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2009年1月23日 (金)

父親への言葉

 昨夜のカンファレンスでとても切なくなった。

 心肺停止で運ばれ、結局治療に反応せず亡くなってしまった10歳児の話。お父さんと弟とジョギングに出かけ、途中で意識を失い、それっきりとなってしまったようだ。

 生来健康で、数年前の心電図検査でも異常なく、失神や運動時の気分不快などもなかったという。死因を特定するための解剖が行われ、左冠動脈起始異常が見つかった。おそらく運動負荷によって起こった左冠動脈のspasmから心室細動を来したのだろうとの見解だった。

 冠動脈は筋肉の塊である心臓に酸素や栄養を送る細い血管だ。右と左の2本を有し、それぞれ心臓から大動脈が出る境目にその起始部がある。その異常として大動脈と肺動脈に挟まれた筋肉を貫通するように走行する冠動脈が稀に存在する。貫通しているのがミソで、物理的な圧迫を受けることが問題となる。運動負荷で心筋が肥大したところに、急激な運動などを含む刺激が加わり、冠動脈の攣縮が起こるのだろうと推定されている。スポーツマンで思春期から青年期にこの発作が起こりやすいとのことだ。この起始異常には家族性も指摘されているが、本患児の家族には同様の所見はなかった。

 この児は部活動や地域のスポーツクラブでやっていたわけではない。お父さんに連れられ、ジョギングを繰り返していたらしい。解剖の結果として、心臓の奇形が見つかりましただけで納得していただけない場合、運動負荷が発作を後押しした可能性を言わなくてはならないだろうか。そうなったとき、お父さんの心持ちがどうなってしまうだろうと、考えただけで胸が締め付けられてしまった。

 子供は死んだらいかん。いかんぜよ。。。

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コメント

先生は優しい方ですね。
本当に悲しい症例ですが、全く別の意味で胸が熱くなりました。

だって・・そこまで患者、家族サイドの気持ちを考えて下さるドクターが一体この世の中にどれだけいるでしょう・・。
(少なくともうちの医局にはいないなぁ)

投稿: ちびくろさんぼ | 2009年1月23日 (金) 13時53分

ちびくろさんぼさん

 いいえ、きっと皆さん言葉に出さないだけですよ。みんな悩んで、燃え尽きたり、飲んで、飲んで、叫んで朝を迎えているのです。

投稿: クーデルムーデル | 2009年1月23日 (金) 18時00分

初めまして 先天性冠動脈起始異常の6歳の息子をもつ母です。うちの子もまったくこの子と同じ冠動脈の形状です。うちも病気が発覚したのがマラソンでした。1.5キロ走りっ切ったのですが、胸痛を訴えてわかりました。このお父さんの気持ちを思うと本当につらいですね。私も「がんばれ!がんばれ!大丈夫!」とマラソンをさせていたので人事とは思えなかったのでコメントさせていただきました。またブログおじゃまさせていただきます。

投稿: サラ | 2012年9月30日 (日) 07時50分

サラさん

 コメントありがとうございました。運動により発見される不整脈や循環器系統の異常は、本当にある瞬間突然起こるので皆がパニックになってしまいます。怖いことですよね。それでもAEDの普及に伴い救命できた児が増えています。その蓄積から学校検診で行われている心電図の判読・経過観察について改善すべき点が少しずつ判ってきています。

 私は循環器の専門ではありませんが、心電図の判読を行うこともあります。容易いことではありませんが、役に立てるよう努力致します。

投稿: クーデルムーデル | 2012年10月 1日 (月) 08時48分

 ありがとうございます  
 
 AEDの必要性は身にしみて感じているところです。知っているのと知らないのとでは全く違うこのような循環器系の異常に学校検診で気づく事ができ一人でも多くの子供たちが元気に成長していってくれることを願っています。

投稿: サラ | 2012年10月 2日 (火) 08時00分

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