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2008年1月22日 (火)

専門医だから

 日曜日にNHKで認知症の特番を放映していた。内容については自分は専門ではないため、多く語るつもりはない。ただその中で専門医というもののとらえ方に違和感を感じたので、コメントを残しておく。

 現在の専門医制度は各学会が認定した試験や認定施設での研修を受け、その疾患につき専門的知識を持ちかつ専門的診療を行えると各学会が認める制度である。それぞれの学会で専門医の更新手続きも決まっており、多くは学会参加回数や論文発表の数が規定に達した者だけ更新できる。中には担当症例数を報告する学会もあるが、あり方はそれぞれにまかされている。

 ただし専門医だからといって特別な待遇はない。診察室の壁やネット上に専門医認定のお墨付きを掲示できるだけである。専門疾患の患者さんだけを診察する権利もなければ、他病院からかき集める権利もない。別の疾患を専門とする医師が診察した場合と比し、診療点数も全く変わらない。専門医を持っているからといってヘッドハンティングされることもない。特別な待遇はないが、医者自身の新しいことを勉強したいという情熱と専門家としての誇りと、そしてなにより目の前の患者さんになんとか役立つことが出来ないものかという信念から専門医の資格を取得しようとするのだ。

 それならば興味のあることはすべて専門医になるのかというとそうではない。私は小児科の専門医と腎臓病の専門医を取得しているが、多くは2ないしは3つの専門医を持つだけであろう。内科の医者ならば内科専門医と肝臓病とか、内分泌疾患etc。4つも5つも専門医を取得していると言う人はお目に掛かったことがない。学会や研究会への参加だけでおそらく毎月何日かは病院を離れることになるだろうし、専門雑誌に目を通す時間もままならない。お金も年会費や参加費だけで数万円ずつ、学会参加の旅費も考えるとウン十万かかるだろう。所属する病院がそれを肩代わりするなどありえない。断っておくが医者は高給取りではない。本日トヨタの社員がボーナス250万円を要求との報道があったが、私のボーナスなどその半分もない。途方もなく拘束時間は長く、生死の狭間にいる患者さんを相手にし、いつ何時訴訟を抱えるかもしれない医者が、人のお金を右から左に動かすなどの仕事をしている人達(気分を害する人がおられましたら申し訳ありません。仕事に貴賤などないとは思っております。)より少ない給料で仕事をしているのが現実なのだ。

 もちろん専門医になろうとしなくても勉強はできる。昨今はガイドライン花盛りである。各学会を中心に疾患のガイドラインが作成され、これに則って診療を行うと効率よく、また間違いも少なく、訴訟問題にもなりにくいと言われる。しかしこれは総論であって、各論ではない。人体はそんな単純なものではない。個別に反応が違うのである。そうでなければロボットに診療してもらえばよい。なにより間違いなくガイドライン通りに事が進められるだろう。しかしそうするとたちまち患者さんは具合が悪くなるに違いない。各論になるとちょっとした匙加減が重要になってくる。そこをうまく出来るのは、知識を持った上で患者さんを多く経験してきた医者なのだ。そしてそれが専門家と言われるゆえんであろう。

 最初に戻ると、番組内では認知症の専門医を受ける医者が少ないのだという。これだけの患者数がいるにもかかわらず、専門医を受けないのはけしからんという患者代表がいた。認知症の勉強をしない医者が壮・老年者の診療をするのはけしからんというのであれば話しはわかる。だが職業選択の自由と同じと考えてもらいたいが、専門に診ていきたい疾患は医者それぞれなのだ。患者数が多く、専門医だけで太刀打ちできないと考えるなら、医者への啓蒙運動を学会がすべきであろう。ふんぞり返って門戸開放などと言ってもダメだ。勉強会などが各地域で何度も繰り返し行われるのがまず先で、その後に待っているのが勉強しなくてはならないものの順位になるだろう。その位置づけが低いものであれば・・・・・・・

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コメント

専門医の資格.
それは逃げないことだと思っています.
報われることはあまりないけど,いい意味で自己満足を感じることが出来る立場でしょうか.

投稿: 番台番 | 2008年1月22日 (火) 21時37分

番台番さん

 仰るとおりですね。看板しょってんねんって啖呵きらなきゃいけない。

 しかし内科の医師達にとって認知症治療の看板って掲げたいものでしょうかね・・・・

 それと勉強するしないは別ですが。

投稿: クーデルムーデル | 2008年1月23日 (水) 09時01分

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