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2007年3月28日 (水)

読むには不都合だ

 春休みを挟んで外来で検査&検査入院の嵐が吹き荒れている。低身長精査、腎生検、腎尿路画像検査などなどでごった返している。そんな中、手術の際に誤嚥を来たし、重度の肺炎になってしまった児がオペ室から病棟へ運ばれてきた。

 小児科では脳性麻痺の児や低出生体重児を扱う施設を別として誤嚥性肺炎を見かけることは少ない。私がここに来て初めての児であるが、この場合当然のことながら挿管のうえ人工呼吸管理を麻酔科が行い、初期対応をしていた。ミラクリッドという薬を気管内に流し込み、吸引を繰り返していたようだが、なかなか酸素化がうまくいかず、肺の抵抗も強くなるばかりとのこと。状況からして無気肺となっているだろうとレントゲンを見れば、やはりその様子。早速頻回にsqueezingを繰り返し、吸引を施すと見る間に肺の抵抗は治まり、酸素化もよくなってきた。それでも胃液を吸っての誤嚥である。この後どんどん悪くなることもありえると考え、人工呼吸管理で一晩しのいだ。

 といってもvital signは非常に安定していて、酸素化も十分、二酸化炭素の排出も良好だったので、夜中病棟に張り付くこともなく、病院の仮眠室で本を読む余裕が出来た。その本は『不都合な真実』。

 読まれた方も多いだろう。また映画を観た方も多いはずだ。私は残念ながら映像を見ることが出来なかったが、書評ではほとんどが地球温暖化への警鐘を鳴らす素晴らしい本と絶賛していたこともあり、アマゾンを利用して購入したのである。ショッキングな写真の数々、温暖化や異常気象のメカニズムを解説し、今後起こりうることを写真で示していた。しかし・・・・・・

 心に響かないのだ。

 なぜだかじっくり考える余裕が昨夜はなかったので印象でしかないのだが、

① そこにゴア氏の物語はいらない

② 印象づけるために凝ったフォントの数々が目障り極まりなく、見づらい

③ 世界ではどうか知らないが、日本では科学番組などで日常的に見てきた写真ばかり

 ということが揚げられる。③は世界に広めるためと考えれば、別におかしくもなんともないし、もしかしたら②は英語版ならば問題ないのかもしれないが、少なくとも日本語版は上級の編集者とは思えない仕様と思う。ここまで攪乱させなくてはならない仕様ということは、書かれていることを検証するとこの本にとって不都合なことが隠れているのではないかと疑ってしまうくらいだ。こりゃ子供達に見せて啓蒙しようと思っていたけれど、雲行きが怪しくなったと思っていたところで睡魔に襲われた。

 今日の児は更に安定していた。明日は人工呼吸器から離脱できるであろう。でも明日は外来の合間に腎生検が2例予定されている。私の身体にとっては不都合な時間が過ぎてゆくのである。

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コメント

こんにちわ(*^_^*)
不都合な真実・・
doraは読んでいませんが、それを読んだ周りの反応はというと、「たいしたことなかった」でした。
写真も、見たことあるものばかりで、心に訴えてくるものがなかったとおっしゃる先生もいはりました。。
 
京都議定書にサインしないアメリカ。。やはりその真実をごまかそうとしているのではないでしょうか?

投稿: doradora | 2007年3月29日 (木) 10時30分

温暖化問題の鍵を握るのは、やはり米国だろうね

米留していたときに、一番驚いたことの一つにゴミの処分があります

少なくとも僕が住んでいたヴァージニア州では、生ゴミだろうが粗大ゴミだろうが、アパート付設のゴミ用のコンパクターの中に全部一緒に投げ込む方式でした

毎日の莫大なゴミは、リサイクルなどほとんどされず、日本に比べ広大な国土のまだ使っていないところに、次々と捨てられていくわけです

あれだけ、土地があって自分達の価値観しか信じない国において、地球温暖化という言葉はとても虚しく響いていたのを思い出しました

投稿: 目黒駅前クリニック院長 | 2007年3月29日 (木) 11時47分

doradoraさん

 やはりそうでしたか。ちっとも響いてこないんです。でも錚々たる面々が書評を寄せていて、皆大絶賛なんですよね。なんだかな・・・

 アメリカがごまかすというよりゴア君のPR本に見えてしまいます。すなわちうさんくさい本ということなんですが。

投稿: クーデルムーデル | 2007年3月29日 (木) 22時28分

目黒駅前クリニック院長殿

 それが真実なのでしょうね。

 かくいう日本も削減目標に遠く及ばない状況ですね。一人一人の意識を高めると同時に、温室効果ガスを問題のないものに替えるコスモクリーナーのようなものを研究開発すべきと思われます。

投稿: クーデルムーデル | 2007年3月29日 (木) 22時33分

こんにちは。久しぶりにお邪魔しました。オーストラリアでもアメリカと似たようなものです。ここ南オーストラリア州はかなり厳しい水不足です。マレー川という川の水を使っているのですが、先週マレー川まで行って見ると支流は干上がっていました。夏だからという理由もありますが、年々水位が下がっているようです。盛んに水の節制を政府が呼びかけている一方でゴミは全て一緒にまとめて捨てる。この後の処理を聞いてみたら、遠いところに捨てて来るんだ・・・とのこと。もっと環境問題を真剣に考えてもよいのではないかと思います。
ついでに・・・ミラクリッドの気管内投与は本当に効くのですか?炎症反応を抑えるという意味だけならばあまり、期待できないような気もするのですが、どうでしょう?

投稿: Dr.TERU | 2007年4月 2日 (月) 14時37分

TERU先生

 ミラクリッドの気管内投与で良くなったかと問われれば、否と答えます。それより理学療法の方がはるかに効果的だったでしょう。誤嚥に対し気管洗浄を行うなら、生理食塩水でよく、他と大差ないと思います。あまりに酷いとサーファクタントを使いたくなりますよね。この子には好中球エラスターゼ阻害剤も静脈投与しました。これもどこまで効果があったのかは定かでありません。

 オーストラリアって砂漠化が進んでいるのでしょうか。オージーっておおらかな民族だと聞いていますが、ゴミの分別くらいはしてもらいたいですね。

 

投稿: クーデルムーデル | 2007年4月 2日 (月) 19時32分

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