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2008年6月17日 (火)

ぷ~~っ、点滴バーだって

 「風邪でつらいので、点滴してください。」

 外来診療をしたことのある医者なら度々耳にする言葉だ。それでも年を追うごとにこの言葉を聞く回数は少なくなってきたように思う。経口摂取すなわち食べたり飲んだり出来るなら、点滴などしなくてもちゃんと消化管が良きに計らってくれるという医学の常識が一般の人達にも浸透してきたということだと認識していた。

 一方でスポーツ選手たちが「ニンニク注射したら疲れが吹っ飛び、パワーもでた!」と宣伝している。なんのことはないビタミン補給にちょっぴり糖分を補給した程度なのだろうが、影響力のある選手達の言葉に一般の人達が惑わされることになってしまった。「やっぱり点滴したら元気になるんじゃないか!?」と。

 それでもって遂に点滴バーなる点滴専門店が出現した。開いた口がふさがらないというのはこういうことを言うのだろう。各種要望に応え、保険外診療として毎日でも数分の点滴を受け美容・強壮・老化防止に活用しようと謳っているのだ。

 点滴で直接血管内に糖分やらビタミンやら補給するので、良く効くと思うことだろう。しかし人間の身体は余分な物は受け付けず、すぐに体外へ出してしまうし、恒常状態を保つために余計なホルモンや酵素が分泌されることになるのだ。決まった時間に食べて補給する方がどれだけ身体にとってメリットが大きいことだろう。点滴で元気になる気になるのは、多分に気分の問題であるし、百歩譲って血糖値が一時的に上がればエネルギーが補給されたことで細胞は瞬間的に活気づくことはあるかもしれない。しかしそれこそ瞬時にインスリンなどが働き、一定の値に押さえ込まれてしまうのだ。

 加えて保険外診療というところが恐ろしい。適正な診療ではないので、どれだけでもふんだくられることになる。健康になったつもりが、すべておしっこにお金を流し捨てているだけてなことになりかねないのだ。

 嘘だと思うなら、早速アリナミンでも買ってきて飲んでみるとよい。翌日のおしっこがどんな色でどんな臭いになっているか。ちゃんと吸収され、そして排泄されていることが実感されることだろう。なにも高いお金を払って点滴しなくちゃならないことではないのだ。もちろん湯水のようにお金を使いたい人ならば、どうぞ点滴なさればよろしい。シモジモノ者には出来ない気分を味わって、余計に気分を高揚させることが出来るだろう。

 サプリメントが必要な人は摂取すればよい。しかし点滴に頼る必要など全くない。こんなことで「元気になるために点滴してください。」という人が外来へ押し寄せてくることのないよう願うばかりだ。

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コメント

点滴バー・・・。いろんなこと考える人がいるもんですね。商売のアイデアという意味では、やるな、と思いますが(仮に成功すれば)、医者としては見過ごせないですよね。
 
少々流行→忙しかったので点滴液作り置き→医療事故なんて結末にならないことを祈ります。

投稿: ポリ | 2008年6月20日 (金) 04時56分

ポリさん

 そのうち第一回TVチャンピオン点滴王選手権なんかが開かれたりして・・・

 それでもって
「俺はあそこの点滴が結構ピリピリしびれてそれが快感なんだよな。」
「おっ、君も通だね!あそこは○□×とかいう禁止薬物を入れてるらしいよ。あれたまらないね。」
などという会話まで飛び出したり・・・

投稿: クーデルムーデル | 2008年6月20日 (金) 08時44分

年寄りの痛み止めの注射なんて点滴バーでいいんじゃない。

投稿: NN | 2008年6月20日 (金) 22時27分

はじめまして。
『小児膠原病』で検索して、先生の2月の記事にhitしました。それから読ませていただいています。

うちの娘(小5)はSLE+Sjsです。日々、だるさと共に生活しています。そのだるさというのも、なにやらもやもやとして、どこまで耐えていいものやら彼女には線引きができず、、、母にも線引きが出来ず。。
主治医いわく、だるさに効く薬はなく、ビタミン剤の点滴である程度良くなる子はいるとの事(要するにだまし薬)。

娘の場合は病気もありますが、日々の生活の中で、決定打の無い疲れやだるさを点滴で・・・と考えるのはある意味ありなのかと思います。

点滴バー・・・健康なものからみればヘンテコな存在ですよね(笑)
でも、おぉぉぉぉ!!!って、思う人達がいるかも....ですね。

投稿: | 2008年6月21日 (土) 00時36分

トラックバックしてみましたが、出来たかな?
 
内容に問題があったら、言ってください。

投稿: ポリ | 2008年6月21日 (土) 05時52分

お題とは全然違ってすみません。


印旛沼は大変な事になっているようですね、噛みつきガメ!

大繁殖だそうで、在来種の3倍の繁殖力とは( ̄○ ̄;)


日本中に外来種が広がって行きます。

投稿: ポット | 2008年6月22日 (日) 22時32分

NNさん

 真意を計りかねますので・・・

 お年を召した方は心臓に負担をかけると途端に悪くなる方がいらっしゃいますので、本来ならお薦めできません。

投稿: クーデルムーデル | 2008年6月23日 (月) 08時49分

名無しのSLE児の親御さん

 膠原病の症状は本当に様々です。また薬に対する本人の感じ方も様々です。ですからここでお子さんの状況を推し量るのは大変難しいです。大変な病気ですが、主治医とよくよく相談なさってください。よりよき道が見つかりますこと、お祈り致します。

 点滴バーですが、残念ながらわずか10分で出来ることなど気分でしかありません。テレビ放送もなされていますが、よさそうという意見しか流さない報道は偏っているとしか言えないです。どうかしてますね。

投稿: クーデルムーデル | 2008年6月23日 (月) 08時56分

ポリさん

 トラックバックは??

 記事は読ませて頂きました。いやそういった商売があって、需要があるなら個人の責任でどうぞといったところでしょうか。

 でも危険性や無意味さを説いておかなくてはならないでしょうね。

投稿: クーデルムーデル | 2008年6月23日 (月) 08時58分

ポットさん

 今年はまだカミツキガメとの遭遇を果たしておりません。でも確実に増えているようですね。

 美しい紫陽花を眺めながら蠢くカミツキガメを憂う・・・なんだかな~~

投稿: クーデルムーデル | 2008年6月23日 (月) 09時00分

こんにちは
クーデルムーデル先生

点滴バー...ちょっとビックリしましたね...このようなものができるなんて。

私も、少し危険性などについて記事にしてみました。

http://swedenhouse-oita.cocolog-nifty.com/pediatrics/2008/06/post_e034.html

です。

投稿: いなか小児科医 | 2008年6月23日 (月) 12時07分

いなか小児科医さん

 さすが先生。私の記事と違って真面目に書いていらっしゃいますね。私はおちょくるだけのようでげす。

投稿: クーデルムーデル | 2008年6月23日 (月) 23時56分

今回は「本当はコワい家庭医学」風です。(笑)

投稿: いなか小児科医 | 2008年6月24日 (火) 09時46分

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