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2006年10月16日 (月)

医療を考えるという番組

NHKでも民放でも日本の医療崩壊をなんとかしようという名目で特番が組まれている。

どの番組も似たり寄ったりだが、世間のモラルが地に落ちている状況でいくら正論を説いてみたところで良いシステムが成り立つとは正直思えない。誰かが無理をしなくてはならない状況で、これまでは医療者の善意に頼ったシステムが敷設されてきたが、仕方のない事故でも短絡的に逮捕or起訴となっている状況や、医局が崩壊して医者を切り盛りする術を世間全体が失ってしまった今、医療界のシステムはカオスであるとしか言いようのない時代に突入しているのだ。

これを打破するべく、経済と同じように市場原理を導入し、良い医療の見極めや、患者のニーズを知ろうという声が挙がっているようだが、これには患者および医療者双方とも疑問を感じている。当然だろう、医療はワンセットいくらで売買されるような単純なものではないし、時間的にも空間的にも切り売りできるものではない。もちろん既製服が合う人もいようが、オーダーメードでないととんでもない結果をもたらす人達もたくさんいるし、仕事や生活環境によってまるで違った医療をすべきことも、過疎地域で必要とされる医療と都心での医療が違うのも当然であろう。過疎地域に市場原理を働かせると倒産・撤退がちらつくのは火を見るより明らかで、そんな地域にやってきたダイ○ーは倒産し、以降コンビニもユ○クロも来ないことは住民が一番よく知っている。

よい医療を提供する病院としてランキングや病院評価機構などがうごめいているが、前者は何をもっって良いとするかが明確ではなく、アンケートもバイアスが多分にかかっている評価に成りがちである。後者は厚生労働省の天下り機関であり、とてもじゃないが正当な評価がなされるものとは思えず、やくざのみかじめ料を収めたか否かというレベルでしかない。

過疎の問題は過疎と知った上でその地に移り住もうとしている人達にとっては、不便はそれを補うだけの魅力の代償ということで割り切れるところもあるだろうが、自身の寄る年波によって縛り付けられている間に過疎を迎えてしまった人達にとっては不便は行政の責任という流れになってしまうというところにある。また地方都市と過疎地とは似ているようで違い、医療者本人と家族にとって生活や教育といった面で地方都市は魅力的なところが多いが、これが過疎地となると明らかに無理をすることになってしまう。無理を教授の鶴の一声で一蹴していた時代はよいが、自分で決めてよい時代に家族に無理強いするものは稀少であろう。地域選抜の学生を医学部に入学させたとしてもその傾向が解消されるとはとても思えない。

救急医療の問題も、開業医をなんとか活用できないかという話しも出ているが、開業医は一国一城の主であると同時に自分が倒れれば誰も助けてくれないギリギリの状況であることや、勤務医時代に頑張って燃え尽きた人達が開業を選んでいるという状況がわかって言っているのであろうか?簡単に夜間の救急の当番を廻せばよいなどというものではなかろう。幸運にも我が印旛地区は我々勤務医と開業医さん達の熱意により一次救急診療所がなりたっており、地域50万人(千葉市の一部も含む)の住む人達の大切な子供達を迅速に診断治療できるシステムができあがっている。これは勤務医の激務軽減にももちろん役立っている。しかしこれをすべての地域にというのも無理がありすぎる。もし行うならばできるだけ負担にならぬよう、時間と場所を確保して行うべきであろう。

なんだかんだと言っても、これほどの医療を安く迅速に受けられる国は他にはない。それを皆自覚し、節度をもって、コンビニと考えることなく行動して欲しい。コンビニとするから市場原理を持ち出され、自分で自分の首を絞めてしまうのである。同時に医療に哲学を導入し、必要な医療とはどこまでなのかを皆で構築して行かなくてはならないだろう。そうでないとすべての患者が同じようにてんこ盛りの医療を受けることになり、財政破綻への道を突き進むことになってしまうだろう。

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コメント

まったくもって、先生のいわれる通りと考えます。

>なんだかんだと言っても、これほどの医療を安く迅速に受けられる国は他にはない。

この部分をみんなに理解していただきたいと強く感じます。医療はタダではない。それを、日本ではタダに近い値段で手に入れていることを理解していただきたいと思います。

投稿: いなか小児科医 | 2006年10月16日 (月) 17時33分

いなか小児科医殿

奢ることなく、親切・丁寧・笑顔の耐えない診療を目指したいのですがね・・・疲れたら誰だってイライラしますよね。プロだからと言われても無理が通れば道理引っ込むですよね。

投稿: クーデルムーデル | 2006年10月16日 (月) 18時05分

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