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2006年9月 6日 (水)

分娩があったら5万円支給

今朝のニュースを見ていたら、さいたま市立病院が夜間の当直産科医に対し、分娩があったら一件につき5万円を支給する破格の待遇を打ち出したとあった。

市立病院の産科部長のコメントも映像で流れ、モチベーションという意味でお金をつけたという。

同業者の口からそういったコメントが出たことに憤りを感じた。というより情けなく感じた。

そりゃ報酬が多いに越したことはない。

しかし昨今の産科医療離れは報酬の少なさに辟易したというものでないことは周知の事実であろう。夜間働いても翌日休みをもらえないというシステム上の不備や不具合分娩に対する訴訟でボロボロになっているから医療崩壊が起きているのだ。百歩譲って産科医が潤沢にいる病院の医者が報酬目当てに来ることを望んでいるか、大学の研修医が薄給故にやってくることを望んでいるというのならそう話すか、直接そのような施設に頼めばよい。もっとも潤沢にいる施設はないだろうし、薄給で働く研修医はバイトも行けないほどこき使われているだろう。

それにしても周産期に携わる医療施設が身を削って頑張って周産期死亡率を世界トップレベルの3.3(妊娠満28週以降の死産率:2.2、早期新生児死亡率:1.1、1年間に111万人生まれる中に、1184人の早期新生児死亡があった(平成16年))という数字をたたき出しているにもかかわらず、訴訟が増えるというのはどういうことなのか。いくら高いレベルの医療を提供したところで残念な結果になることも当然あって、100%安全なお産などありえないのに・・・

もちろんお産は自然なこと。普通通りなら医者などいらず、場合によっては母体と介助者一人いればなんとかなる。しかしその体制では周産期死亡率は20をはるかに越えてしまう。すなわち異常分娩は間違いなくある程度の確率をもって潜んでいるのだ。産婆さんしかいなかった時代は仕方がなかった。それを産科医そして新生児科医(麻酔科医もからむ)が救うようになり、異常分娩に対処できるようになったのではないか。

訴えられる筋合いのないものが報道され、いわれのない中傷をうけ、ただでさえない時間を裁判にとられ、いったい周産期医療をどこに向かわせようと言うのか。

最後に、5万円払う市立病院に一人の希望者もでないことを望みたい。そしてあの部長の口から「やはりお金じゃないんですね。」と言わせたい。

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コメント

まったく、同感です。

なぜ、日本の週産期医療が危機に瀕しているのか?

よく考えてほしいですね。

投稿: befu | 2006年9月 6日 (水) 12時51分

こんちには
お引越しされたのですね。調子はいかがですか?昨日自転車が壊れたのに今日はあいにくの雨で直しにいけません。
同期の卒業生に何人か助産師学校へ行った人達がいます。
助産所でのお産は実費なので、病院よりもかなり高いです。お産は確かに病気でないし、助産所でも助産師さんがいればできるので、もっと方法を考えられるきがします。
少子化で、「何故もっと子供を生まないの?」といわれるとほしくても1人しか授からなかった身にはとっても辛いです。

投稿: あぐねす | 2006年9月 6日 (水) 13時16分

befu先生

このまま放っておいたらみんなの努力の結晶である周産期死亡率世界一の座なんてあっという間に転げ落ちるのでしょうね。そうしたら異常分娩で母体や新生児になにかあったらマスコミや行政が訴えられるのでしょうか。それとも医療者でしょうか・・・

投稿: クーデルムーデル | 2006年9月 6日 (水) 15時21分

アグネスさん

お久しぶりです。このサイトはMSNより快適です。
助産所でのお産を否定するわけではないですが、もしもの時助産所ではなにもできません。そのもしもが起こって運び込まれた先の産科が訴えられるのがおかしいのです。このブログでリンクさせてもらっているなな先生のブログを見てください。予知できない異常分娩が存在し、そこをなんとかしようとする人達をよってたかって訴え責め立てているのが日本の現状なのです。異常分娩にならないように分娩促進などをする産科医による医療行為を初めから悪者扱いにしているのが現状なのです。それがおかしいと私は思うのです。

投稿: クーデルムーデル | 2006年9月 6日 (水) 15時29分

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