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2008年12月11日 (木)

救急の現場から

 大学の同級生がテレビに出るというので、昨夜その番組を観た。登場する本人からメーリングリストを通じてアナウンスされていたのだが、すっかり忘れていて、たまたまテレビのスイッチを入れると彼が飛び出して来たのだ。

 横浜にある病院の救急部部長を務める彼は、学生時代と変わらず飄々と仕事をこなしていた。何十時間も病院に居て、いつ鳴るとも判らないホットラインを胸に抱くことはどれだけ大変なことだろう。仕事に貴賤はないが、生死の境にある人を瞬時の判断で治療しなくてはならない現場の緊張感は他の仕事にはない。それだけに使命感も達成感も無力感もぐしゃぐちゃに詰め込まれる。慣れや諦めというものもあるが、彼の性格がそうさせているらしく、画面からは悲壮感は全く伝わってこなかった。

 彼の言葉ではないが、同僚の言葉が現場を物語っていた。

「やってるっていう充実感はあるんですけどね・・・みんな早死にしますね。あとは離婚ですね。」

 細く長く生きたいとは思わない。充実した人生であればよいと思う。だからこの職業を選んで悔いはない。おそらく高度成長期の日本の会社に勤めるお父さん達はみなそうだったのだろう。それはみんな頑張れる。しかし一つ違うところがある。医療は今訴えられるのだ。結果責任というもので。

 病気になれば治る可能性はいつもゼロではない。病気でなくたって、生物の生は死といつも隣り合わせだ。それが全く理解されず、すべて治るはずなのに結果が悪かったのは、手を施したやつのせいに違いないと訴えるのだ。マスコミもそれを後押しし、間髪入れず医療者は極悪人に仕立て上げられる。ひとたびこういうことが起これば、充実感のみですべてを犠牲にしていた緊張の糸がプツリと切れてしまう。それが全国至る所で起こっている現象だ。

 この番組では、住民とのささいな行き違いで、長年勤めた山間の診療所から去る医師も紹介されていた。ほとんどの住民に頼りにされ、信頼されていたとしても、訴えられるという行為一つで心は折れてしまう。それほど危うい状況が日本の医療なのだ。

 かの同級生が訴訟などに巻き込まれることなく、救急の現場に立ち続けられることを願うばかりだ。

 それにしてもハラが出たな・・・・

 

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コメント

「やってるっていう充実感はあるんですけどね・・・みんな早死にしますね。あとは離婚ですね。」

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

見た よ。 この言葉も印象に残った。
爽やかな感じの いいドクターと映った。
コンビニのお弁当を食い 仮眠する姿には何の関係もない私ですら 感謝感激に似たものを感じる。
誠意と使命感が溢れていた。 ありがとう。

投稿: 犬と猿 | 2008年12月12日 (金) 16時32分

犬と猿さん

 使命感に燃えない医者は本当に数少ない希少種です。誠意を上手く伝えられない医者は少なからずおりますが。

投稿: クーデルムーデル | 2008年12月16日 (火) 11時54分

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