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2006年12月14日 (木)

造血幹細胞移植

 Cancerという雑誌に『造血幹細胞移植後10年間で患者に2回目の固形癌が発現する確率は一般人口の2倍近くになると示唆する最新の研究』が発表された。この論文によれば、そのリスクは40歳以上の患者と、女性ドナーから幹細胞を受け取った患者で特に顕著であり、その場合の癌リスクは4倍近くになる。

 私が小児科に入局し大学で研修を行っていたころ、最先端の医療を取り入れるとしてクリーンルームを設置し、血液内科とタイアップして幹細胞移植がスタートした。白血病の治療のために行ったものであり、放っておくと間違いなく死に直結してしまう方々に対してであった。悪性の血液および骨髄を抗ガン剤で完膚無きまでに叩きのめす代わりに、自分のまともな骨髄までも叩いてしまう故、他人の(もちろん適合する方のもの)幹細胞を移植し血液の増殖を促すというもので、その後何十人と移植が行われ、尊い命が救われていった。

 その彼・彼女たちは移植を受けてから十数年経っているわけだが、未だ固形腫瘍が出来てしまったという悲しい知らせは聞いていない。それ故この度の報告は寝耳に水なのだが・・・最も私が関係した移植の患児はわずか数人で、顔も名前もしっかり一致してしまう位の少数だからなんとも言えないのも事実である。

 幹細胞移植そのものが固形癌を引き起こすのか、それとも骨髄を叩ききるための抗ガン剤などの治療がその後固形癌を引き起こすことになったのか、どちらとも言えないようなので移植そのものが悪だという短絡的な考えをするべきではないのだが、なんとも悩ましい報告がなされたものだ。しかも一般人口に対し癌の発生率が2~4倍という数字がこういった患者さんにとって多い数値なのかどうかも不明であろう。事実抗ガン剤の副作用について説明するとき、必ず後の癌発生のリスクについても話しているはずであり、それが数字として説明されるだけなのかもしれない。もちろん一般の人と変わらないと言えればそれが一番なのだが・・・報告の中では放射線療法を移植前に受けていた患者では癌発生リスクの増加は認めなかったという。それがいったいどういうことを示しているのか真実はまだ闇の中ではあるが、早急に移植までの治療プロトコールを見直す必要があるのかもしれない。

 

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コメント

放射線や抗癌剤の影響というのであれば、女性ドナーから云々という理由は説明が難しいですよね。
固形癌っていっても、どんな癌なんだろなあ。免疫抑制剤の影響はないのでしょうか。

投稿: やぶ | 2006年12月14日 (木) 18時21分

やぶ先生

 おっしゃるとおりですが、あくまでも統計学的にそうだったというだけなので、まだ何物ともわからないですね。免疫抑制剤ももちろん検討の内に入っていますが、これといった決め手はなさそうです。
 結構様々な固形腫瘍が出来ているようです。

http://www3.interscience.wiley.com/cgi-bin/fulltext/113489210/HTMLSTART

投稿: クーデルムーデル | 2006年12月15日 (金) 09時39分

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