« 柔道界は大丈夫か | トップページ | 雨上がり »

2007年6月11日 (月)

行き違い

 金曜深夜の救急当番を終え、土曜外来に突入した。これまで私は診ていなかったが、5月半ばから咳が続いていた子供がまた咳をし始めたということで来院した。これまでのカルテを読み返すと、気管支炎だが喘息も疑われアレルギーチェックがなされていた。

IgE RIST 340、ダニクラス5,ハウスダストクラス5,ネコクラス3か・・・咳が治まっていなかったなら喘息として治療するよう話すことにしよう。もし咳が一端治まって、薬が切れたらまた出てきたというなら、喘息も考えられるが気管支炎が治りきっていなかったかまたどこかでもらったか・・・

 やってきた子供は結構元気で、咳き込む様子もない。聞けば朝から37℃でちょっと咳をしたので連れてきたとのこと。聴診したがこれといった所見はなく、咽頭発赤も軽度あるかないか・・・

朝からの少しの咳とあっても微熱程度・・・これまでのことを引きずった様子はないな。風邪の引き始めかもしれないが、これからゼイゼイしてくれば喘息の可能性もあるが・・・

 「今朝からということは、一端よくなっていたのですね。ペットは飼っていますか?ネコを飼っている。タバコは?誰も吸わないのですね。」

 そこで急にお母さんの顔が曇った。「ネコを飼ってはいけないのですか?前の先生はネコは外にもいるだろうし、関係ないっておっしゃってました。」

私「確かにネコでアレルギー症状がでるかどうかはこれだけの検査ではわかりません。しかしネコを家で飼うとどうしても普通よりダニは多く発生します。ダニが悪さをしている可能性は十分にありますから、もしなかなか咳が治まらなければそういったことも考えなくてはいけないかもしれません。でもね、今朝からの咳でそこまでは言えませんよ。」

母「今朝からの咳じゃ来ちゃいけないのですか。これまで咳が結構出ていて、気管支炎までなって、少しでも早いほうがよいと思ってきたのです。なんだ今朝からの咳ぐらいでなんて言うのはどうなんですか。」

私「今朝からの咳ぐらいでなんてひと言も言っていないが???胸の音は問題ありません。例えば肺炎や気管支炎を疑うような音はしていませんし、呼吸回数も正常です。喘息を強く疑うゼイゼイした音もありません。とすると風邪を引き始めたのかもしれませんが、いかんせん咳が出始めて間もないので、これがそうだと断定できる証拠は何もないのです。とりあえずアレルギーは強いようですから、ロイコトリエン拮抗剤を飲みながら咳・鼻水止めを飲んでみませんか。夜中に咳が激しくなるなら気管支拡張のテープも渡しておきますから、それを貼ってみてください。よくなるなら喘息を考えて治療していきましょうよ。」

母「前の先生の時は37℃の前半でももう少し幼稚園を休むように言われたんです。それを今朝からの咳と37℃の熱くらいでなんて、どういうことなんですか。」

私「だから私は今朝からの咳ぐらいでなんてひと言も言っていないのだが・・・熱にしても通常この年齢で37℃が病的かと言われるとそうではないと言う他はないです。もちろん前回の気管支炎で39℃出ていたのが37℃くらいまで下がってきたら、もう少し家にいましょうねと言うのが普通です。ですから前回と今回では意味合いが違うのです。お母さん、私は今日この子を連れてきたのは間違いだなどとは言っていません。風邪かアレルギー性のものかは今は判断できないと申し上げているのです。時間をおかないとわからないこともたくさんあるのです。」

この後押し問答が数分続いたが無事処方箋を持ってお帰りいただいた。

ネコが云々という言葉に過剰反応をされたのかもしれない。それか今朝からくらいで来るのはどうかと自身で思っていたのではないだろうか。

何も話さず、断定するようなことを何も言わずともこのような行き違いは起こってしまうのである。この間、ただじっと我慢して聞いていてくれた子供だったから冷静に対処できたが、これで泣き叫ばれていたら難しかったかもしれない。よく頑張ったと労をねぎらいたい気持になった外来であった。

|

« 柔道界は大丈夫か | トップページ | 雨上がり »

コメント

先生、お疲れ様でした。

私の周りでもとにかく何でも早く連れて行けば悪化しない、早く治ると思っている方もいます。

でも早くてよかったことと
もう少し様子をみればよかったなと
思うことは私の経験では半々です。

今回のお母さんは
今までの先生の言うとおりに
やってきたのでビックリしたのかも
しれないですね。責められたと
感じたのでしょうか・・・。
不安もあったのでしょうし・・・。
いろんな方がいますね。

本当にお疲れ様でした。

投稿: チョコひげ | 2007年6月11日 (月) 16時52分


お疲れ様でした。

自分の言った言葉が、自分の思った通りに受け取ってもらえないこと、ありますよね。
先日、ウチのスタッフも、ある一言で患者さんの怒りを買い、大もめにもめましたが・・・。

小児科に来るお母さん達だったらなおさら過敏になっているでしょうから。

当直明けでお疲れ様でした。
<(_ _)><(_ _)><(_ _)>

投稿: ゆき | 2007年6月11日 (月) 21時43分

チョコひげさん

 お母さんの言う「いつもとちがう」という言葉はとても貴重で、それを頼りに検査を進めていくととんでもないことが見つかることがよくあります。ですから早すぎるとか遅いとかそういったことはあまり私は意識しません。こんなのぐらいで・・・っていうのは夜中であれば思うこともありますが、通常外来では大丈夫な基準などを伝えるのも役目と考えていますから、全く気になりません。

 それでもこう思われてしまうこともあるのです。医療訴訟の場で治療の詳細を言った!言わない!!という争議が繰り広げられますが、不毛な争いだと思うばかりです。

投稿: クーデルムーデル | 2007年6月12日 (火) 08時30分

ゆきさん

 好きな同士の会話でもうまく噛み合わないことがあるのですから、当然かもしれませんね。

 大きく深呼吸して、焦らず、怒らず、ゆっくりと説明できればよいと思う毎日です。

投稿: クーデルムーデル | 2007年6月12日 (火) 08時33分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/144860/6747244

この記事へのトラックバック一覧です: 行き違い:

« 柔道界は大丈夫か | トップページ | 雨上がり »