それに刺した時に泣きもしなかった・・・これはもしや髄膜炎?それとも心筋炎?

 頸は硬くない。Kernic signも正常。しかし大泉門が張ってる!すぐに頭部CTを確認し、髄液検査へと流れた。濁っている・・・細胞数は2000ちょっと・・・グラム染色は・・・グラム陰性桿菌だ!幸い痙攣はまだ始まっていない。抗生剤2種類とステロイド、グリセオールにビタミンK、そしてフェノバールを始めて待った。4,5時間経ったところで、急に意識状態が良くなってきた。こちらと目が合う。手足を動かし始めた。でもまだ予断を許さない。

 今12時間経過したところ。先程母乳を欲しがり泣き始めた。呼吸は普通の回数に戻っている。顔色もとてもよくなった。まだ安心するのは早い。明日の髄液検査を見なくては安心などできない。それでもこの状況は和む。ほっと一息だ。

 患児の父が「熱が出始めたところで連れてくればよかったのでしょうか。」と言う。

 それは違う。私たちは熱だけならばどれだけ高くても重症ととらえることはない。この場合疑った決め手は、呼吸回数の異常さだ。おそらくこの経過であれば、早く来れば様子を見てくださいと帰されていたことだろう。

 不幸中の幸い。あと1時間遅ければ痙攣し、予後はとても悪かっただろう。もちろんまだ後遺症などのことも含め安心など出来ないが。。。

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コメント

お見事な救命劇です.
先日Lancet(375:834)で小児重症感染症のred flagを解析した文献を読みましたが,この患者さんでは多呼吸,末梢循環不全,両親の心配,医師の直感が該当する事になるのでしょうか.いずれにせよgood job!です.
ヘモフィルスをグラム陰性桿菌と診断できる検査室もお見事.(それとも先生が自分で確認されたのかしら?)見慣れないとゴミ扱いされますからね.
Hibワクチンの定期接種化を願ってやみません

投稿: Diabo com Fome | 2010年4月15日 (木) 06時38分


パソコンのこちら側でホッとしました。
何ヶ月のお子さんだったのでしょうか?

いづれ我が子も発熱することがあるかと思うと、人事とは思えない内容でした。

その後の経過も記事にして頂けると参考になります^^

投稿: ゆき | 2010年4月15日 (木) 11時27分

Diabo com Fomeさん

 グラム染色は検査室にお願いしました。通常細菌検査は外注ですが、こんなときは迷わず院内検査室を頼りにします。自分でやったこともありましたが、彼らの方が正確で早いんですもん(言い訳)。

 お陰様で24時間後の髄液には細菌を認めず、細胞数も著明に減少しておりました。意識も顔色も良く、とりあえず一安心ってことで。

投稿: クーデルムーデル | 2010年4月16日 (金) 15時06分

ゆきさん

 週末にも記事にしますのでもう少しお待ちください。ちょっとハードな数日だったので。

 ワクチンは髄膜炎セット(Hib & 肺炎球菌同時接種)をお薦めします。

投稿: クーデルムーデル | 2010年4月16日 (金) 15時08分

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