« 暑ッ | トップページ | 皮膚診療参考書 »

2009年5月12日 (火)

母子手帳

 母子手帳は妊娠・出産の記録だけでなく、出生後の成長発達の記録が詰まった重要な情報源だ。医療者にとっては患児の置かれた状況を把握するのに欠かせないものである。ご両親にとっては、大切な子供の成長記録であり、離乳食や日々の過ごし方など育児方法や予防接種予定まで記載された優れた育児書である。大変便利な手帳であることは言うまでもない。

 我々は日常の外来診察にいらっしゃった患者さんすべての母子手帳に目を通すわけではない。しかし予防接種や乳児健診にいらっしゃる場合はもちろん目を通すし、初めて外来にいらっしゃった患者さんで、乳幼児期であったり、あるいは成長発達を確認したい場合や、母親の感染歴などを確認したい場合は見せていただく。

 必要十分に書かれた簡素な手帳もあれば、余白がもったいないかのごとくびっしりと記録された手帳もある。写真や絵で飾られたものもあり、玉手箱と表現してよいほど愛情の詰まった手帳がほとんどだ。

 ところがこのところ出生後、医師や看護師の書いた記録以外まっさらな手帳をみる機会が増えている。子沢山で記入する時間もないという方でもない。むしろ一人目の子供で、べったりと寄り添っている風のお母さんの手帳が真っ白なのだ。もちろん子育てを放棄している風でもない。しかし「首が座ったのはいつごろでしたか。」とか「おすわりできるようになったのは?」と聞いても答えられない。つまり見てきて知っているけれど、正確な時期を忘れてしまっているのだ。先日は1歳半まで全く健診を受けることなく経過した児の母子手帳を拝見した。成長発達の過程を辿れるか否かは、疾患の有無を見定めるのに重要であるが、それ以上に重要なのは親の愛情を推し量る物差しになりうる点だ。それは現時点で役立つだけではない。

 思い出して欲しい。自らの思春期以降の親との関わりを。反発したり、愛情を疑うこともあっただろう。

 想像して欲しい。そんな時に愛情にあふれる母子手帳をお互いに読み返す瞬間を。

 写真アルバムや映像に撮ってあるから大丈夫とおっしゃるかもしれない。もちろんそれはそれで結構。しかし医療、すなわち健康管理に必要な情報は母子手帳に勝る記録はないだろう。是非しっかり活用し、そしてそれを巣立つ子供に持たせてあげて欲しいのだ。

|

« 暑ッ | トップページ | 皮膚診療参考書 »

コメント

将来次女がおねえちゃんの母子手帳と自分のものを見比べたときのことを考えると、不憫でなりません。

投稿: ポリ | 2009年5月13日 (水) 05時07分

ポリさん

 長男・長女とその後の子供達との差は致し方ありません。うちもそうです。でも必要な事は書いてあげたいものです。

 嘘は感心しませんが、思い出しながらチョイチョイッと書き足すというのはアリだと思います。

投稿: クーデルムーデル | 2009年5月13日 (水) 08時53分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 暑ッ | トップページ | 皮膚診療参考書 »