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2007年4月20日 (金)

腎疾患懇話会

 昨夜は千葉で行われた腎疾患懇話会に参加してきた。小一時間かかるし、18時30分開始なんていつもは絶対に間に合わないのだが、昨日は何故か外来も早く終わり、道の混雑も少なく、すんなりと席に着くことが出来た。

 演題は2題、その後講演会があるのか・・・今更プログラムを確認し、頷いていたのは私だけのようであった。最初の演題は国立○○東病院小児科の症例。溶連菌感染後の糸球体腎炎と思っていたら、溶連菌感染を契機に発症したDense deposit diseaseの一例とのこと。症例報告の内容にも異論を挟む余地はなく、納得のまま次の演題に移った。

 その演題は船橋○○病院内科からの発表で、リンゴ病ウイルス(パルボウイルスB19)による急性腎炎症候群の一例とのこと。発疹と発熱が出て様子を見ていた40才の男性が、数日後に全身の浮腫のため入院精査となり、尿蛋白と数個の血尿を認めた。血中の蛋白も減少しており、腎炎を疑い腎生検した結果を持ってきたとのこと。血清の抗体価からとりあえずパルボウイルス感染は間違いない・・・・

 ちょっと待て、浮腫は体重が7kgも増えているくらい酷いのに、血清蛋白(TP)は5.9、alb 3.5、BUN 35、Cre 1.0、コレステロールも130?って腎臓は問題ないじゃない!周りを見渡せど、疑問を抱いているまなざしは見受けられない・・・座長からご質問は?の声がかかる。腎組織の解釈をああだこうだと言い合っている。リンゴ病ウイルスは腎炎を起こすことが報告されていて、その組織像は一般にはこうこうこうなる・・・・この症例が腎臓を起点として問題が発生しているという意見に誰も疑いを挟まない・・・・

 「座長、ちょっといいですか。私にはこの症例が腎疾患と関連があるとはとても思えません。少なくとも浮腫は蛋白尿によるものではないです。パルボウイルスによる高サイトカイン血症で血管透過性が亢進して起こったことでしょう。腎組織もそれで説明が付きますし、発疹も発熱もそれで説明が付きます。サイトカインの値は何か測りましたか?測っていない・・・血清が残っていたらそれで確認してもらえればよいです。これは腎疾患ではありません。」

 会場は静まりかえってしまった。十数秒経ったことだろうか、一人の手が挙がった。千葉大の腎臓内科の先生だった。

「私も今の先生がおっしゃるとおりであると思います。これはすべてhypercytokinemiaで説明が付きます。演者はnephroticがどうのとおっしゃってますが、そういう読み方はデータからは出来ません。」

 続いて病理の先生から、コメントが出た。それで組織がうんたらかんたら・・・・千葉大の先生を中心に討議が進められる。しかし私にコメントを求めるものは誰もいない。

 以前から薄々気付いていたが、千葉には千葉のローカルルールがある。千葉大至上主義、千葉大出身でないと医者ではないというもの。外様は外様らしくおとなしくしていろということらしい。では聞くが懇話会とは名ばかりで、お偉い先生の意見を拝聴するだけのお好み演芸会か?私の意見は別段たいした医者じゃなくても誰でもわかること。真っ先に疑ってかかるべきところに目をつぶって一体何を討議するというのか?つまらん!実につまらんと思いながら、これをぐちゃぐちゃにぶっつぶせるのは自分たち外様だけだろうと考え直すことにした。

 最後の講演会は、国立下○○病院の膠原病専門家によるループス腎炎・ANCA関連腎炎の診断と治療というものであった。これは掛け値なく素晴らしい講演であった。何百という症例に対する確固たる信念を持っての治療には脱帽であった。素直に湧いてきた疑問を討論会でぶつけたが、この先生は真摯に答えてくれた。小児科では扱えるはずのない桁違いの症例数に裏付けられた持論を聞くにつけ、まだまだ道半ばと感じずにはいられなかった。

 なかなかにスリリングな懇話会であった。

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コメント

こんばんは
クーデルムーデル先生

なんていうんでしょうね...。『灯台もとくらし』とでもいうんでしょうか....。

腎疾患の治療については病理学的な検討が重要であることは異論を差し挟むものではありませんが、患者さんの治療については、まずはその一般状態を把握することが必要ですよね。こういった部分でナアナアな検討を続けていると、いつか大きな見落としにつながると思います。もっと厳しく患者さんの状態を把握するよう努力すべきでしょう。

先生のいわれることがわかります。

投稿: いなか小児科医 | 2007年4月24日 (火) 00時12分

いなか小児科医さん

 コメントありがとうございました。

 地方の勉強会レベルでこのような演題がでることに対しては別に問題だとは思っていません。若い医師のトレーニングと考えても良いわけで、それをどう考えるべきか討議していけばよいのです。しかし私が発言しなければ、そのまま腎疾患として通り過ぎてしまいそうで、声を挙げたのです。

 もちろん腎生検を受けた患者さんに関しては・・・腎臓にも問題が隠れているかどうかを調べましたが、特に異常はありませんでしたと答えるしかないでしょう。

 医学という立場からは、パルボウイルスに感染したら全部の人が腎臓にウイルスそのものやこれに対する抗原抗体反応が沈着するわけではないという証明にはなったので、結果的によかったのですが・・・

投稿: クーデルムーデル | 2007年4月24日 (火) 09時23分

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